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俺と姉貴がオンラインゲームで付き合ってる話 続々  作者: 黒斬行弘


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後悔

 やってしまった・・・。気付いたら、あんな発言をしてしまっていた。


「ちょっとあんた何やって・・・」


 里奈の奴がばたばたと廊下を走って俺の部屋へやって来たが、俺の顔見た途端、途中で何も言わなくなった。


「あんた・・・何よその顔・・・。ちょっと待ってなさい」


 そう言って、今度は階段を下りて行ったようだ。何よその顔って、一体どんな顔してたんだろうな俺。


 あんなこと言うつもりじゃなかった。大体あれはいつもの明海(あけみ)さんのジョークじゃん。わかってるんだよそんな事。


 そもそも俺は明海さんにむかついたわけじゃない。たぶん、きっかけだったんだ。限界が来てたんだと思う。それが、きっかけ一つで爆発してしまったんだ。


 あーもう!どんな顔して明海さんに顔を合わせりゃ良いのかわかんねーよ!


「はいこれ」


 俺が自分のやったことを頭を抱えて後悔していると、いつの間にか里奈が戻ってきていた。手にはマグカップを持っていて、そこから湯気が出ている。


「とりあえずこんな時は暖かい飲み物が一番よ」


 そう言って、俺にカップを手渡した。中身はココアのようだ。自分の分も持ってきたようで、ふーっと冷ましながら飲んでいる。


 それを見て、俺も冷ましながらココアを口に含んだ。ココア特有の香りと温かさが体全体に行きわたるようだった。そういえば、落ち込んでる時は暖かい飲み物が良いっていうけど、結構落ち着いてきた気はする。


「すまん」


 俺は里奈にそう言っていた。


「別に謝られるような事はされてないわよ」


「いや、ギルドメンバーとしては迷惑をかけてる」


 勝手に「エゴサ」して勝手に落ち込んで、勝手に仲間にキレてるんだ。この上ない自己中野郎だよ。


「そんなに反省してるなら、直接明海さんに謝ってきなさいよ」


「無理。どんな顔して会えばいいか全然わからん」


 完全に俺の八つ当たりなのに、どの面下げて許してくださいなんて言えるんだよ。


「なあ、悪いけど一つ頼まれてくれないか?」


「いいわよ。明海さんにあんたが謝ってたって言っとけばいいのよね」


 俺の考えている事を当てられてちょっとびっくりしたが、まあ、わかるよなそんなもん。俺だって逆の立場だったら、こいつの考えそうなことわかるもんな。


「悪い。いつか必ず直接謝罪はするから」


「はいはい、わかったわよ」


 そして里奈はそのまま手を振りながら部屋を出て行った。正直、今回の事について責められなかったのは助かる。


「ギュワアアン!」


 突然携帯からロックギターの着信音が鳴った。名前を見ると「利久(りく)」になっている。たぶんさっきのを見て、掛けて来たんだろう。


「もしもし」


「おい!お前大丈夫か!?」


 すげえでかい声で利久が喋って来た。


「悪いな、迷惑かけた」


「いや、俺は良いんだけどさ。何かあったの?」


 まあ、色々あったんだけどな。今の俺ではとても説明しきれそうになかったので、とりあえず明日学校で話す、と返した。


「そっかわかった」


「あ、ひとつだけ良いか!?」


「なんだよ?」


「明海さん、どうしてた?」


 俺は利久にすげえ気になってる事を聞いた。


「ああ・・・。あの後、何も言わずに落ちた。すぐ団長も落ちて行ったけどな」


「そうか、悪い、ありがと」


「おう、じゃあ明日な」


 そう言って利久は電話を切った。


 あーどうしよう・・・。明海さんを傷つけちゃたんじゃないか俺は・・・。自分が傷ついたからと他人を傷つけるなんて最悪だ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 次の日、俺は約束通り学校で利久に事の経緯を説明していた。掲示板の事やずっと書かれているのと同じことを気にしていた事なんかをな。


「お前それ、なんで早く俺に言わなかったんだよ」


「いや、なんかこう、とてもギルドの人に見せられるようなもんじゃないって思ったんだ・・・」


「よし、とりあえず見よう!」


「は?」


 利久がとんでもない事を言い出した。


「いやいや、俺はあれをもう一回見たいとは思わんぞ」


「お前は良くても俺は良くねーんだよ!とにかく見せろ!」


 俺は利久に言われて、しぶしぶ掲示板をスマホで開いた。


 すーっとスクロールさせると、例の悪口が書かれている場面が見えて来た。


「ここだよ」


「どれ」


 そう言うと利久は俺のスマホを俺から取って、掲示板を読みだした。


「なんだこれ!」


 しばらくすると、利久は物凄いしかめっ面で、俺に向かってそう言った。


「だから言ったじゃん、不快にしかならないって」


「不快っつーか、くっそ腹が立った」


「まあな。何にも知らないくせに好きかって言いやがってさ」


「そう!そもそもこいつら要塞戦にも参加した事ねーんだぜきっと!」


「評論家気取りって奴か」


「しかも、お前の事言ってる奴ってBMAの奴じゃねーの?」


「それは・・・」


 それは俺も思ったんだ。うちのギルドの連中だったら、間違いなく俺に言うはず。しかもあんな言い方はしない。


 それ考えると、人数もかなり多いBMAの可能性が高い。人員に関しては自由同盟の4倍くらいは居るからな。 


「まあでも、例えばBMAの奴だったとしたら、うちとBMAの関係性考えても、大事にするわけには行かないし・・・」


「なんで?」


「いや、そりゃお前、うちとBMAは同盟だぞ?揉め事起こすわけにはいかないだろう」


「はあ?うちの悪口を掲示板で言うような奴を放置してて同盟とか、お前本気でそう思うの?」


「いや、それは・・・」


「しかもさ、お前と向こうの幹部、結構仲良いじゃん」


 確かに、俺はスターさん達とも仲良くさせてもらっている。


「これで向こうがこの問題を放置するようだったら、俺は同盟なんか組まなくて良いと思うけどね!」


 俺は利久の言葉を聞いて、なんか胸がすーっと楽になった気がしたよ。


 なんかさ、ずーっともやもやしてたんだ。同盟ギルドだし大事にするわけには行かないって。けど、それは違うんだよな。同盟だからこそちゃんとしなきゃいけないんだ。


「まあそれに、お前が言わなくても、向こうの「桜」さんだっけ?あの人辺りが動くんじゃねーの?」


 確かにその可能性はあると思う。自由同盟で俺や明海さんがゲームにログインしてないなんて聞いたら、あの掲示板の事を知っている実明(みはる)さんならそうするかもな。


 なんつーか、利久に話してこんなにすっきりするとは思わなかった。掲示板の連中をぼろくそに最初から利久と言いあってたりしたら、チャットで爆発するまでため込むこともなかったんじゃないだろうか?


「で、お前ゲームはどうすんの?」


「しばらくは休む。どんな顔してログインすればいいかわかんねー」


「お前ホント根が暗いよな」


「ほっとけ・・・」


 まあ、ある程度すっきりはしたけど、それで俺が明海さんに放った暴言が消えてなくなるわけじゃない。


 以前、里奈がセンジンさんと揉めた時にさ、逃げ回ってる里奈に説教垂れた事があるんだけど、俺も全然あいつの事いえねーよ・・・。


 その夜、俺は里奈に団長への伝言を頼んだ。内容はしばらく頭を冷やしたいので、ゲームを休みます。というものだ。それと奥さんである明海さんへ暴言を吐いてしまった謝罪もな。こっちは後で必ずお二人に直接謝罪するとも伝えてもらう事にした。


 それから数週が経ち、ブラックアースは遂に大型アップデートを迎えた。


 そして俺はいまだにログインできずにいた。

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