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4.王女の茶会

以前投稿した分も割と修正しています。すみません。

「あら、一目でわかるわね。ルーに似て美人になったこと」


向こうからは見えないことを利用して、庭を見下ろし目当ての少女を探し出した。

庭を見下ろせる窓の傍、王女ブランカの視線の先には


ルーとよく似た天使のような美少女。

陽光に燦然と煌めく金色の髪に、陶磁器の肌に薔薇色の頬と唇、

金の睫毛に彩られ一段と輝かしいはずの瞳は控えめに視線を落としている。

 

「ルーの心配も、わからないわけじゃないわ」


 夜会に出すのも、茶会に連れ出すのも。

渋っていたことを、思いだしてくすくす笑う。


「姫様」

呆れたように、長年仕える侍女長が呼びかける。

なぁにと無邪気に返し、ついでとばかりに有無を言わせない微笑を浮かべると

また窓の外へ視線を送る。


「でも本当に愛らしいわ。」


 美しい女性を見て、美しいと手放しで称賛できるくらいの人格はある。


でも、


「あんまり、可愛いと。いじめたくなるのよねぇ」


 扇子が気持ちよく音をたてる。


美人で聡明な王女が開く茶会は気持ちの良いものでなくてはならない。


「姫様」

「なぁに。」


「悪戯が過ぎますと、ルー様に嫌われますわよ」

「やぁね、ルーが私を嫌うはずないじゃない。」


 高慢に聞こえる台詞を明るく堂々と言ってのけると、すくっと立ち上がる。


では、名に恥じない振る舞いを。


お目付け役が送り出すきつい言葉に、

華やいだ笑い声を残して茶会へと消えていく。


 入口の外にきっと、ルーが控えていたのだろう。扉が閉められるわずかの間に。

からかう様な笑い声と、静かなテンポで諌めるルーの言葉が聞こえてきた。



  少し疲れたように、侍女長イレールは窓によると階下を見下ろした



「あの子が侯爵家の薔薇姫。よく似て…、美しくおなりだこと…。

……様があのままお育ちになり、並んだらさぞかし…」


 イレールは軽く頭を振ると、部屋を片付けるために侍女に指示を出した。



4.王女の茶会



「あなた、見ないお顔ね。どちらのお家の方かしら。」

 

通常であれば脇に控える侍女も、王家の茶会ではその場に控えることすら許されない。


 外の茶会に出るのも初めてなら、同じ年頃の少女の中に放り出されるのも初めての彼女は

あまり友好的に聞こえなかったその言葉を受け僅かに首を傾けた。


王女の茶会に呼ばれるのは貴族の中でも名のある家の者ばかり

お互いにある程度の面識があり、ただでさえ足の引っ張り合いのこの世界において

見知らぬ顔は今の勢力を壊す不穏分子と判断されかねない。


 全ての目がそちらへ集まる


「わたくしは…」

 

 よく通る声が遮った

  

「あら、わたくしの茶会で無作法をするのはだぁれ。わたくしのお客様でしてよ」


「ブランカさま!」


 茶会の主人に誰もが慌てて居住まいをただす。


「ごきげんよう。みなさま。」


 場の中心が一瞬にしてうつり、華やいだ挨拶の中、席に勧められるままにそれぞれがおさまる。


そのなかで、 ひとりが、我慢できないように。薔薇姫をふりかえる。

王女殿下に挨拶する時も、家名を名乗らなかった少女に対する興味が全体に広がっていた。


「ところで、この方は…」

「お見かけしたことないですわ」

別の少女も好奇心を抑えられないように、たたみかける。


軽く頷くと、王女は優しげな笑みで薔薇姫を見つめる。


「そうね。ごく最近社交界に初めて出たばかりでしたわね?」


はいと愛らしい声が響くのを聞くと。


誰しも顔を見合わせた。


「最近?まあ、でもお城でお会いした覚えはございませんわ」

「あぁ、お城ではないのよ。まだお城の夜会には来ていなかったわね」

「はい。」

薔薇姫はおっとり頷く。

「あら、それじゃぁ。だれも知りませんわねぇ」

「最近のお披露目と言えば子爵家のナーシャぐらいしか聞かないわね」


格下のレッテルが張られたことすら気付かない彼女を置き話が進む。


「まあ、どうしてこちらに?」

怪訝そうに一人が訪ねた。


「それは。殿下がぜひにと、おっしゃるんですもの。私もお会いしてみたかったので

お招きしたのよ。」


「殿下が?」


 動揺と邪推が隠された声に、王女は柔らかく頷く。


「そういえば、どちらのお家の方ですの」


誰もが、聞きたかった質問がようやく発せられ、息をのむように静まり返った。



「それは……」


一瞬言葉を切り、笑顔で王女は言い切った。


「内緒ですのよ。」

「ブランカさま、なぜですの?」


冗談めかした声は、緊張を隠しきれない。

ブランカは、明るく笑う。


「殿下からも言われてますし、連れて来て下さった方にもお家の名前を出さないようにと

重々言われるんですもの。わたくしからは、言えないわ」



 どこかの一族が、後見人にたつのではないかしら。

 さざめくように小さな声がいききする。


「殿下とはサロンでお会いに?」


「さぁ、殿下もいろんなところにお顔を出してるみたいですし。

まぁ、後からいらっしゃるかもしれませんし。この話題はここまでね。」



 誰もが、雰囲気を壊さぬように笑いながら。

水面下で、思考を巡らせていた。


 ただひとり、愉快気に笑うブランカ王女と

 状況をとらえ切れてない薔薇姫を残して。

  

表現するって難しいですね。

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