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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第1章 水の行方 (アイ視点)
1/16

1 波紋

SFですが、ちょっと重めな設定かもしれません。

でも、なんとしてもハッピーエンドにしてやる! と思って頑張って書きます。

どうぞよろしくお願いします。

 水面に水滴が落ちて、波紋がひろがっていく。

 私はその澄んだ水音と微かな振動で目を開けた。


 不思議な光景が目の前に広がる。

 温かい穏やかな光の中で、水面が広がっていた。


 再び水滴が落ちる音がして、波紋が新たに拡がり……。

 さっきより振動が強い。


 あれ、何かおかしくない?

 波紋って、こんなに振動が来るもの?


 目が覚めた。

 左腕のAIが起床時間でずっと振動してたみたい。

 枕の下に左腕を突っ込むように寝てたからなかなか気がつかなかったんだ。


 夢の中で目覚めて起きてた夢なんて、なんか損した気分。


 あくびをしながらベッドの上に半身を起こした。


『起床。7時18分。

 いつもより遅いペースです』

 左手首のサポートAIが音声で教えてくれる。


「おはよ。チビアイ。

 8時に、中央コントロールだよね?」


『おはようございます。アイ。

 はい、後41分です』

「そんだけあれば楽勝!」


 言うなり跳び起きて、戸棚からコーンフレークと冷蔵庫から牛乳を取り出してさらにフレークを出してミルクを注ぐ。

 お湯をカップに注ぎ、紅茶のポーションを入れてスプーンでかき混ぜる。


 顔を洗い、軽く口をすすいでから、コーンフレークを食べ、紅茶を飲みながら制服に着替えた。

 最後に髪を1本のみつあみに編んでゴムで留める。


 自室を出て中央コントロール室に向かう途中で、ミクラに会った。


「おはよ、ミクラ!」

「おはよう、アイ!」


 私は微笑む。

 ミクラは好き。

 子どもっぽいところと大人っぽいところとアンバランスなところもあるけど、そこも面白いと思える。

 不思議な魅力があると思う。

 私は一緒にいてとても楽。

 

 オリジナル達は恋人同士らしいけど。

 だからと言って、私達が同じような感情を持つとは限らない、と思う。


 だから、シフトが一緒なことが多いのは、たぶんお互いに気に入った人の名前として書き合っているからだと思うけど……。


 中央コントロール室に着くと、私の左手首のAIであるチビアイが『7時53分』と教えてくれた。

 私は自分の子どもの頃の声にしているので、チビアイと呼んでいる。


「もう少しゆっくりしてても大丈夫だったんだ」

『10分前行動を心掛けて下さい」

「7分前に着けりゃ、十分だよ」

 私は言い返した。


 制御コントロールの見守りをしていたカイとハルと交代する。


「お疲れ! 異常なし?」

「ああ、異常なし!

 アイはこの後、12時までだよな」

 カイが返事しながら聞いてくる。

「うん」

 

 ミクラがパネルを見上げて言った。

「うん、オールグリーン。

 引継ぎ完了」

 ハルはスーッとコントロール室を出て行く。


 私とミクラはカイとハルが座っていた椅子に座ろうとして、カイに話しかけられる。

「ごめんミクラ。

 ちょっとアイ借りていい?」

「……借りるって、アイは俺のじゃないし」

「じゃあいいか。

 アイ、ちょっと話せる?」


 8時まで後3分ある。

「8時までなら、何?」

「ちょっとこっちに来て」


 腕を掴まれ、コントロール室の隅に連れて行かれる。

「今度のアンケート、俺の名前書いてよ」

「なんで?

 気に入った人を書くんだよ。

 お願いすることじゃない」

「だから、俺はアイの名を書くから。

 もっとアイと過ごしたいし、俺はアイが気に入ってる……。

 アイはミクラかもしんないけど。

 ほら、アイは医学者で、俺は動物学者だから、もっと一緒に過ごせば話も合うと思うんだ」

「うーん、それもオリジナルの職業でさ……」


 その時、チビアイが警告音を出す。

『アイ、持ち場に戻って下さい』


 私は慌てて、パネル前の椅子に戻り座る。


 カイが「考えてみてよ!」と言いながらコントロール室から出て行った。


 ミクラがこちらを見て言った。

「アンケートのこと?」

「……うん」

「俺はアイを書くから」

 私がミクラを見るとふいっとパネルへ視線を移したところで……。

 ミクラの横顔を見ることになった。


 こんなとこがミクラにはある。

 自分で考えなと突き放されてる感じもするけど、それはそれでいいと思う。

 私達はそれぞれなのだから。


 ミクラのオリジナルは宇宙工学者だ。

「……オリジナルに引っ張られてるってことあるのかな?」

「……オリジナルが恋人同士だからってこと?」

「うん、私もミクラが気に入ってるけど、それは、自分の思い……何だろうか?」

「オリジナルとは違うってこと?」

「うん、ミクラはそう思わない?

 私のオリジナルの篠塚愛しのづかあいは医学者で……、でも、報告を読んだ限りでは私と違うところもあるよ」

「それは、まあ、生育環境が全く違うからな」

「そうだよね。

 オリジナルは地球で育ってるし。

 家族だっていたわけだし、環境や経験が全然違うよね。

 それなのに、私達はオリジナルと同じ職業になるように教育されてる。

 全くオリジナルと同じになるわけじゃない。

 クローンチャイルドだけどさ」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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