表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

エピローグβ・『マキ』

 もう何度もライブ自体はやって来たけど、流石に動員数1万人以上のドームで行うなんて。


「て、手汗が……日崎さ~ん!」

「のび太君か、真紀は。もう散々弾いてきた曲垂れ流すだけだろ。」

「それはそれで言い方悪いですけどね。」


 玲子さんが窘めてくれる。正直この人いないと私たちの結成3年のバンド、『前途多難』はとっくに崩壊していただろう。

 主にこのピアノが原因で。


「リメは人の心ないですからねぇ。」

「普通の久留実に言われたかない。」

「は~んやりますか!?ピアノの重さ舐めてます?」

「機動性に優れたギター舐めんなよ!」

「はいはい、楽器で殴り合う想定の時点でミュージシャンとして負けですよ。」

「「すいません。」」

「あはは……。」


『前途多難』は当時の流行だとか、若者人気だとか。そういうもの全部実力で押しのけ駆け上がって来たバンドチームだ。

 ギターが上手すぎる且つギターが好きすぎるあまりライブ中にアドリブを必ず入れる日崎さん。この人のおかげで同じ演奏は二度ないぞ、なんて言われるほど、毎回の演奏の貴重さが底上げされている。

 高坂さん。未だに警察を続けながらバンドをしている化け物。いつ寝てるのかはバンドメンバーもわからない……。ちなみに高坂さんは不定期でライブに参加するのだけど、事前に伝えておいた場合チケットの争奪戦の過酷さが5倍になるという噂まであるほど、一番ファンの多いピアニストだ。

 玲子さん。上記二名を支える土台。縁の下の力持ち。生まれて来てくれてありがとう。

 美華さん。ベーシストとして最高というより最早最強の才能を開花させた。本人曰く、『もうここまで来たら流石にギターやってる場合じゃないわね。』と心底呆れた顔で言っていた。私へは憎み顔で。


 そして、私。16歳。JKで、このバンドのリーダーだ。


「あれ、美華さんは?もう始まりますよね…?」

「寝過ごしてるんじゃないですか?ほら、最近高校卒業してお忙しいとか言っておりましたし。」

「午後8時まで寝るか?ふつー。それにお忙しいのはあんただろ、久留実。」

「なはは~。」

「さっき私も連絡しましたが返事なかったですよ、真紀ちゃん。」

「ふぅん……まぁいいか。私たちは誰か欠けても日崎さんが入ってくれますもんね。」

「あん?てことは何。こんな大規模ライブで私ベースか!か~……。」

「痰は叶いでください。」

「吐かねぇわ。」


 とまぁ、結構雑にやっている。それでも暗幕から覗く観客の多さを見て、本当に私たちは運がいいなとつくづく思う。


「前途のみなさーん。そろそろ時間です。」

「わかりました。皆さん、行きますよ。」

「もうですか?!アタシまだ決め台詞決めてないですよぉ。うーん…『ピアノで全員書類送検してやるぜ!』とかどうでしょう!」

「いやそれなら『ピアノでお前らを投獄してやるぜ!』だろ。」

「イカれたメンバーを地で行かないでくださいよ、お2人さん。」


 最後まで言い争いながら、私たちはステージに立つ。気おされるほどの歓声。熱狂のコール。私一人なら立ってるのもやっとだろう。

 だけど今はもう、仲間がいる。私は孤独じゃない。


「『前途多難』のファンの皆さん!お久しぶりで、初めまして!橘真紀です!今日は全員、私のギターでぶっ〇します!!」

「えぇ~……。」

「保護者さ~ん?そちらの教育方針はどうなってるんで?」

「さ、構えてくださいお2人とも。好きなだけ暴れてもらって結構ですので。行きますよ。」


 その日、私たちはまた『アネモネ』としての軌跡を1つ作った。この先も、未来永劫名を残せるようなバンドメンバーになってやる。じゃなきゃ私は死ぬとき、きっと悔いを残すだろうから。




 ライブ終わりの翌日、美華さんの両親から連絡があった。

 美華さんが交通事故で亡くなった、と。


 完



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ