↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
518/522

518 留 守 5

「ど、どうして……、あ!

 さっきの食いもん……」

「作ってから時間が経ってたのか? 避難したのは、今日じゃなかったとかで……」

「「「「「「…………」」」」」」


 これも罠である、などということには、考えも及ばない盗賊達。

 普通、盗賊に毒を盛るならば、致死毒である。嫌がらせにしかならないような、この程度の毒で済ませるわけがないので、それも無理はない。


 しかし、さすがに自分の店の料理を食べて死人が出た、などという話になると飯屋としてはダメージが大きすぎるため、腹痛程度の毒に抑えたのであろう。

 それでもあまり外聞のいい話ではないが、それくらいであればまあ、避難により長時間放置されていた料理であること、そして領主邸からの指示で弱い毒を意図的に仕込んだことをあとで公表すれば、大した影響は出ないはずである。

 ……少なくとも、死人を出すのに較べれば……。


「ええい、ちょっと腹が痛いくらい、何だ! これくらい……」

「と、頭目、ちょっとはばかりに行かせてくだせえ……」

「……お、俺も……」

「「「俺達も……」」」


『はばかり』と言っても、別にどこかの建物にあるトイレに行くわけではない。そのあたりでする(・・)ことを、少し遠回しな言い方をしているだけである。

 あとで、邸の周りの清掃を担当している者が絶望の表情でくずおれそうである。


     *     *


 本調子には程遠く、身体に力を入れられるような状態ではない盗賊達。

 ……りきむと、出る……。

 しかし、自分達のことが既にバレているというのに、こんなことで襲撃を取りやめて引き揚げるわけにはいかなかった。


「……いいか、領主邸を襲うぞ。

 なるべく殺さない、意味もなく怪我をさせない。抵抗する者は遠慮なく攻撃していいが、戦闘力をなくした者にはトドメは刺すな。

 無抵抗で降参してくれれば楽だから、俺が許可するまでは手出しするなよ。いいな?」

「「「「「「へいっ!!」」」」」」


 皆、少しやつれたような顔で元気がないが、それでも頭目の言葉に大きな声で応えた。

 もう自分達の存在は隠していない……というか、とっくにバレているので、大声を出しても問題ない。


「よし、もう少し門に近付いて、降伏の勧告を……」


 ばしゅっ!

「ぎゃあああ〜〜!!」


「……クソッ! こんなところにまで罠があるのかよっ!!」

 足首をロープにからめ取られ、空中高く吊り上げられた手下を見て、忌々しそうに吐き捨てる頭目。


「お前達、動くな。まだ罠があるかもしれんからな。

 何、向こうは3人の兵士と、ただの使用人達だ。この人数を見れば、素直に降伏するさ。

 そうすりゃ罠の場所も聞き出せるし、向こうが協力的で隠し金庫の場所を喋ったり、金目のものを集めてくれたりすれば楽ちんだしな……」


「さすが、頭目だ!」

「作戦は、全部頭目にお任せしやすぜ!」

 ……本当は皆が自分の頭で色々と考えるべきであろうが、頭目以外は皆、あまり頭が良くないし、知識もない。なので比較的まともな判断ができる頭目に頼り切るのも仕方なかった。

 そもそも、この盗賊団は頭目の人望によって成り立っているのである。


「敷地内に入ると、どんな罠があるか分かったもんじゃねえ。

 ……だから、ここから降伏勧告を行う。

 よし、じゃあやるぞ……。

 お~い、お前達! 素直に降伏すれば危害は加えないから、おとなしく出てこい!

 俺達が欲しいのはカネと宝石、小さくて運びやすい金目のモンだけだ。無意味にその他のものを壊したり、人間を傷付けたりする気はねえ!

 これでも、ここの領主様には一応の敬意は持ってるんだ!」


 頭目が大声で叫ぶが、邸の中からは何の反応もない。

 まだ貴族の邸が寝静まるような時間ではないし、そもそも、邸内には明かりが灯っている。これで全員が寝ているなどということはあり得ないし、たとえ寝ていたとしても、今の大声で全員が飛び起きたはずである。

 ……しかし、そうなれば当然起こるであろう大騒ぎの気配もなく、邸内は静まり返ったまま……。


「……くそ、舐めやがって……。

 まあ、いくら粘ろうが、別に増援が来るわけじゃねえ。不用意に攻め込んで罠にかかるような馬鹿な真似は……、え?」


 正面玄関のドアが開き、中から出てきた3人の兵士。

「……何だ? 戦える者全員が出てきただと?

 降伏するのか?」


 そして、3人の兵士に続き、もうふたりの兵士が出てきた。

「え? 兵士のふたりは領主に同行して王都へ行っているんじゃあ……」


 そのふたりに続いて、更に出てくる兵士達。

 ひとり、ふたり、3人、4人、5人……。

「え……? えええええ?」


「とっ、頭目、後ろ、後ろ……」

 後方の部下が慌てて叫び、その声に頭目が後方へと振り返ると……。

「……なっ!」


 ぞろぞろと歩き寄る、何十、いや、百を遥かに超える兵士達。

 そう立派なものではないが、一応はそれなりの武器と防具を身に着けている、きちんと訓練を受けたらしき動きの兵士達である。


 盗賊団の構成員は、村や町にいられなくなったチンピラやゴロツキ達である。

 正規の戦闘訓練を受けたわけでもなく、ただ粗暴で簡単に暴力を振るうから人々に避けられていたのを、皆が自分を恐れている、つまり自分は強いと勘違いしていただけの、ただの無能者。


 兵士や傭兵になれるだけの強さもなく、商人や職人になれるだけの器用さもなく、農民や作業員になれるだけの根気も粘り強さもない、ただの犯罪者達。

 そんな連中が、自分達の何倍もの人数の兵士に勝てるわけがない。

 しかも、兵士達はまともな防具を着け、手入れされた剣や槍を手にしている。


 そして、外に潜んでいた者達だけでなく、邸から出てくる者達も途切れることなく続き、どんどん人数が増えている。

 そしてさすがに正規兵の人数が尽きたのか、途中からデカい肉切り包丁を持った料理人らしき男とか、すきくわを持った農民らしき者、そしてモップを担いだメイドとかがそれに続いている。


 しかし、それも大きな問題ではない。

 盗賊達の利点は、人数が多いことと、躊躇することなく平気で刃物を振り回せるということだけである。

 そして今、領民側は盗賊の何倍もの人数であり、充分な武器を手にしており、……そして自分達を、家族を、領民を、領主様が大事にしているものを傷付け、奪う者達に容赦することなどあり得ない。


「……あ……、あ……」

「そっ、そんな馬鹿な……」

「どうしてこんなに兵が……」

「話が、話が違う……」


 絶対の信頼を得ていた頭目の見通しが、外れた。

 それも、完膚無きまでに、そして致命的に……。



拙作『ポーション頼みで生き延びます!』の小説イラストを担当し、スピンオフコミック『ポーション頼みで生き延びます! ハナノとロッテのふたり旅』を描いていただきましたすきま先生のオリジナルコミック、『さいはての塔、いやはての少女たち』第1巻が、8月17日に刊行されます。(^^)/


Amazonの注文ページに、サンプルとして数ページが掲載されています。

すきま先生御自慢の、SSR、スーパーアシスタント氏による背景ががが!!

是非、御覧ください!(^^)/


そして、来週と再来週の2回、夏期休暇としてお休みをいただきます。

休暇期間中は、たっぷりと書籍化作業に勤しむ予定です。

よろしくお願いいたします!(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
後ろから取り囲んだ兵士たちの足元が・・
今更ながら思ったけど、金貨8万枚の世界では魔法ってほぼないみたいですね。 あと先天的なスキルみたいなものも無さそう。 そう考えると我らがコレットちゃんの怪力スキルはどこから来たんだろうか・・・
やったね!みつは アノ「島」の住民がまた増えるよ!!((笑))。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。