結局のところただの好奇心じゃん?と言われてしまえばそれまでなのだが。
「国民が子供をもうけない理由が、現在の生活で満足しているから…だとしたら現在の生活に満足していない人々なら子供をたくさん産むのでは…?と国は考え、それらを補助する政策を打ち出したようです。」
「それもなんか違う気がするけどな…」
「なんでしょうか、逆を行けば良いって感じでもないですよね…」
俺もリマもその理論は間違ってると思う…。
「しかし、結果的にはそれが功をなすんです。」
「ふむ……?」
どうしてだと思います…?とものすごくリマは聞きたそうだったが俺は何度も頷いて質問に答える余力は残っていないことをアピールする。(リマがため息をついたように感じたのは気のせいだろうか??)
「ヒトは現在の生活に満足しているとは言い難い。しかし不満足かと言われるとそうでは無いんです。満足とか、不満足とか、そういうものではないので。」
「お前はどうなんだ…?」と聞いてみたい気もするが躊躇われてしまう。
リマはきっとデータに基づいて客観的に話してくれているんだろう…。その気遣いを無下にはしたくない。
「ヒトは不満足なのではなく、自分が生きた証を少しでも残したい、そう考えるようになった…というのが研究機関の発表したデータですがそこはよく分かりません。
子供を産むことに対して国はどちらかというと奨励してますので、それに基づいて行われる諸政策も関係しているんだと思います。」
「ご主人様が何を想像したかは分かりませんが、他人から強制されるものではなくあくまでも自主的に子供を産む人が、人間に比べてヒトの方が多いという傾向があるだけです…。」となんだか冷たい目で俺のことを見ながらリマが言う。
「しかし生まれてきた子供は ヒト ではありません。国を構成する国民の卵です。そのため、ヒトから産まれた子供はある程度の年齢まで施設で育てられるのです。
…俗に言う孤児院というやつですね。
子供達は一定の年齢になると社会に放り出され、何年かの猶予期間の後完全に一般民と同様の扱いとなります。」
「そこで上手く基準を満たすことができないと両親と同じ道を辿る…」
「そういうことです。」
なるほど、サーシャさんの言っていたことはそういうことだったのか…と少し理解することができた。
ヒトの出の者とそうでない者の違いは基本的に、いざとなった時に援助してくれる存在があるか否か…ということになりそうだ。
しかしまだ分からない点がある。
「両親の補助を受けることができないサーシャさんがこの世の中を生き抜くのは大変なんだろうということは分かった。
しかし彼女は体に障害を患っている。
この国の福祉制度ならそこらへんも吟味されるのではないのか?ヒトの出には制度があっても反映されないのか?」
そうだ。サーシャさんはきちんと働いており、(きちんと利益が出てるのか不安なところもあるが)収入を得ている。
国の1パーセントの国民しかヒトになる心配が無く、彼女が障害を患っており何かしらの援助を受けているというのなら彼女がヒトになってしまう可能性というのはそんなに高くないはずだ。
まさかそんな制度があってもヒトの出には反映されないのか…?と疑ってしまう。
「いえ、そんなことはないはず…です。私もご主人様の話を聞いて不思議に思ったんですよ。
ご主人様の話によれば全く客足が無いというわけでも無く、国からの補助が出てるとするなら彼女がそんな諦めた表情をするとは思いにくいんです。」
「私だって専門家ではないので…」とリマが黙りこんでしまう。
リマが分からないなら俺が分かるはずないじゃないか…としょげてしまう…。
「とはいえ、ご主人様の説明に対して背景事情も含めつつ結構丁寧に話したつもりです。
少しはお役に立てそうですか?」
「あぁ。ありがとうリマ」
「どういたしまして。」と言って満足そうにするリマ。
俺はやはりサーシャさんのあの、何かを諦めたような爽やかで儚げな笑顔が気になる。
彼女は一体何を背負っているのだろうか。
別に俺が知ることによって何があるのかと言われるとただただ俺の好奇心が満たされる、というだけだろう。
そんな理由であまりプライベートなことに突っ込むのはあまり良くないとは思う。
けれど俺はサーシャさんにあんな顔してほしくない。
彼女は自分のこと、「ワガママ」だと言っていたが俺だってそうだ。
明日、サーシャさんに直接聞いてみよう。
そう思って依然として降り続けている雨をぼんやりと眺め続けていた。




