第1話 覚醒の蛇ノ王
「あ、ああ、ああああああああああっ!!! シロン!!」
「ハハハ! 汚い死骸だぜ」
「潰せ、潰せ~!」
「うわぁ、原型留めてないし。ぐちゃぐちゃでキモい~!」
ニョロニョロとさっきまで動いていた相棒の蛇「シロン」が、同じパーティーメンバーたちの靴の裏で押し潰されていく。
「や、やめろ! やめろよ! シロンは僕の大切な家族……がはぁ!?」
抵抗しようとしたら、顔面をおもいっきりリーダーの小杉に殴られた。
「うるせえぞ、八岐! もとはといえば、てめえのクソペットがしくじるのが悪いんだろうが!」
「シ、シロンはしくじってなんてないさ。君たちがポイズンスライムの特性もろくに知らずに攻撃なんてするから、シロンは君たちを庇って重傷を……ごはぁ!」
「だから、俺たちのせいじゃねえっての。名家の落ちこぼれだからって調子に乗るなよ。役立たずスキル持ちがよ」
もう1人のメンバーには腹を殴られた。
許さない。僕の大切な家族を踏み殺しただけでなく、愚弄したことを絶対に許さないからな。
「ねぇ~! そんな奴はさっさと追い出してさぁ。せっかくD級のポイズンスライムも倒せたんだから、さっさと受付で換金してもらって新しいパーティーメンバーを募集しに行こうよ。使い魔も死んでスキルも使えなくなった無能なんて放っておこうよ」
「ハハハ!! だな! じゃあな、ダンジョン探索もろくにできなくなった無能な伊吹さまよ」
「お前なんて、このパーティーをクビになったらどこのパーティーも拾ってくれない落ちこぼれなんだし、これから大変だな荷物持ち。バイバイ~! ギャハハ!!」
なんでそんなに楽しそうなんだ?
お前たちは僕の家族を踏み殺したのに!
……あいつらはダンジョンの入り口に戻るための転移門へと入っていく。勿論、僕の荷物も全て奪っていった。
残されたのは身一つと、目の前のシロンの踏み潰されてぐちゃぐちゃになった遺体だけだった。
僕の名前は八岐伊吹11歳。探索者見習いとして最近何かと話題のBランクパーティー『マングース』を《《今》》クビになった。
「おぇ!……ハァ……ハァ……僕のスキルが使えないんじゃない。そもそもおかしな使い方をさせていたのはそっちの方じゃないか。くそ……よくも僕の大切な家族を……シロンを殺したな。絶対に許さないからな」
僕はシロンの死骸をかき集めた。
動くはずもないシロンだった死骸……?
「なんだこれ? 蛇の脱け殻? さっきまであったシロンの身体はどこに?」
その時だった。
脳内に女の子の声が聞こえてきたのは――――
『聖獣幼体白蛇のスキル「脱皮」を確認しました。これにより白蛇の飼い主である八岐伊吹のスキル解放及び成長を容認します』
女の子のアナウンスが終わると同時に、ステータスが僕の意思とは関係なく目の前に表示された。
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八岐伊吹
ジョブ・蛇使い
レベル0
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ステータス画面には、いままで見たこともないような表示がされていた。
「蛇……の王?」
「シュ~!」
「シ、シロン!? なんで? 生き返ったのかい?」
「シュ、シュ~!」
長い蛇舌をチョロチョロ出し入れしながら、僕の頬に擦り寄ってくるシロン。
その白い体は死骸になる前より数ミリだけ肥大化しているように思えた。
「シュ、シュって、シロンなんで生きてるんだ?」
「シュ~!!」
「は? 伊吹、後ろ後ろって、志村のコントじゃないんだから、敵がいるわけ……」
【グオオオオオオオッ!!!】
……いた。
上野ダンジョンの主、ゴブリンジェネラルだった。
すごくでかいや。
持っている棍棒を僕の頭へと振り下ろそうとしている。
【ルオオオオオオッ!!】
「うわああああっ!! シロン! 逃げるんだ、君だけでも!!」
「シューーー!!」
【オオオォォッ!!……オォ!?…………】
シロンがゴブリンジェネラルへと口を開けて何かを飛ばした?
一瞬でドロドロの身体に……いや、完全に液状化した?
「ゴブリンジェネラルの体が?……これは、シロン!」
「シュ~♪」
「いや、シュ~♪じゃなくてさ。ちゃんと説明してよ。シロンが生き返ったことや、C級ランクのゴブリンジェネラルが一瞬で絶命……」
ピコンッ!
『蛇使い・八岐伊吹のレベルが1上がりました。よって、八岐伊吹のジョブが蛇使いから蛇ノ王へと変化しました。これにより初期スキルとスキルポイント5が付与されます』
「……またいきなり脳内アナウンスとステータス画面が勝手に開い……」
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八岐伊吹
ジョブ・蛇ノ王
レベル1
スキル
蛇使役
蛇王心眼
八岐大蛇
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「……蛇ノ王?」
「シュ~?」
これまで僕に発現しなかったスキルの一覧。それが今、ステータス画面に表示されていることに驚愕する僕。
そしてこの瞬間から、僕の人生が大きく変わっていくことになるとは、この時の僕はまだ全然気がついていなかったんだ。




