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第2話 蛇使役

 生まれつきジョブを持って生まれてきたくせに使えない小間使い。

 

 年の離れた仲間たちからはそう呼ばれ続けてきたんだ。


 小さい頃、複数人が実家に火をつけて全焼。

 それ以来「特別に仲間に入れてやる」と『マングース』のメンバーに誘われて、ずっと荷物持ちをしながらダンジョンに潜っていて――――



「……今日発現するなんて思わないじゃん」


「シュ、シュ、シュ、シュ、シュ~♪」


 なんだかよく分からない数種類のスキルが映し出されたステータス画面を見つめながら茫然としているんだけど。


 シロンはさっきから何を押しているんだい?


 チロチロと蛇舌を器用に出し入れして、スキルポイントを割り振ってる!?


「ちょっ! シロン何して…」


『スキルポイント5を消費し、スキル『蛇使役』の熟練度が1上昇しました』


「はい!?」

「シュッ!」


 ステータス画面のスキルポイントの数は0になり、代わりに『蛇使役』のスキルに1という数字が表示された。


 ……たしかスキルポイントはスキルの熟練度を上げるために重要なポイントで、自身のレベルアップの時しか付与されない貴重なものだったような。


「……何してくれてるのさ、シロン。生きててくれて嬉しかったけど、何してくれてるのさ」


「シュ~ル~ル~!」


「いや、励まされても困るんだけど。生きててくれてありがとうなんだけどさ」



 ジョブ・蛇ノ王のスキル説明も見ないでスキルポイントを割り振っちゃったよ。


 どうしよう。


「シュッシュッ!」


「……いや、ドヤ顔で舌をチョロッと出されても困るんだけど。そもそも『蛇使役』ってスキルは何なの? えっと、説明欄オープン」


『熟練度に合わせてダンジョンの蛇系モンスターや、有鱗目ヘビ亜目のあらゆる生物に指示が可能です』


 らしい。

 書いている意味が分からないや。


【【【シュ、シュ、シュ~!】】】


 そんな呑気にスキルのことを調べていると、モンスターたちが集まってきた。


「あれはFランクモンスターのサーペント!?」


 そうだった。

 ここはダンジョン内なんだしさっさと入り口に繋がる転移門を潜って脱出しなくちゃ。


「シロン逃げるよ! ゴブリンジェネラルの魔石を持ったら、急いで…」


「シュッ!」


【【【シュッ!】】】



 ……何してるんだいシロン。


 集まってきたサーペントたちが兵隊みたいに規律よく並んでるんだけど。 


「何これ? どういう状況……! 『蛇使役』ってそういうこと?」


「シュ、シュ」

【【【シュ、シュ】】】


 シロンに合わせてサーペントの皆が、可愛らしくチロチロ舌を出し入れしてる。

 スキルの説明通り蛇のモンスターを使役……操れるなんて。


「6年も探索者見習いをやってるけど、こんなスキル効果見たことないや」


【【ルオオオオオオ】】


 皆の可愛らしい姿に目を奪われていると、遠くの方からホブゴブリン2体が棍棒を掲げながら僕の方へと向かってくる。


「あれは? もしかして、さっきシロンに溶かされたゴブリンジェネラルの仲間なのかい? ま、まずい。早く逃げるか倒さないと、シロン」


「シューッ!!」

【【【シュ、シュー!】】】



 サーペントたちの口から紫色の体液が水鉄砲のようにホブゴブリンに発射された。


 それも四方八方からだった。


 いつの間にか僕が知らない間に、数百を軽く超えるサーペントたちに囲まれていたみたいなんだ。


【【グギャァ!?……】】


 そして、さっきのゴブリンジェネラル同様にホブゴブリンたちは溶けて絶命した。


 本来、ダンジョン内のモンスターは倒されたら少しの間肉体を残して徐々に消滅していくんだけど、完全に溶かされている。


『レベルが3に上がりました。合計スキルポイントを10取得しました。また脱皮スキルによりレベルを1にレベルダウンしますが、ステータス低下はありません』


 ステータス画面に色々と表示された。


「サーペントは本来低級モンスターなのに、集まるとこんなに強いなんて……これが『蛇使役』のスキル。それじゃあ、他のスキルも蛇使役みたいに強力なスキルってこと?」


 スキル説明の蛇王心眼、八岐大蛇にタッチして説明欄を表示しようとしても反応しない。


「……なんで?」


『スキルポイントで熟練度を上げなければ、情報開示されません。スキルポイントを割り振り、熟練度を上げますか?』


 またステータス画面に色々と表示された。

 

「上げるって、そもそもレベルを上げてスキルポイントが手に入らないと割り振りもなにも……いや、レベルアップしたんだったね」


 さっきからとんでもない事態の連続だから、気が動転してるや。


「シュ、シュ、シュ、シュ、シュ~!」

「……あれ? シロン何してるの?」


 舌をチロチロ器用に出し入れして、ステータス画面をシロンがいじっ……てる!?


『スキルポイント5を消費し、スキル『蛇王心眼』『八岐大蛇』の熟練度が1上昇しました』


「本当に何してくれてんのシロン?」


「シュッ!」


「いや、『シュッ!』じゃなくてさ。貴重なスキルポイントがまた無くなってるじゃないか。スキルポイントはレベルが上がるにつれて付与されづらくなっていくんだから慎重に………レベルが1に戻ってる?」


 けど、ステータスはレベルアップした時と同じ? いや、上振れしてる……成長率1.5倍って表示されてるし。


「いったいどうなってるのさ?」


「シュ~!」


【【【シュ~!】】】

 

 僕の周りで楽しそうに遊び始める蛇モンスターたち。そんなに騒いだらモンスターがやってくるんだけど。


【【ルオオオオオオッ!!】】


「ほら、またホブゴブリンたちが来たじゃないか!」


「シュッ!」

【【シュ、シュ~!】】


【【グオオォ!?……】】


 ……そしてまた溶けた。


『レベルが3に上がりました。合計スキルポイントを10取得しました。また脱皮スキルによりレベルを1にレベルダウンしますが、ステータス低下はありません』


 そしてまた同じようにレベルが上がって。

 それ以降こんなやり取りが数千回続いたんだ。



―――――――――――――――――――――

八岐伊吹

ジョブ・蛇ノ王

レベル1

 

スキル

蛇使役 熟練度100

蛇王心眼 熟練度100

八岐大蛇 熟練度100


体力1000

魔力800

攻撃500

防御500

速度500

―――――――――――――――――――――



 その結果、レベルに合わないデタラメなスキル熟練度と異常ステータスを、僕は手に入れてしまったんだ。


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