3 繁殖の準備
SFですが、ちょっと重めな設定かもしれません。
でも、なんとしてもハッピーエンドにしてやる! と思って頑張って書きます。
どうぞよろしくお願いします。
ハルの自室に迎えに行く。
「ハル! アイだよ!」
チビアイをハルの部屋のセンサーにかざすと少しの間の後、ドアが開いた。
入ると閉まる。
「ハル、ミセスのとこ行くよ」
ハルはベッドの上でゴロゴロしてる。
「なに? 体調悪いとか?
朝もなんか元気なかったもんね」
「……なんかお腹痛い」
「どこ?」
「ここらへんが重い感じで……」
下腹部をさするように答える。
「……初潮が来るのかもよ。
私も最初お腹というか、下の方が痛かった。
ミアは頭痛もあったそうだし」
「……嫌だな。
アイは嫌じゃないの?
血が出てさ、痛いみたいだし。
繁殖とか出産とか、怖い痛そうな話もされるし……。
……アイにはミクラがいるもんね。
怖くないか……」
「ミクラはオリジナルが関係あるだけで……。
私達はどうなるかはわからないよ。
人工繁殖を選べば、遺伝子的に別の人の精子をマッチングされる可能性もあるんだし」
「人工繁殖とか自然繁殖とか……、どちらも怖くない?
知らない間にお腹に子どもが宿ってるなんて、しかも宿らせなきゃいけないなんて……」
「……まあ、それはそうなんだけど。
お腹を温めると痛みが和らぐし、痛み止め薬も使えるよ」
「……うん、温めることにする」
「じゃあ、お湯入れた水筒持ってくる。
待ってて」
私は自室に戻り、金属製の水筒にお湯を入れた。
カバーを付けるとハルの部屋に戻る。
「これ持ってると温かいよ」
「ありがと……」
「行けそう?」
「ん、アイが繁殖相手なら何も怖くないのに」
「なにそれ?」
「アイが男の子だったらなって思う」
「へー、私が男ならカイみたいにごつくなってたかもよ!」
「それはない! きっとない!」
ハルが笑った。
「初潮が来たということは子どもを授かる準備ができたということです。
母となり、子を産み、命を繋いで行くのです」
先生のひとり、ミセスAが私達に初潮と生理について説明し、その後、妊娠、出産について、えらく抽象的でなんかきれいな言葉でまとめた。
「ハル、あなたはこれからだけど、初潮が来たということは子どもを授かれるということ。
自分の身体に責任を持って、守らなくてはなりません。
あなた方には選ぶ権利があります。
人工繁殖、自然繁殖、そして相手を……。
希望がなければこちらに任せてもらうことになるわ」
ミセスAは特別アンケートをこちらに差し出してきた。
授からないという選択肢はないわけだね。
そのための努力はしろと言われているわけで、そこはきれいごとだよなと思う。
こういうアンケートって偽造されたり改竄されたりしないよう証拠として残るように紙を使うんだって。
なんか、誰に対してのポーズなのかって思うけど。
この船の中では先生方が神であり、私達の命を、生活を握っているも同然なわけで。
アンケートという希望を出しても、それがどこまで聞き遂げられるのか、わかんないところがある。
ハルが怯えたような表情をする。
私はミセスAに言った。
「考える時間を下さい。
すぐには答えを出せそうにありません」
ミセスAは意外そうな顔をした。
「あなたにはミクラがいるでしょう?
毎回気に入ってる異性としてミクラを挙げていたし……」
「……そんなの、友達として好きだったわけで、繁殖とか、わかんないですよ!
ミクラだって……、どう考えてるのか……」
ミセスAはため息をついた。
「……わかったわ。
考えてみて。
相談するならしてもいいし……」
私とハルはミセスの部屋から出た。
アンケート用紙はミセスの部屋に置いてきた。
持ち帰って紛失したら怖いし。
勝手に記入されて提出されたりとか、ないとは言えない……。
先生方は、この船が地球から離れて太陽系外宇宙空間に出た後、回転を始めてゆっくりと移動するスペースコロニー化したところで、コールドスリープを解かれた。
まあ、最初から乗組員として乗り込んでいたというか、コールドスリープをしているオリジナル達が乗客と考えれば、乗務員ってことかな。
私達の担当はミセスA、ミスターA、他にもうふたり、Aよりはちょっと若いのかなというミセスBとミスターBがいる。
Bの方がもし家族ならばお母さんぐらいな歳なのかな? と想像することがある。
それぐらいの年齢だ。
Aの先生方は第1グループから担当していたそう。
まあ、ベテランってことで、Bの2人が指導を受けているって感じかな。
私達には内緒にされていたり、入れなかったり行けなかったりする場所や制限が多すぎる。
人権があると言われながら、それはどうなのかと思うけれど。
先生達は繁殖人員も兼ねているそうだけど。
先生達の子どもって、聞いたことも見たこともない。
もしかしたら、この広いコロニーに私達が知らない住居スペースがまだまだあるのかもしれない。
私達が繁殖で産んだ子は5歳まで手元で育てられるけど、それ以降は先生達の側に……。
そこでは人間として扱ってもらえているのだろうか?
クローンとクローンから生まれた子は人間になるということは、人間とは受精卵を母親が胎内で育てて出産するという定義なのだろうか………?
まだたくさんの先生方がいて、私達を監視して、そちら側の世界を築いているのかもしれない……なんて思うこともあるけれど、それは誰にも話したことがない。
とりあえず私が知る4人の先生がクロー……、先生方の言葉だとプラネットチャイルドを育て教育し、乗務員であり繁殖して栄えるように指導するということで……。
それが今の私の世界のすべてだ。
読んで下さりありがとうございます。
こんな暗い話をどうやってハッピーエンドに持っていくか、少しずつ見えてきました。
お付き合いいただけたらうれしいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。