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後、ハッピーに近づく

皆様、お待たせ致しました!

期待したもの違ったら申し訳ありません……

わたしなりに満足したものが書けましたので、気に入ってくださると嬉しいんですが……どうでしょうか?

シリィにとって、あの日は夢のような一時だったろう。

わざわざ12時の鐘で帰らなくとも、ドレスはなくならないのに。

ガラスの靴だって片方置いてこなくとも、王子様といられただろうに。

シリィはなんで帰ってきた?

アリーナも母もあの日王子様と一緒にいたのが、シリィとは気付いていなくていつもの変わらないようにシリィの掃除の仕方、ご飯に文句をつけて、邪魔して、彼女の仕事を増やした。

わたしは怖かった。


シンデレラの話のように、

ガラスの靴を持ってきてくれるのを待っている?

わたし達はガラスの靴をなんとしても履かなきゃいけないの?

もし、もしその通りなら、

わたし達は、母はどうなるの?


一日一日が怯えて過ぎていった。

家から出なくなった。

部屋にこもるようになった。

「お姉さま? 大丈夫? ご飯を持ってきたの、中に入れてくれる?」

毎日毎日アリーナはご飯を持ってきてくれた。諦めることなく、朝夕とご飯を持ってきてくれて、開くことのない扉から声を掛けてくれる。

ーーーお母様はお姉様の部屋の前に来ては不器用だから声を掛けられずに行ったり来たりしてるのよ?


ーーーほら、いつも卵を持ってきてくれるちょっと地味だけどまあ、格好良くはなくもない、彼いるでしょ? いつもいつもお姉様のこと聞いてくるのよ? どうしてるか、って。あれは絶対お姉様のこと好きなのよ!


ーーーあたしだってべ、別に心配してないんだからね? ただ、お姉様の顔がひどくなってるんじゃないかと思ってき、気になってるだけなんだから!


アリーナも母も素直じゃない。それはわたしも一緒だ。

だけど、一度もシリィのことは話さなくて、それが不安でどうしてもアリーナに返事が返せない。扉を開けてあげれない。


そして、その日は来た。

堂々とソファーベッドに腰掛ける王子、アルス・ルシルファーは何故お前がここにいるとご丁寧に顔にかいてあった。

「……ジェランご婦人、私このガラスの靴の持ち主を探しております。噂に聞きますとご婦人の娘だとか」

「あら、そうなの。ではきっとティーリが履いていたものに決まってるわ。舞踏会で踊ったのはこの子に違いないわ」

ちょっと待って、と言って母はわたしの話を聞いてくれるだろうか。

わたしとアリーナに聞こえる声で……玉の輿と目をギラギラとさせていた。

「……ほお? では、履いてみせていただきたい」

これの持ち主を知っているくせに。

わたしではないことを気づいているくせに。彼の白々しい笑みが悪魔の笑みに見えたのは彼の家臣も一緒なのだろう。顔が曇ったり、ひきつったりしていた。

「……お母様、わたしには小さすぎます。無理では?」

「何言ってるの!? 大丈夫よ! 最近部屋に籠ってた分痩せたもの履けないわけないわ! それに履けないなら履けるようにすればいいの!」

何かにとりつかれたように母はそう言った。

その姿は、まさにわたしが想像していた……。わたしの母の姿はそこにはなかった。


柔らかそうな上等な生地のクッションの上にのったガラスの靴。そこに足を入れる。

「…………あ、あいま、せんわ」

ガラスの靴から踵が出てしまった。指先だって痛い。透明なガラスの靴からわたしの赤くなった足が見える。

爪を切り落としたくない。

「なら、……!」


「アルス、君が探していたご令嬢はこちらなんじゃない?」

階段から彼の手をとって降りてくるシリィの姿。頬はわたしの足とは別の意味で赤く色づいた。潤んだ目、笑みが浮かんで、そのきれいな唇から、アルス……と聞こえた。

「ああ、シリィ! やっと、君に……」


わたしはガラスの靴を脱いだ。


運命の出逢い。物語はシリィを中心として回っていた。


熱烈なキスを交わす二人をわたし達はただ見てるだけだった。

母は何を思って、アリーナはどんな気持ちで、彼はなんで彼女を見つけてきたのかな?


「……それで、良かったというべきかな?」

街のみんなに祝われている二人を見上げた。結婚式のドレスそのままに現れた王子様とシリィは物語の絵面と同じで軽く手を振って、微笑んでいた。

「君も、いや、ティーリも特に罰せられなくて良かったな」

「……そうですね」

シリィに助けられたというべきか。

王子様が今までシリィがされていたことに気付き、母やわたし、アリーナを処刑するとまで言っていたのを必死にとめてくれたらしい。

だからと言って、感謝はしづらい。

わたしが今までしてきたことは、無にされたということでしょ?


……諦めが肝心なのかな。


「ティーリはこれからどうするの?」

「んー、考えてないですね」

「ふーん。じゃあ、どう? 俺と結婚するっていうのは」

話が読めなくて、彼を見上げた。あの青みがかかった灰色の目が意外に真剣で心臓が大きく跳ねた。

「え、な、何故?」

「んー、ティーリの顔に書いてある」


ーーー俺と一緒にいたいって。俺もティーリといたいしね。


これからどうなるかは分からない。でも、何故か幸せになれる気がしたんだ。

わたしはシンデレラにはなれなかったけど、わたしの物語の主人公にはなれたと思ってる。

……彼、リィーノのおかげで。


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