第24話 禁呪はどこから
ローダン様に休日を合わせてもらい、今日は二人でカフェの個室でお茶会をしています。
ここはチーズケーキが美味しいと有名なお店です。
丸テーブルの上に、水色のお皿に乗せられたチーズケーキが鎮座しています。
とてもシンプルなシルエットです。これは素材で勝負しているケーキですね。
「マリーは、あれから何ともない?」
ローダン様が心配そうに尋ねてきました。
「はい。すっかり元気です」
私は笑顔で答えました。しっかり休ませていただいたので、とても調子はいいです。
「アスターからは何も突っかかったりされてないかい?」
「それも大丈夫ですわ。言葉でビンタをしておきましたから」
私の答えに、ローダン様は少し驚いた顔をしましたが、楽しそうに笑いました。
婚約者にただ黙って付き従うマリーローズはもう必要ないのですから。
「ところで、禁呪のほうはどうなっているのですか?」
私が少し声を潜めて尋ねると、ローダン様はため息をつきながら首を横に振りました。
「進展はなし。スラウは天が本を与えてくださった、としか言わない。部屋を捜索したものの、肝心の禁呪について書かれた本は見つからなかったそうだ」
「天から、本が?」
どういうことでしょう? そんな御伽噺のようなことがあり得るのでしょうか。
疑っているのは、ローダン様も同じのようです。いえ、捜査している誰もが思ったことかと。
「彼の実家に賊が入った形跡はないし、家族も使用人も、彼は部屋に入れなかったらしい。元々魔法の研究に熱心だったから、何か気になることを研究しているだけだと思っていたみたい。まさか禁呪の研究をしているなんて思ってもいなかったそうだよ」
つまり、禁呪に関してはスラウ様の独断専行だった、ということですか。
だとしても、それは許されるものではありません。
「家の取り潰しは何とか免れたけど、サーペンティン伯爵は騎士団で降格処分、家も伯爵家から男爵家へ家格を下げられた」
「随分とお優しい判断ですわね」
てっきりお家取り潰しになってもおかしくないと思っていました。
だって、家の者が禁忌とされている禁呪に手を出したんですもの。よく他の貴族が納得しましたね。
ローダン様はティーカップを手に取りました。
「サーペンティン伯爵自身はとても優秀な御仁だ。国王陛下としても手放すのは惜しいんだと思うよ。まあ、その後はどうなるかわからないけどね」
素っ気なく言って、口元へティーカップを運びます。
確かに、サーペンティン伯爵自身は素晴らしいお方です。ですが、サーペンティン家の跡取りはスラウ様一人。
養子を貰う以外にサーペンティン家が生き残る方法はありません。
没落した家に養子へ入る者がいるかどうか。
まあ、それは私の与り知らぬところですわね。
私もティーカップを口に運びました。ベルガモットの香りが鼻を抜けます。
「春休みになったら、カトレア妃からお茶会の招待状が行くだろうから、ぜひ参加してね。もう殿下もカトレア妃もキミに会いたくて大変なんだよ」
ローダン様はどこか疲れた様子です。
「残りの後期の間は勉強があるからお茶会を思い止まるよう、メイドのみんなと説得しておいたから」
アリーシャさんたちにまで手を煩わせていたとは、申し訳ありませんわ。
「お心遣い感謝いたします」
「キミのためならこのくらいどうってことないよ」
ローダン様はちょっと楽しそうでした。柔らかな笑みを向けてくれます。
この方の隣にいることが出来るようになって本当に良かったです。
「学生の間は、たくさんの思い出を作るんだよ。三年間しかないんだから。その間でしか出来ないことがたくさんある」
「はい」
ローダン様の優しい声に、自然と笑みが浮かびました。
来年度からは生徒会入りです。今よりも頑張らねばなりませんね。
でも、今の私には味方がたくさんいます。皆さんの力を借りれば、きっと大丈夫です。
お読みいただきありがとうございます。
面白かった方はぜひ、リアクションや★で評価をお願いします。
頂けると励みになります!




