12話 遠隔操縦大決戦1/2
「負けないよじゃねーよ、こら」
スリィードの声が響く。
「戦わねーからな。何言ってんだよクナイシィ、戦うつもりなのかよ。同胞だぞ」
「え、いや、あのですね……」
しまったと思いつつ、小刻みに首を振り答える。
スリィードとクナイシィのやり取りを聞いて、吹き出すガイサ。
「変わらないなクナイシィ。俺が新兵がジャウル大佐の模擬訓練でしごかれてた大変らしいと言ったら、俺も参加したいとか言ってたっけ」
「いや、あのですね」
「だけどダメだからな。クナイシィは一目散に投射機に向かってくれ。足止めは俺たちがやる」
「わかったよ。でも足止めってどうするつもりだよ、相手は大佐だぞ」
クナイシィは少しふてくされ気味に答えた。
「まぁ、たいしたことは出来ないが、考えがある。時間稼ぎしてやるさ」
「こんな開けた場所でどうするんだ。こっちへ5機が向かってるんだぞ、2対5だ」
スリィードが聞く。
「そりゃ戦闘は避けられんわな」
「戦うのかよ! おまえ、さっき戦わない、同胞と戦闘なんてごめんだと言ってただろ」
「あれ、そうだっけ」
そうとぼけて答えるガイサに、クナイシィは調子のいいことを言って自分の意に添わせる、ガイサの変わらなさに思わずにやけた。
「殺すような戦闘はしないってことさ。動けなくすればいいだけだから、手や足を撃てばいい。でかい推進器にも当てやすいだろ」
「そんな漫画みたいにいくかよ」
「タルートの操縦席を覆う装甲は頑丈だし、よほど集中的に攻撃しなければ行動不能にするだけで済む。どうしても嫌なら攻撃せず逃げるなりなんなりで、足止めに協力してくれるだけでもいい」
「まあ、それくらいならいいが」
「じゃ、タルートの短剣を出してくれ。作戦がある」
「2機同期して動かしている。先行動作入力した後、単機に切り替えて実行し、即座に別機体に切り替えて動かせば、破壊される前に相手の後ろとかを取れるはずだ。わかってるよな」
クナイシィが確認で聞く。
「ああ、使いこなせる自信は無いがわかってるよ。全く、よくそんなことを即座に思い付くもんだ。変わらないなクナイシィ」
ガイサが、小さく首を振りながら答えた。
クナイシィの操作する3機のタルートは、いくつもの細く高い外灯に照らされた、広い舗装路を走り跳び急ぐ。その路面の広さはタルート6機が並んでもまだ余裕があるほどの広さだった。
進む道路の右端には低い柵が連なり、谷へ落ちることを防いでいた。広く深い谷が口を開けている。谷を迂回して投射機の基部へ行くのだ。
谷の幅は広く、クナイシィたちの使う宇宙用に改造しただけのタルートはもちろん、大型推進機を装備した大佐たちのタルートでさえも渡ることは出来ないだろう、クナイシィは一目見てそう推測出来た。
通信が入る。発信者はジャウルと表示された。元大佐だ。
「そこの遠隔操縦タルート、誰が何の目的で動かしている? 答えよ。ただちに全機体を停止せよ」
「わかってると思うが、通信するなよ。タルートに記録されると後で面倒なことになるぞ」
ガイサがの言葉は当然クナイシィも理解していた。記録され捜査されたりしたら困る。
「答えよ。返答が無ければ武力をもって破壊する」
威圧感のある太く低い声。
「止まってる俺たちも攻撃されるのかね」
「まあ、来たらこっちから攻撃するんだけどな。あんたは威嚇なり、逃げ回るなりしてくれればいい」
スリィードにガイサが答えた。
「ったく、しょうがねえな。俺もそれなりにやってやるよ」
スリィードは文句を言いつつも最終的には協力してくれる。それはいつものことではあるが、クナイシィの口元が緩んだ。
ガイサ達がなにやら作業をしている間もクナイシィは先を急ぐ。まっすぐな道だ、谷の端はまだ遠い。
「こんなんでなんとかなるのか」
「ああ、あんたのおかげで予定以上に出来た。助かったよ、ありがとう」
ガイサがスリィードに礼を言っている時に警報が鳴るのが聞こえた。間が開いたことを知らせる警報だ。
「さて、大佐相手にどこまで出来るか、やってみるか。瞬殺されるとクナイシィが逃げ切れないからな、頼むぞ」
「わかってるよ。しかしこれ、切り替えてるうちに破壊されるだろ。やれる気がしないぞ」
「俺だってしねえよ。まあ1機やられているうちに、切り替えてもう一つの機体から攻撃ってことだな」
ガイサ達の見える後方画像を気にしながら、クナイシィは急ぐ。
「4へ」
ガイサの切り替えを要求する声。カランディが切り替えてくれる。
既に戦闘に入っているのだろうが、クナイシィにはよくわからず気になった。後方を映す画像は、あまり拡大出来ずわかりにくい。
「大丈夫か?」
返事は無い。
「ああ、ごめん。二人の映像を送るよ」
カランディの言葉と共に、クナイシィの左横の画面に、二人の撮影している映像と情報が上下に示された。揺れる映像。戦闘中だ、当然音は無い。
遮蔽物の無い、広い舗装路上で繰り広げられる戦闘。突っ込んでくる大佐たちのタルートの直前の路面が爆発して、舗装路の破片とその下の砂が舞い上がる。
前述の会話から、タルートの短剣で穴を開け、投射機爆破に使う爆弾を埋めたものを起爆させたのだと、クナイシィは瞬時に理解した。
爆弾を使って相手をひるませつつ、何とか後ろを取って手足か噴射機を破壊しなければならない。遮蔽物の無い開けた場所で、それを成立させるのはどうにも苦しい。しかも実質2対5だ。その映像を見てもどかしく思いつつも、自身が操縦する3機を走り跳ばせた。
クナイシィの操縦席に警報。噴進弾1発の接近が画面に示される。離れていて間は開いていないにも関わらず撃ってきたのだ。果たして噴進弾は球状防御波に激突して四散した。
無駄なのを知ったうえでの攻撃。それが「おまえのこともわかっているぞ」という大佐からの伝意だと、クナイシィは理解し固唾をのむ。
「くそっ」
スリィードの怒声と共にクナイシィの走らせているタルートの、スリィード達が戦っている後方を映している画面に大きな光が瞬いた。
遠くにありながらのその閃光の大きさに驚く。機体を撃ち抜かれ爆弾が誘爆したのだろう、爆風が無くとも四散する部品が減速せず飛び散るのだから、防御波弾があるとはいえ軽視は出来ない。破片を受けた外灯が、谷側へ大きく曲がったのを画面内に見つけつつ、クナイシィは、もし戦闘になったらどうすべきか頭に血を巡らせた。
小さく笑い、戦うことを考えてもしょうがないかと思い直すクナイシィ。ふと、谷側を見て仰天する。
「な」
首を振りながら慌て気味に続ける。
「博士、谷の採掘場も制圧出来ているんですか?」
「谷の採掘場? いや、さすがにそこまではしておらんよ。宇宙居住地建造に必要な施設じゃしな」
「見えますか?」
タルートの両目から撮影されるものはかなり拡大出来る。その画像を博士たちに確認してもらった。
「これは、なんと!」
驚きの声を上げる博士。
投射機が設置してある側の谷の岩壁には、谷底から採り出された鉱石等を上へ運ぶ、大型の運搬用昇降機が6台連なっている。低い柵で囲まれた巨大な板だ。
そのいくつかは既に停止しているが、上昇しているものもある。そのすべてが停止した際に形作られる形状は……
「階段にするつもりなんだ、大佐は」
声を上げるクナイシィ。
「ん、なんだ? 今聞いてられる状況じゃない」
戦闘中のガイサが答える。
「谷を渡るのは大型の推進機でも不可能だと思っていたんじゃが、こんなやり方を考え付くとはな」
感心する博士の声。
「うぉぉぉおお!」
スリィードの叫び声。さらに続く。
「今だっ!」
「くそがぁあああ!」
ガイサも叫ぶ。
クナイシィの操縦席に映る二人の画面が真っ黒になった。破壊され映らなくなったのだ。機器は正常だが信号入力が無いことを示す文字が中央に表示され続けている。
「あーもう。俺にやれるだけのことはやった、許せ」
荒い息のスリィードの声。
「クナイシィすまん、2機しか行動不能に出来なかった。埋めた爆弾で1機の足を吹き飛ばして倒したが、すぐに対応されて、もう1機倒すだけが精一杯で二人ともやられた。大佐は本当に強い。だが時間稼ぎにはなっただろう」
ガイサの言葉にどう答えようか、迷うクナイシィ。まだ大佐たちが現れるまでには時間がある。ガイサ達に素直に話した。
「まじかよ! なんだそりゃ……」
ガイサの驚きの声。
「無駄だったのか……」
スリィードの声に即座に反応するクナイシィ。
「無駄じゃないよ。2機減らしてくれたおかげで、3対3で戦える」
「いや、実質1対3だろ」
ガイサの指摘。
「大丈夫だよ、言っただろ」
そう言った後、クナイシィは笑みを堪え切れず吹き出しながらもう一度言い放つ。大事なことなので。
「負けないよ☆」
今月中に完結する予定です
じょぶじょぶだいじょぶ
※予定です




