愛する妻の為に ~テオドールSide~
ロザリーと想いが通じ合い、何気ない日常がとても幸せなものに変わった。
彼女の一つ一つの行動に心が満たされ、早く18歳の誕生日がきてほしいと願う日々だった。
ステファニーとも仲良くなったロザリーは、一緒に城下町のバルーンアート祭りに行き、そこでヒルドとも出会う。
すぐに二人の関係性を見抜いたところは驚いたな……後日ヒルドがロザリーに相談しに来て、ロザリーのアドバイスの通りステファニーにアプローチし、二人は想いが通じ合った事を知る。
二人の関係が拗れてからかなりの年月が経っていたので、友人としてもとても嬉しく感じた瞬間だった。
ロザリーは幸運の女神のようだな――――
最初から惹かれ合っていた二人だ……このまま不幸なすれ違いで壊れてしまっては勿体ない。
私の誕生日会の時はまだそんな雰囲気ではなかった気がするが……その辺は二人のみぞ知ると言ったところか。
年が明けてロザリーの18歳の誕生日がついにやって来た。
私は彼女を教会へ誘い、二人きりであらためて生涯の誓いを立てたのだった。
ロザリーの誕生石であるガーネットをあしらった指輪を贈り、永遠の愛を誓う――――あの時のロザリーも聖女のように美しかったな。
その後から彼女は、一生懸命に舞踏会に向けての準備を頑張っていた。
入念に体をマッサージしたり、肌の手入れをしたり、爪や髪の手入れ……一緒のベッドに眠っていてもいい匂いがして、耐えるのが大変だった記憶しかない。
でも初めての夜会なので、きっとロザリーの事だから私の為に真面目に一生懸命頑張っているのだろうなと思うと、手を出してはいけない気持ちの方が大きく、なんとか理性を保つ事が出来た。
ダンスのレッスンを少し覗いてみると、彼女を気遣う講師にもっとレッスンをしてほしいと言うロザリーを見て、芯が強く、負けず嫌いなのだと感じる。
でもそうでなければ、あのような国で生き残る事は出来なかったのかもしれない。
誇らしい気持ちと同時に複雑な気持ちにもなる。
もう絶対に彼女に惨めな思いはさせない。
私の妻として着飾り、誰よりも輝いていてほしい。
そんな想いを込めて、ロザリーの為に最高級のドレスを用意した。
デザインにも関わり、彼女を女神のような装いにするべく密かに着手していたのだ。
そのドレス姿を見た時、目が眩んだ――――私の妻はなんて美しいのだろう。
本来ならドレスなど着ていなくても十分美しいのだけれど、それでも……自分が制作に関わったドレスを着ているという事がより一層美しく思わせてくれる。
そんな素晴らしい妻を誰にも見せたくない衝動に駆られる。
ロザリーに窘められ、何とか踏みとどまったが、ドレス姿というのは危険極まりないと痛感したのだった。
~・~・~・~・~
舞踏会に到着し、ホールに入ると、国中から集まった沢山の貴族たちがすでに到着していた。
ロザリーは敵国の王女だった為、貴族たちの視線が一斉に彼女に集まる……そんな視線に負けず、凛と立つ姿がまた美しくいじらしい。
私は自分の知り合いたちに彼女を紹介して回ることにした。
私の知り合いは事情を知っているので、変な態度を取る者はいない。
陛下への挨拶をする順番が回ってきた時も物怖じする事なく、自身が思っている事を述べて陛下に感謝の意を述べるロザリーを見て、とても誇らしくなる。
やはり彼女は王女なのだな……陛下も優しく微笑まれ、私はホッとしたのだった。
「緊張しただろう? 頑張ったね」
「はい。 陛下にきちんと感謝の気持ちを伝える事が出来て、安心しました。 今の私があるのもテオ様と、陛下の温情があったからこそですから」
その言葉を聞き、彼女は敵国の王女としての咎を一身に背負っているのだと気付く。
自分のことを王族として扱ってこなかった家族の分まで背負い、この場に立っているのだ。
とても孤独な姿に胸が掻きむしられるような気持ちになる。
君はもうリンデンバーグの王女ではない、私の妻なのだから――――
「ロザリア……一人で抱え込まないでくれ。 私たちは夫婦なのだから……君があの国の人間だったとしても、私はそれを一緒に背負っていく覚悟で君を妻にと望んだのだから。 むしろ私にも背負わせてほしい」
「テオ様、あなたというお方は……私は甘やかされてばかりですね。 そんなに甘やかしては我が儘になってしまいます」
「もっと甘えてくれて構わないのだけどね」
夫婦として共に背負っていく事は当たり前だというのに……彼女の育ってきた境遇がそのように思わせるのだろうか。
式を挙げ、名実ともに身も心も私の妻となる時、彼女に私の愛を刻み込もうと胸に誓った。
その後一緒にダンスをして楽しい時間を過ごした後、ロザリーが喉が渇いているようだったので飲み物を取りに行くことにした。
しかし戻ってくるとどこにもロザリーの姿が見えない……ステファニーとヒルドのところに行き、ロザリーの行方を聞いてみる。
「妻の姿が見えないな……」
「ああ、それなら今ステファニーから聞いていたんだ」
「私とお喋りをしようって話しになって、先にサロンに行ってもらったの」
「そうか」
「殿方は殿方同志で少しお話していてちょうだい」
本当なら私がロザリーのそばにいたかったところだが、彼女にもサロンでお喋りする友達ができた事を喜ぶべきか。
社交界では友人関係も大事だ、ステファニーとサロンでお喋りをしているうちに人が集まってくるだろう。
そうしてロザリーにもっと友人が出来ればいいな、くらいに思っていた。
しかし貴族との会話がひと段落し、ヒルドがステファニーに会いに行くと言い出したので、私もロザリーの顔を見ようと後に続いていたところ、状況が一変する――――
「テオドール! ロザリアが!!」
「?!」
私は急いでホールの扉から出ると、ステファニーが倒れ、遠くに男が走り去っていくのが見える。
まさかあの男が抱えているのがロザリーなのか?!!
無我夢中で追いかけたけれど、男の姿は闇夜に消えて行った……しばらくその近辺を探したが見当たらず、このまま探していても時間の無駄だと判断した私は舞踏会に戻り、陛下に今起こっている事態を告げる事にした。
廊下ではヒルドがステファニーを抱き上げ、客室に連れて行こうとしていた。
「ステファニーは大丈夫か?」
「テオドール……ロザリアを助ける為に戦ったみたい。 幸い打ち身で済んでいるよ……ステファニーを休ませてくる。 すぐに手伝えなくてすまない……」
「気にするな、ステファニーに付いていてやってくれ。 きっと恐ろしかっただろうから……こちらは私が動く。 私の妻に手を出した事を必ず後悔させる――」
「テオドールには勝てる気がしないな。 何か手伝える事があったら言ってくれ」
「ああ」
ヒルドを見送ってから、陛下の元へ向かった。
そして先ほどの事態を伝えると、陛下は目を見開き「今しばし、動くのは待ちなさい」と告げてきたのだ。
「理由をお聞かせください」
「…………レナルドが跡を追っているだろう」
「レナルド? なぜ彼が? …………まさか彼は……」
「隣国の不幸な王女を気にかけていたのは、何もそなただけではない、という事だ」
私は陛下の言葉にただ驚き、立ち尽くしていた――――
そこに小さな伝書鳩が届く。
足には小さな手紙が括り付けられていて、陛下はそれを読むと私に内容を伝えてくださった。
「……夫人が連れて行かれたのは、どうやらあそこだ」
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