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転生した元大賢者が、家を出るまでのお話  作者: ぐまうす


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 ―― 半年後。


 そこはとある街のレストランだった。

 そして店の前には一人の少女が立っていた。

 どうやら人を待っているようだ。

「おーい、サーちゃん」

 少女は声がした方を見ると、男一人女三人のパーティが歩いて来ていた。

「お久しぶりでございます、皆様方」

「三ヶ月振りぐらいかしら?」

「はい」

「調子はどう?」

「何事もなく楽しく過ごさせていただいております」

「何かあったらちゃんと相談しなよ、ヴィオーラでもあたいらでもいいから」

「そこは、ウィリアル様ではないんですね」

「……なんだかんだであの子が一番問題起こすからねぇー」

「とりあえず、中入らないか、アルは中で待ってるんだろ?」

「はい、案内しますね」

「それにしても、サーシャも中で待っていたらよかったのに」

「呼び出したのはこちらですし、思ったよりおこしにならなかったので、もしかしたらお店が分からず迷っているのかもと思いまして、目印になるようにお店の前に立ってだけですし」

「確かに遅れてきて待ち合わせの時間ぴったしじゃないけど、そんなに遅れたつもりはねぇけどな。アル達はいつ頃からいるんだ?」

「一時間ほど前からでしょうか?」

「そんなに早く来たの?」

「いえ、ウィリアル様からはその時間だと伺っておりましたけど」

 四人の顔が険しくなる。

「外で待つっていうのは、お前の考えか?」

「はい、二回ほど外を見てくるようにいわれたので、それならばと三回目で私が外で待つことをウィリアル様にお伺いいたしました」

「これはもしかしてやられたかっ! 個室を頼んであるんだろ、部屋はどこだ」

「まっすぐ行って突き当たりの右に曲がってすぐの部屋です」

 四人は急いで言われた部屋に向かい、少し遅れてサーシャは後を追った。

 ドアを勢いよくあけたて見た部屋のなかには誰もいなかった。

「お手洗いにでも行かれているんでしょうか?」

 そういうサーシャをよそに、四人はテーブルに置かれている鞄を見る。

「サーちゃん、これにはあたい達がウィーに依頼していた魔封具が入ってるんだよね?」

「はい、ウィリアル様はもうすぐ戻ってくるとおもいますが、どうぞ先にお開けください」

 言われてラルフがあけると魔封具の他に折り畳まれた一枚の紙が入っていた。

 ラルフはそれを手に取って紙に書かれていることを読んだ。

「ちっ、あのバカヤロウ」

 横からエルが紙をとって三人で読み、読み終わるとサーシャに手渡した。

「どうしたんですか」

 四人の雰囲気が怒りに満ちていることに怯えながら紙に書かれていることを読んだ。

『拝啓 先生方へ

 この度、サーシャさんはこの半年で力の制御を学び習得したので人間として生きていけるとヴィオーラと共に判断し、先生方に預けることにしました。

 正直、厄介事に巻き込まれそうな先生方に預けるのはどうかなとは思いましたが、僕といるよりは楽しい人生を生きていけると思い、預けることにしました。

 そして長い旅の途中で安住の場所を見つけることがありましたら、支援のほうをお願いします。その時はヴィオーラ経由で資金を提供しますので、ヴィオーラに連絡してください。

 ちなみに、僕を捜そうとしても、僕は世界を巡ろうと思うので捜し出すのは無理だと思いますので、諦めてください。直に会うことは二度と無いでしょう。

 そしてサーシャへこれは命令です。

 P,S, ここの代金は払っているのでその範囲で飲み食いしてください、オーバーしたら自分達でどうにかしてください』

 サーシャはその場にへたりこんだ。

「サーシャ、いつから店の前で待っていた?」

「……十五分以上前です」

「あの馬鹿なら、かなり遠くまで逃げおおせるな。ヴィオーラに遠隔会話は出来ないか?」

「反応が無い、おそらく、十分な距離を稼ぐまでこちらからの呼びかけに応えないつもりだと思う」

「でも、フィーン貴女の魔法なら探せるんじゃない?」

「それこそ無理、わたしがヴィオーラの幻術に勝てると思う?」

「もうあの子は!」

 しんと静まり返る。

「私はウィリアル様に捨てられたのでしょうか」

 サーシャは震えるる声でそう呟いた。

 四人は何も言えなかった。

 ウィリアルがサーシャの為を思って四人に預けたのは明白だったが、二度と会うことはないと言い切っている。これは捨てられたと思ってもしょうがないと分かっているからだ。

「……サーちゃん、あたい達とウィーを捜しにいこう?」

 ギャリーが提案したが、サーシャは首を横に振った。

「私はウィリアル様の使い魔です。命令をされたのなら、それに従います。ですが皆様にはご迷惑をおかけするわけには行きません。私はこの街に定住します。どうぞ皆様は皆様の旅をお続けください」

 サーシャの言葉に四人は何か言おうとしたが、四人を見るサーシャの瞳に宿った決意を前に何も言い出せずにいた。

 それでもとギャリーは口を開く。

「あたい達は迷惑なんかじゃないよ。あたい達なんてただの根無し草さ、まー多少は厄介な事情はあるけど、それでもウィーを捜すより大切なことじゃない、だから一緒に行こ?」

「お気持ちは嬉しいです。ですが私はここに残ります。私が使い魔として使えないからウィリアル様は私を残して行かれたのでしょう。不要な使い魔はこれ以上ご主人様に関わるべきではないのです。でもだからこそ最後のご命令を果たしたいと思います」

「本当にそれでいいのサーちゃん!」

「わ、私は、それで……」

 その時、サーシャの目から一筋の涙が流れた。

 そしてその涙が突如輝いた。

『久しぶりー』

 そこは半年前に見た白き空間。

 そして目の前には明けの明星のごとき輝きを放つ白金の竜がいた。

「星竜后様!」

 全員慌てて膝を付いた。

 沈黙が流れる。

 お互いずっと無言であったが、星竜后はふと気付いたようにポンと手を叩いた。

「あら、ごめんなさい。私が許可しないとしゃべれないわよね。面を上げなさい、発言を許しましょう」

「お許しありがとうございます。それはお伺いしますが、今回はどのような理由で現界されたのでしょうか」

 エルが代表として尋ねた。

『簡単な話です。ウィリアルがサーシャを貴方達に預けようと考えているのを知っていたので、ちょっとその娘に細工をしていたのです』

「お知りになられていた?」

『あの時言ったでしょう、貴方達にも知っていたほうがいいと』

 なるほどそういうことかと四人は納得する。

「それで、細工とはなんでしょうか」

『私はあの時呼ばれた理由であるその娘を少し試すことにしました。まあ合否次第で何かあるという程のものではないですが』

「試しですか」

『この娘が心の底からあの者を想うかどうか、それを知りたかったのです』

「それは何故でございますか」

『もちろん、私を呼び出すほどの価値があったのか知りたかったからです。そしてそれはこうして示されました。貴女にはそれだけの価値はありました』

「恐れながら申し上げます。私が目覚める前に何があったのかはわかりません。ですが星竜后様が呼び出された理由は私ではなく、死んでしまったサーシャ様の為だと思われます。それに私はウィリアル様に捨てられました。なのでただ死体を使わせていただいている私が認められるものは何もありません。そもそも試される価値すら無いのです」

 サーシャの言葉に誰かが歯を食いしばる音が聞こえた。

『いいえ、試すのは貴女で間違いはありませんよ、サーシャ。これは自惚れで言うわけではありませんが、私の召喚は叶うかはどうかは別にしても彼にとって最大の切り札だった筈です。それを貴女の為に使った。ですが私には貴女にはそれ程の価値があるとは思えなかったのです。なぜなら彼は貴女をどうでもいい存在だと本当に思っていたのですから、助けだそうという理由もその四名に頼まれたからですし』

「あのですから、私はそのサーシャ様ではなくて……」

『そうですね、これでは話が進みません。なら本来の目的をまずはやりましょうか』

 星竜后の体が光ると同時にサーシャの頭から何か砕けるような音がなった。

『私はあの時、一つの細工をしました。サーシャ、貴女が私の暗示を超える程の想いを持って彼に関することで涙を流した時、私にそれを知らせるという細工を、そしてそれをもって私は貴女に掛けた暗示の解除と貴女が死んで目を覚ますまでにあったことを教えることにしていたのです』

「これは……」

 サーシャは作られた存在ではなく本物のサーシャとしての自覚と何があったのかを見せられた。

『あの者は貴女の為に奇跡とも言っていい程の偉業を行いました。そしてあの者が世界で最も信頼しているこの者達に預けられた貴女は、捨てられたと思いますか?』

「思いません、思いませんが、それでも一緒に連れて行って欲しかった! そして分からないんです、私もあの方が私のことなんてどうでもいいと思っているのは分かっていましだ。でもだからどうして私は救われたのでしょう」

「そんなの簡単なことだよー」

 いきなりこの場にいないはずの者の声が響いた。

「いやー面白いことやってんねー」

『普通なら介入なんて出来ませんよ、ヴィオーラ』

 ヴィオーラに渡された指輪に対して星竜后は言った。

「まあねー、でも面白そうなことが聞こえてきたから元の世界にいる本体に力を貰ってねー」

『それで貴女は答えが分かっているんですか』

「簡単なことだよー、ただ信じてくれたそれだけー。サーシャはウィリアル君の助けるという言葉に対して死を覚悟をするほどの信頼を見せた。だからただそれに見合った方法を用意して使わない方法も用意したけど使わざる負えなかったから使った、ただそれだけさー。まあただ暗示を掛けるのは過剰だったんじゃないかなとはボクも思ってる」

『なるほど、覚悟と信頼に応えただけ、そういうことですか。それが分からなかった私がそれほどの価値がある者かどうか測る為にやったことは、無粋でしたね』

「ほんとにねー」

『……ゴホン。というわけです、全て知った貴女はどうしますか? サーシャ』

「捜します。私は使い魔のサーシャではありません、ならば命令を聞く必要はありません」

「捜し出した後はどうするのー?」

「感謝してお礼して、そして捨てるように置いていったことに対してグーパンします」

「おう、その話俺達にも噛ませてくれないか」

「はい、勿論です」

「じゃあ、ボクはお暇するね、ここでの話しはウィリアル君には面白そうだから内緒にしておくけど、逃げることには全力を尽くすからボク達を見つけることが出来るかな? さあ楽しいゲームの始まりだね。それにしても誰が射止めるんだろうねー」

 指輪から感じられたヴィオーラの気配が消える。

『私もこれ以上の介入をする気はありません。ただどうなるかは見守っています。頑張ってくださいね』

 星竜后も消えていった。

 元いたレストランの個室に戻る。

「さて今からどうする? 今から追ってもどうしようもねぇだろ」

「そんなの決まってるじゃん」

「そうそう」

「うん」

「あの、えーと?」

「じゃ、あの馬鹿が金払ってくれてるらしから、新しいメンバーと目標を祝してパーティーしようぜ」

「おー!」

「お、おー!」

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