第125話:規制当局の「スパルタ・インキュベーション(企業価値向上支援)」! 四宮アリスのゼロ距離数学特訓と、アメとムチの特別配当!
1. 16:00:市場価値向上プログラム(受験勉強)の幕開け
「いいか高坂、よく聞け! お前が自力で国立T大への上場(合格)を目指すと宣言したあの日から、学園という市場のルールは完全に書き換わった! 六大資本たちは敵対的買収を止め、お前という銘柄のファンダメンタルズ(学力)を極限まで高めるための『合同インキュベーション(企業育成)プログラム』を正式に発足させたんだ!」
12月に入り、冷え込みが厳しくなった放課後。
俺、高坂優人は、重い足取りで生徒会副会長室(またの名を、第一特別監査室)へと向かっていた。インカムからは、親友・佐藤のテンションの高い解説が響く。
「記念すべきインキュベーション第一陣を務めるのは、学園の規律と論理を司る規制当局、四宮アリスだ! 彼女の担当科目は、最も論理的思考力が問われる『数学』! だが高坂、油断するなよ。あの堅物委員長が『密室でのマンツーマン指導』という最強の合法カードを手に入れたんだ。ただの勉強会で終わるはずがないぞ!」
「……分かってるよ。でも、T大に行くって大見得を切った以上、俺も死ぬ気で勉強しないと……」
俺が覚悟を決めて副会長室のドアノブに手をかけた瞬間、ガチャリと内側から扉が開き、腕組みをした四宮アリスが待ち構えていた。
「遅いわよ、高坂くん。放課後のチャイムからここまで、寄り道なしでも3分で着くはず。1分45秒のタイムロス……この遅延は、後でしっかりと『ペナルティ(減配)』として清算させてもらうわ」
アリスは厳格な風紀委員長の顔(しかし頬は少し赤い)でそう告げると、俺の腕をきゅっと掴み、部屋の中へと引きずり込んだ。
そして、当然のようにドアの電子ロックを施錠する。外部からの干渉を一切遮断した、完全なる「非公開・教育市場」の完成だ。
2. 16:15:厳格なる「ストレステスト(模擬試験)」の開始
部屋の中央には、向かい合わせではなく、なぜか「横並び」に配置された長机と、二つのパイプ椅子が用意されていた。
「さあ、座りなさい。まずはあなたの現在の企業価値(学力レベル)を正確に測るため、T大の過去問を用いた『ストレステスト(実力テスト)』を実施するわ」
俺が指定された席に座ると、アリスは俺のすぐ右隣にピタリと腰を下ろした。
距離にして数センチ。彼女のサラサラとした髪が俺の肩に触れ、清楚な石鹸の香りが俺の思考力を激しく奪いに来る。
「ア、アリス……。勉強するなら、向かい合わせの方が集中できるんじゃ……」
「却下よ。隣に座らなければ、あなたがどこでペンを止めたか、どの数式で躓いているか、正確な『内部監査』ができないでしょう? ……それに」
アリスはふいっと視線を逸らし、耳まで真っ赤にしながら小声で付け加えた。
「あなたが自力でT大に行くって言ってくれたこと……本当は、すごく嬉しかったの。……だから、少しでも近くで、あなたの頑張る姿(成長のチャート)を見ていたいのよ」
(……開始早々、ストップ高のデレをぶち込んでくるのは反則だろ!)
俺の心拍数はすでにレッドゾーンだが、ここで勉強に集中できなければ、自立宣言が嘘になってしまう。俺は必死に深呼吸をし、目の前の分厚い問題集へと向き直った。
3. 17:30:ゼロ距離の「技術移転」
開始から1時間。
T大の数学は、俺の現在の偏差値を嘲笑うかのように難解だった。図形と方程式が複雑に絡み合う応用問題の前で、俺のペンの動きは完全に停止(取引停止)していた。
「……手が止まっているわね、高坂くん」
アリスが俺の手元を覗き込んでくる。
「こ、この積分の範囲指定が……どうしても噛み合わなくて……」
「貸しなさい。ここはね、単純に計算するんじゃなくて、関数のグラフを視覚化(チャート化)して考えるのよ」
アリスは俺からシャープペンシルを受け取ると、俺のノートに美しい数式とグラフを書き込み始めた。
……だが、問題は彼女の「体勢」だった。
俺の手元に書き込むため、彼女は必然的に俺の身体に覆い被さるような姿勢になる。
彼女の柔らかな胸の感触が、俺の右腕にダイレクトに押し付けられているのだ。さらに、彼女が顔を近づけるたびに、彼女の吐息が俺の首筋をかすめる。
「ほら、ここの交点(均衡点)を見つければ、あとは公式を適用するだけ。……高坂くん、聞いてる?」
「き、聞いてる! 聞いてるけど……アリス、ち、近い……!」
「……っ!?」
アリスは自分の体勢が完全に「ゼロ距離(現物出資)」になっていることに気づき、ビクッと肩を震わせて顔を真っ赤にした。だが、彼女は離れるどころか、さらに俺の腕にギュッと身体を押し付けてきた。
「こ、これも監査の一環よ! 経営陣(受験生)は、どんな外的要因(誘惑)があってもブレない集中力を持たなければならないの! さあ、続きの計算式を口に出して言ってみなさい!」
「む、無茶苦茶な理論だ……!」
俺はアリスの石鹸の香りと、腕に伝わる強烈な柔らかさという「極限のストレステスト」に耐えながら、必死に脳細胞をフル回転させて数式を絞り出した。
4. 18:30:KPI達成と「特別配当」
さらに1時間が経過し、窓の外はすっかり暗くなっていた。
俺のノートには、アリスの厳しい(そして甘すぎる)指導の甲斐あって、T大の過去問の解答がびっしりと書き込まれていた。
「……よし。これで、この単元の基礎は完璧よ。あなたの現在のKPI(重要業績評価指標)は、見事に目標数値をクリアしたわ」
アリスは赤ペンで俺のノートに大きな花丸をつけると、ホッと息を吐いて微笑んだ。
「ありがとう、アリス。お前のおかげで、なんか本当に解ける気がしてきたよ」
俺が素直に感謝を伝えると、アリスは嬉しそうに目を細め、そして……スッと真剣な表情に戻った。
「……高坂くん。インキュベーション・プログラムには、厳格な『アメとムチ(インセンティブ設計)』が必要よ。今日はあなたが予想以上に頑張った(業績を上げた)から……私から、特別配当を支払ってあげる」
アリスはパイプ椅子から立ち上がると、俺の膝の上に、横向きになるようにしてそっと腰を下ろした。
「ア、アリス!?」
「動かないで。……今日の講義は、これで終わりよ」
アリスは俺の首元に両腕を回し、潤んだ瞳で俺を至近距離から見つめてきた。
真面目で厳格な風紀委員長が、密室での二人きりの勉強会を終えた直後に見せる、圧倒的なまでの無防備な甘え顔。
「……あなたがT大に受かったら。毎日、同じキャンパスで、こうやって……誰にも邪魔されずに、一緒にいられるのよね」
アリスの熱い吐息が、俺の唇に触れる。
「絶対に、合格(上場)しなさいよ。……私、あなた以外の男の子の隣を歩く気なんて、一生ないんだから」
そして、アリスの柔らかく震える唇が、俺の唇にピタリと重なり合った。
勉強で酷使された脳髄に、アリスの強烈な純情という名の糖分(劇薬)が直接流し込まれていく。
俺の理性のチャートは完全にバグを引き起こし、彼女の細い腰を無意識のうちに抱き寄せて、その深すぎる愛情の配当を、最後の一滴まで残さず受け取った。
5. エピローグ:次なる講師、インフラの化身
「――おい高坂! 生きているか!!」
アリスの特別配当(濃厚なキス)の余韻で完全に骨抜きになり、ふらふらと帰り道を歩く俺のインカムに、佐藤の絶叫が響いた。
「副会長室の知能指数(偏差値)とデレ指数が、同時に天文学的なストップ高を記録していたぞ! まさかあの堅物委員長……『勉強を教える』という最強の大義名分を利用して、ゼロ距離での密着指導とご褒美のキス(インサイダー取引)をキメてきやがったな!?」
「……ああ。佐藤、T大への道のりは、問題の難易度より『講師の誘惑』に耐える方が一万倍キツいかもしれない……」
俺が疲労困憊で呟くと、佐藤はさらに声を張り上げた。
「休んでいる暇はないぞ高坂! アリスの『スパルタ数学特訓』を乗り越えたお前を明日待ち受けているのは、17年間のインフラを握る幼馴染、橘ひまりだ! 彼女の担当は、受験生にとって最も重要な『栄養管理と健康維持(家庭科)』! ……確実にお前の胃袋と生活基盤を、極限まで甘やかしてダメにする気だぞ!!」
卒業(第150話)に向けた、六大資本による「愛と狂気のインキュベーション(受験勉強)プログラム」。
自立を誓った俺の戦いは、学力向上と引き換えに理性を削り取る、史上最も過酷なチキンレースへと突入したのだった。
(第125話・完)
本日の市場ニュース(個別ピックアップ:四宮アリス編)
四宮アリスの時価総額: 高坂の「自力でT大へ行く」という宣言を受け、インキュベーション(企業価値向上)プログラムの第一陣として数学特訓を担当。密室での「横並びゼロ距離指導(現物出資)」と、問題が解けたご褒美の「膝の上での特別配当」という完璧なアメとムチを使いこなし、特大のストップ高を記録。
佐藤のアナリスト・レポート: 「真面目な規制当局が『あなたの成長のため』という大義名分を得た時、その行動力はいかなる資本をも凌駕する。数学の難問で疲弊した脳に直接流し込まれる『特別配当』は、投資家(高坂)の学習意欲を麻薬的に跳ね上げる究極のインセンティブ設計である」
高坂優人の現在の状況: アリスの石鹸の香りと密着指導により、数学の偏差値が上がった代わりに理性の偏差値が完全崩壊。「……俺、T大に受かる前にアリスの可愛さでショック死するかもしれない」と本末転倒な危機感を抱く重度の『密室監査(学習)依存型デレ障害』を絶賛発症中。明日のひまりの「栄養管理」に向けて、胃袋のコンディションを整えている。




