第13章:起きえぬ刹那
隠れ家の中には、再び死のような静寂が戻り、それは空気中に漂う微細な塵埃すらも重苦しく感じさせるほどだった。
ひっくり返ったままのテーブルや椅子はまだ元通りに直されておらず、どこかから紛れ込んだ、錆びついた一本の万年筆が床の上を二、三回転して、最終的に部屋の隅の壁際に当たって止まった。空気の中には、先ほどの慌ただしい戦いの後の乱れた気配が色濃く残っている――それは古びた木々が砕けたことによる苦い匂いであり、金属の生臭さと淡い薬草の清香が混ざり合った熱気であり、そして、あの短杖がテーブルの上に落ちた時に立てた「パタン」というあの軽い音の残響だった。
梁の上の古いランプは相変わらず昏く揺れており、その火炎はまるで疲弊したダンサーのように、ふらふらと今にも消え入りそうだった。その微弱な光は室内の輪郭をおぼろげに浮かび上がらせ、二人の影を斑模様の壁の上で極めて長く、歪んだ形に引き伸ばしていた。
飛は元の場所に立ち尽くしたまま、その身体を硬直させ、その視線をまるで不可視の磁力で固定されたかのように、机の上に置かれた短杖へと久しく釘付けにしていた。
それはあまりにも普通に見えた。半透明の材質は、まるで凍りついた氷の中に閉じ込められた琥珀のようだった。内部のあの淡いブルーの液体は、今は完全に緩慢で、均一な流動を取り戻しており、その一定のテンポがかえって見る者に絶望的な感覚を抱かせた。それはこの廃墟のどこにでも転がっている、ただの古びた装飾品と何ら変わりないように見え、華麗な紋様もなければ、神秘的なルーンの刻印すら存在しなかった。
可笑しい(バグっている)のは、このオブジェクトの側ではない。 先ほど、この狭くボロボロの部屋の中で、自分をあの冷たい光とエアコンの風が満ちた「現実」へと強制リロードし、そして次の生死の瞬間、まるで悪質なジョークのように自分をこちらのレイヤーへと送り返したあの凶悪な拉致の感触。
その戦慄が、まだ彼の指先に、全身の毛穴にリアルに残っていた。魂を強引に切断され、野蛮にパッチワークされたかのようなあの空虚な感覚が、彼の胸を激しく締め付け、まるで真っ赤に焼けた鉄のブロックが心臓の上に押し付けられているかのようだった。これは単なる空間の転移などではない。存在そのもののパラメータを、根底から書き換えるプロセスなのだ。まるで、連続した一本のタイムラインから何の前触れもなく強引に引き抜かれ、次の瞬間には無数の亀裂が入った別の次元へと放り込まれたかのような。
「もう一度、試す」
彼はついに口を開いた。声は乾燥した砂紙が擦れ合うかのように掠れており、普段の、すべてをコントロールしようとする彼のチーフエンジニアとしてのトーンとはおよそかけ離れていた。その語調は極めて低く、まるでこの部屋に潜む目に見えない幽霊を刺激するのを恐れているかのようだったが、そこには拒絶を許さない、偏執的なまでの確固たる意志が宿っていた。
舞の手はまだテーブルの端に置かれたままだった。指先から短杖まではわずか数寸の距離しかなかったが、先ほどの激しい後悔の残効のせいで、彼女は無意識のうちに拳をきつく握り締め、関節の皮膚が血の気を失って惨白に浮き上がっていた。さっきの、あの何かを力任せに「掴み取った」かのような錯覚が、まだ掌にリアルに残っている。この短杖は単なる冷たい死物などではなく、独自の脈拍を持った生きたオブジェクトであり、彼女の鼓動を、そしてあの瞬間の飛の絶望を、すべてモニターしていたのではないかという悪寒。
彼女は飛が何を望んでいるのか、痛いほど理解していた。その執念は、先ほどの掃除屋たちの突き出してきた短刀の刃よりもはるかに、彼女の胸を冷たく締め付けた。
彼女はしばらく沈黙し、頭を持ち上げることはせず、ただわずかに顔を巡らせて、窓の外の果てのない、静まり返った夜空を見つめた。彼女は知っていた。自分がここで何を言おうと、この男が「我が家」と呼ぶあの彼方へ帰ろうとする衝動を止めることなど、誰にもできないということを。彼女は廃土の戦士だ。一人の人間がどうしても戻らなければならない絶対的な理由を抱いた時、周囲のいかなる制止の声も、ただの虚しいノイズにしかならないことを、彼女は誰よりもよく知っていた。
彼女は最終的に顔を戻し、彼を見つめた。
昏いランプの光の下で、飛の顔色は病的なまでの惨白に染まり、眼窩の奥には無数の暗紅色の血筋が縦横に走っていた。彼のスーツはとうにボロボロで、肩の部位には先ほどの共闘でついた灰が付着し、衣服の裂け目からは、刃にかすめられた乾いた血の痕がかすかに覗いていた。
舞は彼を見つめ、胸の奥から名状しがたい、苦い潮汐が湧き上がってくるのを感じていた。彼女はいくつかの光景を脳内でリプレイせずにはいられなかった――。 鉄錆街のあの路頭で、彼が自分の前に立ち塞がり、まるで不具合のチェックでもするかのような冷徹な眼差しで警察官を凝視したあの背中。論理の迷宮の中から、自分たちのために唯一のアクセスルートを一本ずつ紡ぎ出してくれたあの姿。そして、貨物ヤードのあの激戦の中、自分を庇うためにあの数トンの鉄の塊の前に身を挺し、震える手で自分の身体を必死にチェックしていた、あの年上の男。
そのパラメータの積み重ねが、何の前触れもなく激しい雨のように彼女の胸の奥に降り注ぎ、彼女をひどく狼狽させた。
彼女は不意に思考を停止させた。 それ以上、その先を解析することは拒否した。
だが今、彼はここにいる。 彼には彼自身の世界があり、彼が「我が家」と呼ぶあの温かい港があり、彼の言葉の中で星辰のように輝いていたあのユエンユエンという幼い子供がいて、彼が深く愛し、決して切り離すことのできない伴侶がいる。
そのすべてが、この鏡界の辺境で生まれ、生涯を死と廃墟とのデバッグに費やしてきた一人の忍者にとって、到底手を伸ばすことのできない、圧倒的な「正常」という仕様の景色だった。
彼女は彼の護衛であり、この世界のガイドだ。だが、彼女は永遠に、彼をこの世界に引き留めるための変数にはなり得ない。
「あなた、それでも帰りたいの?」彼女の声は高くなかった。詰問でもなければ、引き留めでもない。ただ、静かに、その文字だけを虚空に置いた。その響きの奥には、誰にも気づかれないほどの、かすかな寂しさが滲んでいた。「たとえあっちの世界に、もうあなたの居場所がなくなっていたとしても? あなたが戻った時、すべてのパラメータがすっかり変わってしまっていたとしても?」
飛はただ、静かに頷いた。彼の視線は最初から最後まで、その短杖のオブジェクトから一寸たりとも外れていなかった。余計な言い訳もなければ、慰めの言葉すら口にしない。
「確かめなきゃ、ならないんだ」彼はただシンプルに言った。だがそれは、静止した空気に向かって絶対的なコマンドを打ち込むかのようだった。「このまま……世界から消去された無意味なゴミデータみたいに、ここに閉じ込められているわけにはいかないんだ」
彼は、あっちの世界のタイムラインにおいて、自分の残された家族が「彼のいない日常」に少しずつ適応していくという最悪の結末を、絶対に受け入れるわけにはいかなかった。
舞は彼を見つめ、その瞳の光が一瞬だけ静止した。それは彼女の長い生涯の中で、初めてその眼差しの中に、これほど明確な揺らぎ(脆さ)を見せた瞬間だった。彼女は唇を動かした。何かを言おうとして――「危険すぎるわ」とか、「もし戻れなかったら、あなたにとってこの世界は何なの?」とか、あるいは「私があなたを引き留めたら、あなたは私を拒絶する?」というクエスチョンが、喉元まで競り上がってきた。
だが最終的に、それらの言葉はすべて彼女の喉の奥へと冷酷に押し戻され、苦い沈黙へと書き換えられた。
彼女は深く息を吸い込み、握り締めていた指先をゆっくりと緩めると、短杖のグリップを、彼の方へと向かって極めて静かに、数ミリメートルだけ押し出した。
その動作の幅は極めて小さく、視認するのすら困難なほどだった。 だがそれは、彼女が今の段階において提示できる、最も清らかな、唯一の答えだった。
飛は手を伸ばし、短杖をしっかりと握り締めた。
指先が金属の材質に触れた瞬間、あの馴染み深い、独特の潤いのある温かみが全神経を駆け抜けた。さっきの感触と何一つ変わらない。自分の魂をそのまま吸い込もうとするかのようなあの冷徹なアクセス感に、彼は無意識にグリップをさらにきつく握り締めた。彼は一瞬だけ動作を止め、目を閉じ、まるで絶対的な審判が降るのを待つかのように佇んだ。
隠れ家の中は、死んだような静寂に包まれていた。 遠くの風のハミングすらも完全に遮断され、ただ梁の上のランプの灯芯が弾ける、極めてかすかなパチパチという音だけが響いていた。
――何も、起きなかった。
空間が引き裂かれるあの錯位の感覚もなければ、意識が離散していくあのフェードアウトもない。
彼はわずかに眉をひそめ、呼吸のテンポを完全に停止させた。彼は手のポジションをわずかに変え、指先でその金属製のグリップの表面を一寸ずつ細かく摩挲し、先ほど自分を「引き抜いた」あのトリガー(接続点)を必死にサーチしようとした。
ない。どこにも、何のエラーも発生していない。
彼は焦燥を覚え、指の骨が鳴るほどの力加減でさらに短杖を握り締めた。金属の外殻が彼の掌に明確な赤い陥没の痕を刻みつける。彼は自分の手の中にあるこの鉄の棒を見つめた。心臓の爆音が、鼓膜の奥で無限に拡大されていく。さっきのあのサーバールームの中で、彼は確かに妻の声を聞いたのだ。現実のレイヤーの端を、この手で確かに掴み取ったはずなのだ。
それなのに、今、この手の中にあるオブジェクトは完全に沈黙し、ただ冷たい死物として、彼の足掻きを冷笑しているかのようだった。
「もう一度だ」
彼は低い声で呟いた。その声はすでに自分自身のものとは思えないほどに荒れていた。
今度は、探るような真似は一切しなかった。彼は深く息を吸い込み、全身の筋肉を限界まで緊密に引き締め、すべての意志の力を、短杖を握るその右手の一点へと暴力的に集中させた。彼はシステムを強制起動したかった。力任せにあの次元の割れ目のバリアへと衝突を試みたのだ。
彼は猛然と、グリップを締め上げた。
まさにその瞬間、室内の空気が、極めて微かに動いた。 それは風が窓の隙間を吹き抜けた痕跡ではない。空間そのものが、一瞬だけ不自然に震えたのだ。
まるで、不可視の弦が何者かの指先によって弾かれたかのように。
極めて、細かな震え。
飛の瞳孔が、その千分の一秒において針の尖のように収縮した。
彼は感知した。あの魂が戦慄するような空間の共振を。まるで、壁の向こう側にあるあの現実の世界が、薄い膜一枚を隔てて、自分に向かって手を伸ばしてきたかのようなリアルな感覚。彼は無意識に肉体を硬直させ、すべての防備を固めた。あの深淵へと墜ちていく失重のパラメータが、再び頭をもたげる。
――しかし。
それは、本当に一瞬のバグに過ぎなかった。
その空間の波動は、臨界点に達して出力を最大化する一歩手前で、まるで起動した直後に燃料供給を絶たれたエンジンのように、すべてのログを一瞬で霧散させ、完全に消滅してしまった。
空気は再び、重く、淀んだ静止へと戻っていった。
何も、起きなかった。
飛は元の場所に立ち尽くしたまま、先ほどの猛烈な肉体の緊張の代償として、全身の関節に激しい酸痛を覚えていた。数秒が経過して初めて、彼はゆっくりと、その右手のクランプを解除した。短杖は何の反応も見せず、ただ冷たい死物として、彼の掌の中に静かに横たわっていた。それはまるで、彼の必死の足掻きを嘲笑うかのような不条理なオブジェクトだった。
舞はずっと、傍らに腰を下ろしたままそれを見つめていた。彼女は飛の瞳の光が、一歩ずつ完全に暗転していくプロセスを、その絶望のすべてを静かに視界に収めていた。彼女は手を伸ばして彼に触れることもしなければ、安易な慰めの言葉をジェネレートすることもしなかった。なぜなら彼女は知っていた、この瞬間において、いかなる言語もあまりにも虚しく、そして不誠実なノイズでしかないことを。
「さっき……」舞は声を低く落とし、この押しつぶされそうな沈黙を静かに切り裂いた。「ほんの少しだけ、反応があったわね」
飛は彼女を見ることはせず、ただ自分の掌の中の短杖を見つめ続けていた。そこには、波動が消滅した後の冷たい残効だけが残っていた。「あぁ」彼は短く応じた。声の中に、隠しきれない重い疲弊が滲んでいた。「だが、足りない。あと一歩のところで、アライメントが外れてる」
あと一歩。 彼の指先が、どうしても掴みきれない、そのわずかな一歩。
隠れ家の中は、再び絶対的な死寂に包み込まれた。風がいつの間にか窓の破れ目から再び侵入し、テーブルの端に置かれていた、先ほどの激戦で微かにシワの寄った一枚の紙切れをパチパチと頼りなく揺らしていた。
飛はその紙を直そうとはしなかった。ますます深く沈み込んでいく夜色を気に留める余裕もなかった。彼はエグゼクティブチェアではない、あの古びた椅子の背もたれに身体を預けた。全エネルギーが、先ほどの二度の強制アクセスの試みによって、完全に底を突いたかのようだった。
この鉄錆の廃墟の世界にログインしてから、彼はあの肉体が消滅しかけるほどの激戦を経験し、あの精神を摩滅させるほどの高圧の恐怖を潜り抜けてきた。彼の脆弱な肉体のパラメータは、すでに限界を完全に越えていたのだ。
彼は静かに目を閉じた。呼吸のテンポがゆっくりと、均一なスローモーションへと落ち着いていく。 どれほど引き裂かれた魂であっても、生存のためには、等しく休息のフェーズが必要なのだ。
どれほどの時間が経過したか分からない。彼はそのまま、泥のような深い昏睡へと滑り落ちていった。
舞はもう一側の死角に座ったまま、ずっとその姿勢を変えなかった。
彼女は彼を見つめていた。
睡眠のレイヤーにあってもなお、固く、実務的にひそめられたままの彼の眉を見つめ、灰と細かな擦り傷に汚れた彼の横顔を見つめた。ランプの昏い光が投射するその影は、あまりにも鮮明であり、この男がこの世界に残した、最も苦いバグのログのように見えた。
彼女はもう長い間、これほど静かに一人の人間を視界に収め続けたことはなかった。
敵意もなく、打算もなく、生存のために日常的に着用しなければならないあの冷酷なマスクを取り払ったままで。
彼女は思い出す、飛が戦場に突如としてリロードされたあの万分の一秒の瞬間を。あの血走っていながらも、自分を絶対に離さないと誓ったあの真っ直ぐな瞳を。彼の手が自分の身体を受け止めた時の、あの不器用で、しかし大山のようにはっきりとブレなかった確固たる力加減を。
あの力加減は、この世界の仕様ではない。 あの温度は、あの「正常」と呼ばれる遙かな彼方の彼岸だけのものだ。
彼女は不意に胸が詰まるような感覚を覚えた。まるで目に見えない細い糸が、彼女の心臓の最も柔らかい部分をきつく締め上げているかのような。窒息させるわけでもなく、かといって解脱させるわけでもない、その不条理なテンション。 (もし……もしあいつが本当にあっちへ帰ってしまったら、私は一体どうすればいいのかしら) そのクエスチョンが、細い糸のように彼女の胸の奥を静かに、締め付けていた。
もし彼が完全にログアウトしてしまえば、ここでの一連の出来事など、彼にとってはただの奇妙で、危険に満ちた記憶の断片に過ぎないのだろう。
――だが、残された彼女にとっては?
彼女は頭を下げ、視線は最終的に、飛の手から滑り落ちてテーブルの上に転がっているあの短杖へと落ちた。 淡いブルーの液体は灯火の下で相変わらず緩慢に流動しており、それはあまりにも美しく、しかし同時に、あまりにも遙か遠いレイヤーにあるように見えた。
彼女は手を伸ばし、その外殻をそっと撫でようとしたが、指先が触れる寸前で、その動きをピタリと止めた。最終的に、彼女の唇からは、ただ細いため息だけが漏れ出た。
「あなた……本当に、帰れるのかしらね」
彼女は静止した空気に向かって、そして睡眠の中でなお不安そうに身体を強張らせているその男に向かって、極めて低い声で、そっと問いかけた。
誰も答えない。
ただ揺れる灯火だけが、壁の上に孤独で冗長な影を投影し、それがこの世界が提示できる唯一の、物言わぬログであるかのように見えた。
舞はそれ以上、その先を思考することはしなかった。彼女はゆっくりと身体を丸めて椅子の上に縮こまると、飛が机の角に置き忘れていったあの短杖を、そっと自分の緋色の衣の胸元へと引き寄せ、そのまま動かなくなった。
灯火が揺れる。 飛の呼吸は、完全に安定した周期へと収束していった。
彼女は彼を見つめていた。
長い間。 しばらく外せなかった。
夜は、一歩ずつ、静かにその深淵を深めていった。




