397 パーティーの開催 5
そういうわけで、ヤマノ子爵領では、次々と新しい食材の研究開発を行っているのだ。
勿論、食材や調味料とかの素材だけでなく、調理法もね。
地球の、各国の料理の再現も目指している。
ここで、海に面した領地を選んだことが効いてくるんだよねぇ……。
お酒も考えているけれど、ビールは色々と設備が要るからなぁ。
そのうち、手が空いたら地ビール用の小型タンクとかを作っている会社に見学に行くかな。
ラム酒は、サトウキビの方がうまく行けば、だ。勿論、肝心の砂糖の方も……。
今回は、お菓子に使った砂糖や料理に使った香辛料は、地球からの持ち込みだ。
さすがに、まだそこまでは手が回らないよ。
そのうち、日本酒とかもいけるか?
何回か、腐らせて全滅させちゃうかもしれないけれど、初期の失敗は経験を得るための肥やし、先行投資だ。何度かやれば、そのうち成功するだろう。
失敗しても、日本の蔵元見学に行って質問し、色々と対策を教えてもらえるしね。
最後の手段として、引退した杜氏や蔵人さんを雇う、という手もある。
酒造米は、兵庫県宍粟市の山田錦の種籾を入手して……。
食用米は、ボーゼス領で作ってもらえるよう、お願いした。
豊作でも不作でも、全てうちが買い取る、という条件で。
最低保証として、近隣の村々における一定区画あたりの小麦の取れ高と同価格以上は必ず支払う、ということで、快く引き受けてもらえたよ。
まあ、私のネームバリューのおかげもあるだろうけど、決して損な取引じゃないからね。
勿論、事前にボーゼス侯爵様の了承は得ている。
小麦ではなく米を作ったところからの税収をどうするか、とかいう問題もあるけれど、そもそも、他領の領主が耕作作物を勝手に変更させるとか、下手をすれば、……いや、下手をしなくても、大問題だもんね。
……まぁ、勿論、侯爵様は私には甘いんだけどね!
どうして自領で作らないかというと、……うちの領地には、水田に適した場所がないんだよ!
うちは小さな領地だからね。
海と大地の間にある、ダイコン植えるの世界……、って、うるさいわっ!
そういうわけで、お米作りは外注なのだ。
侯爵様には、気が向いたら自領の分としてお米を作ってもいいですよ、と言ってある。
勿論、領外への販売もOK。国中にお米が広まって、王都で和食が広まると嬉しいからね。
おにぎり屋とか、丼物の店とかができるといいなぁ。
寿司屋は、……ちょっと無理か。輸送中に魚が傷んで、食中毒が出そうだよねぇ……。
とにかく、今回の料理にはヤマノ領で作っているシイタケ、タケノコ、蕎麦、芋、トウモロコシ、トマト等を使った料理や、水あめ、ポップコーンとか……庶民用として王都でも販売を開始しているけど、貴族の間にも流行らせたい……、そして御飯も多用しているんだよね。
特に、蕎麦、芋、トウモロコシとかは、凶作用作物として、各領地でそれぞれ一定量の栽培をしてもらいたいと思っているんだ。
凶作にならなくても、家畜の餌としてだけではなく、子供のおやつやその他色々と使えるとなれば、ある程度は作ってもらえるかもしれないから、ここで宣伝するわけだ。美味しい調理法込みで。
今回、調理にはここ、王宮の厨房を使わせてもらった。
いや、勿論地球から持ってきたものや、事前に領地邸で作っておいたものもあるけれど、ちゃんとここで作ったものもあるのだ。
そして王宮の料理人とメイドさん達に、手伝わせてあげるって言ったら、全力で食い付いてきたよ。
私が、『ヤマノ料理の作り方の見学と、その調理途中での味見ができるよ。盗み取るチャンスだよねぇ……』って言った途端、みんな、眼の色が変わったからね。
料理人は勿論だけど、ヤマノ料理が作れる王宮メイドとなれば、玉の輿も夢ではない、とかで。
王様からの許可は、簡単に下りたよ。厨房の食材や調味料も使っていい、って。
うん、王宮で、いつでもヤマノ料理モドキが食べられるようになるんだ。そりゃ、王様御一家としても大歓迎だろう。
私も、料理人やメイドさん、そして食材や調味料をただで使えて安上がり。
Win-Winの関係だね!
あ、勿論、メインの食材はヤマノ領産のものだけどね。
そこは、作戦上、外せない。
さて、招待客はほぼ揃ったか。
ボーゼス家の皆さんもいるし、王様やサビーネちゃんのお姉さん達と、弟のルーヘン君……第二王子様……もいる。
第一王子? そういえば、いたっけ、そんな人も……。
あ、アレクシス様もいるなぁ。ボーゼス家の皆さんとは別行動なのかな?
まぁ、既に独立して子爵家を構えているんだから、親と一緒にいるというのは面子が立たないか。
それに、親の前だと、女性とイチャイチャできないもんね。
いや、モテるんだよ、アレクシス様……。
王都絶対防衛戦における英雄のひとり。
新たな貴族家の開祖。
若き子爵家当主様。見た目も、割といい。
そして侯爵家の長男。
……本人は、実家は弟のテオドール様に継がせるつもりらしいけど、一般的には長男が継ぐのが普通だから、大半の人達には跡取りだと思われているらしい。
アレクシス様は授与式で『弟に継がせる』って言っていたけど、その場限りの格好つけだと思われたり、あの場にいなかった人はそんな発言のことは知らなかったりするからね。
他の貴族家の後継者問題に関する不用意な発言をするような者が、ああいう場にいるはずがないから、その件は広まっていないらしいのだ。
……そして更に、雷の姫巫女の、命の恩人。
大聖女、ベアトリスちゃんのお兄さん。
もう、数え役満、裏ドラ付きだよっ!
ルーヘン君はまだ幼いから、お兄さんの王太子殿下を狙う上級貴族のお嬢様達には敵わないと思った中級貴族や下級貴族のお嬢様達が、アレクシス様を狙うんだよねぇ……。
そりゃあもう、えげつない程モテるんだよ……。
いや、そんなことはどうでもいい!
そろそろ、主催者としての挨拶と、正式なパーティーの開催宣言をしなくちゃね。
* *
「皆様、ようこそお越しくださいました。
本日は、日頃お世話になっておりますお礼にと、我がヤマノ子爵領にて研究開発しております新たな料理、調味料、そして遊具やテーブルゲーム等を、他の方々に先駆けて一足早くご体験いただきたいと思い、色々と御用意させていただきました!」
どよめく招待客の皆さん。
招待客には、貴族だけではなく、大店の商会主とかもいる。
その人達が、他の者達より早くヤマノ子爵領の新商品を知ることができるわけだ。
そして私が『新商品』と言うからには、いくらヤマノ子爵領が田舎とはいえ、そのあたりで普通に売っているものであるはずがない。
うん、私が今までに王都にもたらしたヤマノ子爵領の特産品といえば、ポップコーンを作るのに必要な、特殊な爆裂種のトウモロコシとか、シイタケとかだ。あと、リバーシや将棋とか……。
だから、期待されるのは分かる。
でも、ごめん。今回は、全く新しいものはナシだ。
今回の売りは、料理法と、それに必要なヤマノ領産の調味料。味噌とか醤油とかね。
そして、日本から持ち込んだ種で育てた、品種改良済みの野菜。
うん、この世界の野菜とは比べ物にならない、チート野菜達だ。
同じ名前の野菜でも、全く違う。
神田のまつやのも蕎麦だけど、駅の立ち食いそばや学食のそばも蕎麦、っていうのと同じで、ただ名前が同じだけ、ってくらいにモノが違う。
そんなの持ち込んじゃ駄目?
いや、まぁ、地球で何の問題も起きていないし、この世界にも原種はあるだろうし……。
問題、ないない!
誰がそう決めたか?
……私だ!!
拙作、『私、能力は平均値でって言ったよね!』のスピンオフコミックである『私、日常は平均値でって言ったよね!』を描いてくださいました森貴夕貴先生のオリジナルコミック、『女神と魔王(♀)から迫られて生まれて初めて女の子とフラグが立ったので、意地でも異世界転生を回避したい件!??』の執筆が再開されました!(^^)/
体調不良でしばらく休載されておりましたが、コミック アース・スター、ニコニコ静画等での更新も再開!
コミックス1巻は、アース・スターコミックスから発売中です。
可愛い絵柄とキレのあるギャグ!
よろしくお願いいたします!(^^)/




