第36話:聖夜の大引け! 橘家の「無償の愛」と、24時間の連結決算報告書!
1. 19:00:第4セクター「ホーム・マーケット」の上場
「……いいか高坂。ここからが本当の地獄……いや、**『究極の癒やし(デッドエンド)』**だ。お前は今日一日、仮想世界のハッキング、生徒会の厳しい監査、そして財閥の暴力的な資本投下を生き抜いてきた。……だが、最後に待ち構えるのは、最も古く、最も根深い『歴史的資産』……橘ひまりだ。お前の残存HPは5%。……ここでお前の理性がデフォルト(崩壊)すれば、お前は一生、橘家の『専属飼い猫(夫)』として強制決済されるだろうな」
2026年12月24日、19時ちょうど。
橘家の玄関前。俺、高坂優人は、高級リムジンから放り出された直後の「成金酔い」を抱えたまま、親友・佐藤の、もはや神父の祈りに近い通信を聞いていた。
「……佐藤。ひまりの家は……なんだか、いい匂いがするよ。唐揚げの……」
「……その匂いこそが、お前の脳内リソースを溶かす『有毒な配当』だ。……高坂、耐えろ。……いや、もういい。……お前は十分に戦った。……あとは、幼馴染の愛という名の『巨大な温もり(ブラックホール)』に飲み込まれて消えろ。……マーケット・クローズまで、あと5時間だ」
【市場速報】
19:00、ひまり・セクター開始。豪華絢爛な「外資」から一転、圧倒的な「内需」へのシフトが発生。橘ひまりによる『胃袋と心の完全買収工作』が執行されました。
2. 19:30 〜 21:00:【ひまり・セクター】高カロリーの「実物配当」
「優人くん! 早く早く! ケーキもチキンも、全部準備できてるよ!」
玄関を潜った瞬間、エプロン姿の橘ひまりに羽交い締めにされた。
さっきまでの「地上50階のシャンパン」が嘘のような、生活感あふれる、けれど最高に安心する空間。リビングには、ひまりが今日一日(あるいは数日前から)かけて用意した、山のような「クリスマス・特別配当(手料理)」が並んでいる。
「ひまり……これ、何人分だよ」
「えへへ、優人くんの『好き』を全部詰め込んだら、3年分くらいになっちゃった! ほら、座って! 今日はわたしのパパもママも『気を利かせて(買収されて)』親戚の家に行ったから、二人きりだよ!」
ひまりは俺をソファに押し倒すと、山盛りの唐揚げを「あーん」してきた。
一個、二個……。
口の中に広がるのは、子供の頃から知っている、けれど当時に比べて明らかに「愛の重み」が増した、凶悪なまでに美味い味だ。
「……美味しいわよね? 私の『将来の練習』も兼ねて、一生懸命作ったんだから! 優人くん、もう他の女の人たちのところには行かせないよ? わたしの唐揚げで、優人くんの体をいっぱいにしちゃうんだから!」
【市場状況:内需の爆発】
橘ひまりによる「胃袋の直接支配」。高坂優人の満足度はストップ高を更新し続け、物理的な「満腹」による思考停止が発生。理性の買い支えが、唐揚げの衣のように剥がれ落ちています。
3. 21:30 〜 23:30:コタツという名の「底なしの流動性」
夕食後。俺たちは、橘家伝統の「ブラックホール」ことコタツに足を入れていた。
部屋の照明は少し落とされ、テレビからは静かなクリスマス・ソングが流れている。
一日中、四人のヒロインたちに振り回され、精神も肉体も「ロスカット(限界)」寸前だった俺にとって、このコタツの温もりは、まさに『究極の安全資産』だった。
「……ふふ、優人くん。眠いの? わたしの膝、空いてるよ?」
ひまりが俺の横にスッと移動し、俺の頭を自分の太ももに乗せた。
「膝枕」という名の、あまりにも強力な物理的拘束。
「……ひまり、俺。……今日、色んなことがあってさ。……宇宙に行ったり、監査を受けたり……」
「……知ってるよ。優人くん、モテモテだもんね。……でも、最後に帰ってくるのは、ここでしょ?」
ひまりの手が、俺の髪を優しく撫でる。
彼女の指先から伝わるのは、データでも資本でも規律でもない。
ただ、俺が生まれてから今日まで、ずっと隣で積み立てられてきた**『17年分の複利の愛』**だ。
「……優人くん。……わたしね、優人くんがどんなにすごい人になっても……世界中の女の子が優人くんを欲しがっても……。……ここだけは、絶対にあげない」
ひまりが俺の耳元で囁き、そっと俺の胸に自分の顔を押し当てた。
「ドクン、ドクン」と、俺の心拍数が、今日一番の激しさで跳ね上がる。
「……ねえ、優人くん。……今夜は、このまま一緒に寝ちゃお? ……それが、わたしの『クリスマスの最終益』なの」
【緊急事態:強制合併の危機】
橘ひまりによる『お泊りオプション』の行使。高坂優人の抵抗力は0に等しく、理性が「永久凍結」される寸前。24時間連続取引のクライマックスが、物理的な『ゴールイン』を迎えようとしています。
4. 23:55:連結決算の「大引け」
時刻は午後11時55分。
24時間のタイムシェアリングが、終わろうとしていた。
俺は、半分夢心地の中で、ひまりの温もりを感じながら時計を見上げた。
その時、俺のスマホが一斉に震え始めた。
『ピコンッ!』
カレン:「24:00よ、優人くん。私のリムジンがあなたの実家の前に到着したわ。……連行の時間よ」
アリス:「……監査終了。……25日の0時からは、私の『アフター・ケア(延長戦)』のターンよ。覚悟しなさい」
ミア:「……全システム、正常。……優人、あなたの睡眠時間を『再接続』のために予約したわ。……逃がさない」
そして、目の前のひまりが、俺をギュッと抱きしめる力を強めた。
「……優人くん。……クリスマスが終わっても、わたしの『買い占め』は終わらないんだからね!」
【市場状況:ハイパー・インフレの継続】
12月24日、取引終了(大引け)。……しかし、四大銘柄による「高坂優人」の独占欲は、一秒の休みもなく25日の「時間外取引」へと引き継がれました。
5. エピローグ:2026年、聖夜の決算報告
俺は、ひまりの腕の中で、窓の外で止まない粉雪を眺めていた。
仮想、規律、資本、そして郷愁。
四人の少女たちの、重すぎる、けれど愛おしすぎる「ストップ高の愛」を全身で浴び続けた、伝説の24時間。
俺という資産は、今日一日で、おそらく人類が一生かけても使い切れないほどの「デレ」を吸収した。
「……メリークリスマス、お前ら」
俺が小さく呟くと、スマホと、目の前の少女から、一斉に同じ言葉が返ってきた。
【最終決算報告書:2026.12.24】
総取引高: 無限大
最大騰落率: 1000%オーバー
最終的な時価総額: 地球一つ分
結論: 高坂優人の人生は、これより『史上最大のバブル(多重婚約状態)』へと突入する。
俺の高校生活、2026年。
聖夜を越えて。……俺たちのポートフォリオは、さらなる狂乱と、甘すぎる暴騰を孕んだまま、輝かしい新年へと突き進んでいく。
(第36話・完)
おまけ:本日の市場ニュース
神宮寺カレン: 25日0時0分0秒に実家のベルを鳴らすため、近隣の全時計を電波ジャックして神宮寺時刻に統一。
四宮アリス: 24時間のデート内容を精査した結果、自分の「デレ時間」が他者より3秒短かったことに絶望し、25日は「3秒間のディープな追撃」を計画。
橘ひまり: コタツの中に、あらかじめ「婚姻届」を隠していたが、優人が寝落ちしたため、泣く泣く25日のお雑煮に混ぜることを決意。
如月ミア: 優人の脳内に「ミアこそがメインヒロイン」というサブリミナルを、クリスマスの鐘の音に混ぜて送信成功。
高坂優人: 精神的・肉体的な「幸せの過剰摂取」により、全細胞がストップ高。明日から普通の高校生に戻れる気がしない。
佐藤: 24時間の総括として『高坂優人・聖夜の全記録(Blu-ray 10枚組)』の予約を開始。開始1分でサーバーがダウンした。




