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すれ違いセラミックス1

焼きものの町、愛知県・常滑を舞台に。 高校時代、すれ違ったまま終わった想い。 十年後の再会から始まる、不器用なふたりの、ゆっくり育つ愛の物語。

「辛いだけだよ。恋なんて。叶わないなら。伝えたって、伝えなくたって…」

「大人になるってすげーな」

「あー……キスしてぇ」

「……俺たちの関係は、焼き物みたいだ。」

「すきだ。…もうすれちがいたくない!」






「辛いだけだよ。恋なんて。叶わないなら。伝えたって、伝えなくたって…」



伝えたら終わる。


そんなこと、わかっていた。


祐人は俺を好きにならない。


告白した瞬間に、今までの関係は壊れる。


それはきっと、辛く苦しいだろう。



それでも、気持ちが心の中で爆発しそうだった。


隠して、押さえ込んでいるのも、辛く苦しくて。



叶わない。だから言わない。


そう決めていた。


それなのに。


もしかしたら。


万が一。


奇跡みたいなことが起きるんじゃないかと、


そんな希望を捨てきれなかった。


伝えないことも、苦しかった。



好きで。


好きで。


どうしようもなく、好きで。





だから、伝えてしまった。







。。。。



(祐人)



高校2年の秋、俺は、親友の隼人に告白された。



隼人とは中学で出会った。


中一で同じクラスになり、気が合って、中学は1学年4クラスあったけど、奇跡的に俺たちは3年間同じクラスで、

高校は1クラスしかない専門学科を選んだから、丸4年と、今年の秋までの付き合い。


中学も今も、部活は同じバスケ部で、俺たちはほとんどずっと一緒にいる。




体育館が他の部活のイベントで使えず、部活が休みにり、

同じクラス同じ部活の真太と三人で、学校の帰り道、海に散歩しにいこうと、歩いてる途中で、真太は彼女からの連絡で先に別れ、

俺たちは二人で海に来た。


特になにをするでもなく、いつも通り適当に話をしてた。




「つか、真太いーよなー、彼女。正直女の趣味は悪いけどな。麻里とは付き合いたくなくね?」


「はは、たしかにな」


「俺も彼女ほしーわ。音々と付き合いてーけど、あいつ彼氏いるしなー…奪うほどの気力はねぇし。」


「よく知らんけど、音々の彼氏って大分年上らしいな」


「らしいな。…まぁ、奪うほどの気力ないとか言ってるくらいだから、俺もそこまで好きってわけじゃないんだろうな。」


「かもな、はは」


「彼女ほしー、手繋いでデートとかしてー、とか思うけどさ、たぶん男同士仲間でわいわいしてる方が気が楽だよな。」



「ああ、だな…」




隼人はどっちかっていうと、こうやって相槌程度の話し方だけど、それにしてもいつも以上に静かな気がして、

少しへんな感じがした。


海なのか空なのかわからないけど、前を向いたままの隼人に、声をかけた。




「隼人?」




顔を覗き込むと、隼人はピクッと少し体を動かして、

不自然に瞬きの回数が増えた。




「どした?」





何かを考えているように、

隼人は数秒俺の目を見たあと、

目線を少し下げて目を逸らした。


何故か波の音が大きく聞こえた気がした。




「ごめん…」



「??いや、まじでどうした?」



しばらく、海の音しか聞こえない沈黙が続いたあと



隼人が細く長めの息を吐いて、目を逸らしたまま、口を開いた





「…俺、祐人が好きなんだ」





……………………は???




急に何言ってるんだ?


好き?



って…




「…恋愛、的に?」



少し俯いたまま、小さく頷く隼人をみて、


頭の中がパニックになった。



???


は?



いや、なんか言わなきゃだよな


いや…


え?






「ちょっ…待って、マジで…マジで?ガチで?」




少し目を逸らしながら、小さく頷く親友を目の前に、俺は、いや、え?と繰り返してばかりで



見慣れた海のはずなのに、 自分が今どこに立っているのかさえ分からない気がした。


波の音もなにも聞こえないくらいのパニックで、体が熱くなる感覚がした。




「…ごめん」


「いや、いや…謝らなくてもいいけど…いや…マジで?いや、…いやごめんマジで…驚きすぎて、なんも言えないんだけど」


「…うん、ごめん」



「いや、ほんと、マジで、…ごめんほんとさ、なんて言えばいいのかわからんのだけど、ごめん、マジで申し訳ないけどさ、俺女の子が好きだし、隼人も知ってるだろ、普通に、さっきも話してたし」



「うん、…知ってる」



「えっ、ちょま…いつから?いつから?」



少し目を伏せて逸らしてる隼人とは、目が合わない。


目が合わないから、俺はずっと隼人を見てられてるのかもしれない。



「…たぶん、去年くらい、高校入って暫くしてから、そう思ったかな…たぶん」




「……マジで、ごめん…全く…夢にも思わんかった。


…俺、男と付き合うとか、ありえん…」



うつむいてる隼人の顔が少しくしゃっとしかめられたのをみて、慌てた



「いや!ごめん言い方よくないわ!ちがくてさ!俺マジでお前のこと友達としてめっちゃ好きだから、ずっと友達として付き合ってたいって思ってるからさ、だから…」



言葉に詰まってると、隼人が少し震え気味に息を長く吐いた

泣きそうなのかもしれない


急に告られてビビらされたのはこっちなのに

なんで俺がこんな焦って申し訳ないとか思わなきゃいけないんだよ



「…俺、隼人とこれからも一緒にいたいから、これからも今まで通りさ、一緒」


「無理だろ!」


自分の体がビクッとはねた。


相変わらず俯いてはいるけど、さっきまで弱々しい返事しかしてなかった隼人が、急に大きな声を出した。



何も言えずにまた暫くの沈黙の後、隼人がまた小さい声にもどって続けた。



「…無理だろ、今まで通りなんて。…俺がお前のこと、そういう意味で好きだって知ってて、今まで通りでいられんの?」



ごくっと唾を飲み込んだあと、


少し考えた。


今まで通り…


一緒にいるとき、俺は絶対、考えちゃうよな

こいつは俺の事が好きなんだよな、って

普通に恋バナとか出来ないよな

申し訳ないとか、そういう気持ちにもなると思う


俺より少し背の小さい隼人を、ぎゅっと押し込めるようにしてハグするのが好きだった


それは、もう…




「……無理、だな。」





俯いてた隼人が、鼻をズッといっかいすすりながら、目線を合わせないように横を見ながら顔をあげて、そのまま、顔を横に向けたまま、大きく息を吸って、吐いた。


目に涙がたまってる。



俺もつられてなんか泣きそうなんだけど



でも、それより、少し苛立ってる。




「…無理って、わかってたなら、なんで言ったんだよ。俺がお前と付き合うって言うと思ってたの?」


隼人は横を向いたまま、涙をこぼさないようにぎりぎりでこらえてるようで、唇が震えている。



震えてる絞り出すような声をだした



「いや…無理だってわかってた。言ったら…」



隼人の横顔。見えている片方の目から、涙がこぼれて、頬をつたっていく



「言ったら…元に戻れないことも、…わかってた」



胸の奥がカッとなった。

思わず声を荒らげた。



「だったら!」



両手をのばして、隼人の肩を掴んで、こっちを向かせた。

体は俺と向かい合ったが、目はまだ俺の横をみていた。



「だったらなんで言ったんだよ!そんなの、あとで辛くなるってわかってただろ!」



っ…


隼人と、目が合った。



少し赤くなった目から、両方の目から、涙が流れていて、





「辛かったんだよ。もう…」



その目は、俺を少し睨んでいるようだった。



「辛いだけだよ。恋なんて。叶わないなら。伝えたって、伝えなくたって…」





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