1)勝手に召喚
この世界にはたくさんのスキルがある。
特に魔法系、戦闘系のスキルは人気で、皆に英雄視されている。
中でも変わったスキルで富を得たというのがキープファイヤーだ。
火魔法を一定時間キープできるというユニークスキルでパンを焼くとムラのないおいしいパンが焼けることで、たちまち人気のパン屋にのし上がったという話だ。
ここはオプシディアン王国のベルクソエル領。
高い山々にに囲まれた城下町は多くの冒険者や商人で常にごったがえしている。
山の中腹にあるお城近くに、スキル申請局がある。
ここでそれぞれのスキルを申請し、テストに合格すればスキル証明書が発行され、そのレベルによって、今後の職業や賃金が確定されるから、みな必死な表情で集まっている。
俺の名前は小早川知輝、27歳。
召喚の門に呼ばれた日本人だ。
元警視庁捜査一課勤務の刑事だった。
あの日、まったく自供しない容疑者にイライラMAXになっていた。ドラマなら机でも叩くところだが、そんなことしたらコンプラ違反だ。
こいつの記憶を見る魔法でも使えたらなぁと不謹慎な想像を巡らせた瞬間大きな光に包まれて、気がついたら召喚の門にいた。
どうやらイライラMAXの波長がここの召喚門のゲージと合致してしまったらしい。
しかし、俺のスキルはいったいなんだ?
この国の民や召喚されたものたちはスキルスケールという平たい円形の呪具に手のひらをのせて、大まかな特性を調べる。
戦闘、防御、ヒーリングなど、大まかな特性を知ってから、どのような固有スキルがあるのか各々が見つけ出して磨いていく。
呪具に手のひらを乗せると適性のあるところが光るのだが、色も金色に光れば、かなりのスキル力だ。
が、俺は呪具に手を乗せても、全体が赤色ライトのように光り、どの適正かがわからない。
こいつは全体的に危険信号か?と担当者がめんどくさそうにつぶやくのが聞こえた。
「忙しいのに悪いな」俺はさっさと外へ飛び出した。
この国でもっとも優遇される黄金スキルなら、ただの石に魔力をこめると黄金に変えることができる。
よ〜しと、石に魔力をこめてもなにも起こらない。
ケガをした子供に手をかざしてもなにも起こらない。
そんなある日、酒場で飲んでいると、なんかヤバい感じの冒険者が酔っ払ってぶつかってきた。
「おい大丈夫か?飲み過ぎだぞ」
冒険者の肩に触れた瞬間電気が走ったように彼の記憶?のような感情がなだれ込んできた。
「うぉぉぉぉお」
どこぞの令嬢を影から見ながら「殺してやる」となんどもなんどもつぶやいている。
我に帰るとやつはいなかった。
「ん?これが俺のスキルなのか?人の記憶の断片が見える?」
試してみようと酒場で酔いつぶれている冒険者に
「飲み過ぎだぞ。大丈夫か?」
と何人か肩を触れてみたがなにも見えない。
さっきのはなんだったろう…




