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受付窓口32

 距離には意味がある。


 近すぎれば壊れ、


 遠すぎれば見えなくなる。


 だが世の中には、


 その距離を無視してくる存在がいる。


 受付とは、


 そうした“踏み越えてくる者”とも向き合う仕事である。



登場人物


■ 受付男子(主人公)

元冒険者志望の異世界転生者。

スキル〈受付男子〉と加護〈ダンジョンガイド〉を持つ。

現在は受付マスターランク候補。

理不尽耐性と対応力が異常値。



■ 皇帝姫(妻)

王の娘にして主人公の妻。現在妊娠中。

強さ・権力ともに規格外。

主人公への独占欲と保護意識が強い。

この案件を知れば確実に荒れる。



■ 国王(義父)

娘溺愛型の支配者。

主人公を警戒しつつも一定の信頼を置く。

最近は「厄介な男」と認識。



■ 受付マスター(上司)

受付制度の頂点。冷静沈着。

主人公の異常性を最も理解している人物。

基本的に放任だが、必要な時は即介入。



■ ドS級美人試験官エリゼ

元受付マスターランク試験官。

現在は“観察者”として主人公を追跡。

知性・戦闘力ともにトップクラス。

主人公に強い興味を持ち、半ば執着している。



■ 受付職員たち

日々窓口で戦う実務部隊。

今回の案件により精神的ダメージ増加中。

主人公に丸投げする傾向あり。



■ 冒険者たち

窓口を訪れる利用者。

今回の件には直接関係ないが、騒がしさの主因。

基本的に空気を読まない。


受付窓口32


「ストーカー案件、受付対応中」


「……あの」


 受付職員が小声で話しかけてきた。


「どうした」


「最近、その……」


 言いづらそうに視線を逸らす。


「あなたを指名する人が増えてまして」


「それはいつもだろ」


「いえ、その」


 さらに声を潜める。


「同じ人が、毎日来てるんです」


「……ああ」


 心当たりがあった。


「黒いローブのやつか」


「はい……」


 やっぱりか。


「何か問題起こしてるか?」


「いえ、それが……」


「?」


「完璧なんです」


「は?」


「手続きも正確、質問も的確、態度も丁寧」


「優良客じゃないか」


「でも毎日来るんです」


「それはまあ……」


 仕事熱心なだけでは。


「しかも」


「まだあるのか」


「用件が毎回同じで」


「何だ」


「“あなたに説明してほしい”とだけ」


「……帰れ」


「帰しきれないんです!」


 受付としては正当な利用。


 拒否できない。


「なるほどな……」


 面倒だが違反ではない。


 それが一番厄介だ。


「今どこだ」


「外で待ってます」


「早いな」


 完全にタイミングを読まれている。


「……呼べ」


「いいんですか!?」


「このまま放置する方が面倒だ」


 数秒後。


 扉が開く。


 入ってきたのは――


 黒いローブ。


 フードで顔は見えない。


「……受付男子」


 低い声。


 どこか聞き覚えがある気がした。


「用件は」


「今日も説明を頼む」


「内容は」


「何でもいい」


「帰れ」


「それは困る」


 即答される。


「業務を遂行してほしい」


「お前のそれは業務じゃない」


「私は正規利用者だ」


 論理で殴ってくるタイプ。


 一番面倒だ。


「……目的は何だ」


「観察」


「帰れ」


「拒否する」


 堂々としている。


 逆に怖い。


「なぜ俺だ」


「あなたは特異だからだ」


「やめろ」


「他の受付と違う」


「やめろ」


「対応が速く、判断が正確で――」


「やめろ」


「そして」


 一歩近づく。


「世界の歪みに近い」


 空気が変わった。


「……お前」


「気付いている」


「何者だ」


 沈黙。


 そして。


 フードがゆっくりと外される。


「久しぶりね」


「……お前か」


 現れたのは――


 ドS級美人試験官。


「エリゼ」


「ストーカー扱いは心外ね」


「違うのか?」


「観察者よ」


「言い方変えただけだろ」


 ため息を吐く。


「何の用だ」


「決まってるじゃない」


 微笑む。


 嫌な笑顔だ。


「第二部が始まったから」


「メタやめろ」


「あなたがどう壊れていくか、見に来たのよ」


「帰れ」


「断る」


 完全にいつもの流れだった。


「安心して」


「何が」


「邪魔はしない」


「もうしてる」


「むしろ協力する」


「信用できるか」


「できないでしょうね」


 即答された。


「でも」


 視線が鋭くなる。


「今回の“ダンジョン増殖”」


「関係あるのか」


「あるかもしれないし」


「ないかもしれない」


「一番信用できないやつだ」


「だから面白いのよ」


 最悪だ。


「帰れ」


「帰らない」


「受付は忙しい」


「知ってる」


「だからここにいる」


 理屈が通ってしまっている。


「……好きにしろ」


「そうする」


 完全に居座る気だ。


「受付男子」


「何だ」


「逃げられないわよ」


「分かってる」


 最初からだ。


 窓口に立った時点で。


「だから」


 書類を手に取る。


「仕事するだけだ」


 それが答えだった。

ストーカーか、観察者か。


 その違いは紙一重である。


 だが問題はそこではない。


 “なぜ追われるのか”だ。


 受付男子は、ただ仕事をしているだけだ。


 だがその仕事は、


 世界の歪みに最も近い場所にある。


 だからこそ。


 見る者は現れ、


 関わる者は増え、


 距離は崩れていく。


 窓口は開かれている。


 誰に対しても平等に。


 ――たとえ、それが厄介な観察者であっても。

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