第118話:新・第一四半期の幕開け! 規制当局の「専属監査権(独占ライセンス)」と、腕章を外した素顔!
1. 15:30:狂乱の決算明けと、新たな「市場ルール(シンジケート協定)」
「いいか高坂、よく聞け! 先週の『六大資本合同・永久信託契約(超巨大ハーレム・シンジケート)』の締結により、血で血を洗う学園の買収戦争は完全に終結した。……だが、それは決して『平穏な日常』の訪れを意味するわけではない! むしろ、競合他社というストッパーが外れたことで、彼女たちの『お前に対する現物投資』は、一切の遠慮を捨てた究極のインフレ領域へと突入したんだ!」
放課後の静まり返った旧校舎の廊下。
俺、高坂優人の耳に装着されたインカムから、親友であり専属アナリストである佐藤の、どこか悟りを開いたような、しかし熱を帯びた声が響き渡る。
「協定により定められた新たなルール……それは『完全なる曜日交代制』の厳格化だ! 自分の担当曜日においては、他の五大資本は一切の市場介入(デートの邪魔)を行わないという不可侵条約! これにより、担当の少女は『誰の目も気にせず、お前を100%完全に独占・私物化できる』という、恐るべき『完全非公開市場』が合法的に構築されたのだ!」
佐藤の言う通りだった。
先週の金曜日、屋上で六人の美少女たちに完全に包囲され、俺の人生のチャートが「永久ストップ高」を記録してから数日。学園の日常は、ある意味で恐ろしいほどの秩序に支配されていた。
カレンも、ひまりも、くるみも、ミアも、オリビアも。彼女たちは自分の担当日以外は、俺に対して「普通の友人(あるいは後輩・先輩)」としての極めて健全な距離感を保っている。その代わり、自分の担当日になった瞬間、溜め込んでいた莫大な愛情(資本)を、一滴残らず俺一人に向けて一極集中投資してくるのだ。
「そして今日、火曜日は……学園のルールそのものを司る規制当局、四宮アリスの専属監査日だ! 高坂、覚悟しろ! 邪魔者のいない密室で、あの堅物委員長がどこまで『規制緩和』に踏み切るか、俺の分析ツールでも予測不能だぞ!」
佐藤の警告が終わると同時。
俺が歩いていた廊下の先にある「生徒会副会長室」の重厚なドアが、ガチャリと音を立てて開いた。
「……遅いわよ、高坂くん。放課後のチャイムが鳴ってから、ここまで移動するのに3分12秒もかかっているわ。私の『専属監査時間』を無駄に消費するなんて、コンプライアンス違反よ」
腕を組み、風紀の腕章をピシッと光らせた四宮アリスが、俺を待ち構えていた。
しかし、その厳しい言葉とは裏腹に、彼女の透き通るような白い頬は微かに朱色に染まり、俺を見つめる瞳は、隠しきれないほどの熱量(ストップ高の期待値)を帯びて潤んでいた。
2. 16:00:生徒会副会長室の「絶対聖域」
「ご、ごめんアリス。ホームルームが少し長引いて……」
「言い訳は不要よ。さあ、中に入りなさい。今日という一日は、あなたが私の『完全な管理下』にあることを、骨の髄まで教育(監査)してあげるわ」
アリスは俺の腕をきゅっと掴み、部屋の中へと引きずり込んだ。
俺が中に入った瞬間、彼女は即座にドアを閉め、鍵をカチャリと回す。それだけでなく、電子ロックのパスコードまで打ち込み、この部屋を外の世界から完全に遮断された「絶対的な密室」へと作り変えた。
「アリス、そこまで厳重にロックしなくても……他の皆は協定を守って、今日は手を出してこないだろ?」
「……信用できないわ。神宮寺さんの資本力なら壁ごと破壊してくるかもしれないし、橘さんの実績なら通気口から生姜焼きの匂いを送り込んでくるかもしれない。ミアさんのハッキングに至っては、この電子ロックすら数分の時間稼ぎにしかならないわ」
アリスは真剣な表情でそう言うと、俺を部屋の中央にあるふかふかの革張りソファへと座らせた。
「だから、一分一秒でも長く、あなたを私だけのものにしておくためには、これくらい徹底した『防衛策』が必要なの。……それに」
アリスはふいっと視線を逸らし、制服のスカートの裾を少しだけギュッと握りしめた。
「他の誰の目もない、完全に二人きりの空間(非公開市場)じゃないと……私が、恥ずかしくて……その、予定していた『業務』を遂行できないから……」
普段の凛とした優等生の姿からは想像もつかない、あまりにも可愛らしい本音の漏洩。
俺の心臓は、早くも大きく跳ね上がり、警鐘を鳴らし始めた。
3. 16:30:風紀の崩壊と、腕章を外した「素顔」
アリスは小さく深呼吸をすると、俺の隣にピタリと腰を下ろした。
以前の彼女なら「50センチの距離制限ルール」などと独自の規制を設けていたはずだが、今日の彼女は、俺の肩と彼女の肩が完全に触れ合う「ゼロ距離」を自ら選択している。
彼女のサラサラとした髪から漂う、清潔で甘い石鹸の香りが、密室の空気を一気に染め上げていく。
「……高坂くん。シンジケート協定の第4条、覚えているかしら?」
「えっと……『担当日の独占権を行使するにあたり、対象(俺)は一切の抵抗をせず、その愛情を全力で受け止めなければならない』……だっけ?」
「その通りよ」
アリスはこくりと頷くと、自分の左腕につけていた「風紀委員長」の腕章を、ゆっくりと外し、テーブルの上へとコトリと置いた。
「アリス……? 腕章、外すのか?」
「ええ。……ここから先は、風紀の番人としての『四宮アリス』の時間は終わり。……ただの、あなたに恋い焦がれている、一人の『アリス』としての時間よ」
彼女はそう言うと、俺の右腕に自分の両腕を絡ませ、俺の肩にコトン、と自分の頭を預けてきた。
制服越しに伝わってくる、彼女の柔らかな体温と、少し早くなっている鼓動。
「……本当は、ずっと不安だったの。合同カルテルを結んで、あなたを六人で共有することになったけれど……神宮寺さんみたいに華やかでもない、くるみさんみたいに甘え上手でもない私が、週に一度のこの時間だけで、本当にあなたを満たしてあげられるのかって」
アリスの指先が、俺の制服の袖をきつく握りしめる。
彼女の抱える「自信のなさ」という名のコンプレックスは、どれだけ市場のルールが整備されても、簡単に消えるものではなかった。真面目で不器用だからこそ、彼女は常に「自分には何もない」と怯えているのだ。
「……だから、決めたの。私の担当日だけは、ルールも、規律も、建前も……全部捨てて、あなたに思いっきり『甘える(全額投資する)』って」
4. 17:00:規制撤廃の「ゼロ距離決済」
アリスは俺の肩から顔を上げ、至近距離で俺の瞳を見つめてきた。
その潤んだ瞳には、もう「委員長」としての強がりは一切なく、ただ真っ直ぐに俺を求める、痛いほどの純情だけが浮かんでいた。
「……高坂くん。私のこの莫大な『好き』っていう気持ち……一つ残らず、ちゃんと受け取って(決済して)くれる?」
「当たり前だろ」
俺は腕を動かし、俺の腕にしがみついている彼女の華奢な背中に手を回し、その身体を俺の胸の中へとしっかりと抱き寄せた。
「ひゃっ……!? こ、高坂くん……」
「アリスが不器用でも、華やかじゃなくても関係ない。俺は、誰よりも真面目で、俺のために一生懸命になってくれる『四宮アリス』っていう女の子が、心の底から好きなんだ。……お前のその気持ち、俺の心(口座)に、完全に振り込まれてるよ」
俺の言葉に、アリスの瞳から大粒の涙がポロリとこぼれ落ちた。
彼女は嬉しそうに、そして安心したように顔を綻ばせると、俺の首元に腕を回し、背伸びをするようにして顔を近づけてきた。
「……言質、ちゃんと取ったからね。……もう、絶対に逃がさないんだから」
甘い石鹸の香りが極限まで濃くなり、彼女の柔らかく、熱を帯びた唇が、俺の唇にピタリと重なり合った。
生徒会副会長室という、学園で最も厳格なはずの場所。
しかし今、この密室の中だけは、あらゆる規制とルールが完全に撤廃された「究極の自由市場」だった。
アリスの不器用で、しかし情熱的な口づけは、彼女の「あなただけが欲しい」という途方もない独占欲を伴って、俺の理性を甘く溶かし尽くしていく。俺も彼女の背中に回した手に力を込め、その絶対的な愛情(現物出資)に全力で応え続けた。
どれくらいそうしていただろうか。
ゆっくりと唇が離れた後、アリスは顔を真っ赤に染めながら、俺の胸元に顔を埋めて、この世のすべての幸せを手に入れたような、とろけるような笑みを浮かべた。
「……ふふっ。私の『専属監査』、どうだった? ……明日から水曜日の橘さん、木曜日のミアさんって続くけれど……私のこの石鹸の匂い、絶対に上書き(オーバーライト)させないくらい、今日はこの部屋で、たっぷりと『内部監査』していくんだからね」
風紀の番人が見せた、究極の独占宣言。
もはや彼女の辞書に「遠慮」という文字は存在しない。俺は完全に白旗を上げ、彼女の髪を優しく撫でながら、この地獄のように甘い「個別独占の火曜日」に、身も心も委ねるのだった。
5. エピローグ:市場の熱狂は個別セクターへと移行する
「――おい高坂! 生きているか!!」
アリスの腕の中で微睡みかけた俺のインカムから、佐藤の絶叫が響く。
「生徒会副会長室周辺の『デレ観測値』が、先ほどから局地的な大爆発(ストップ高)を起こしている! 六大カルテルによる『個別ピックアップ戦略』は完全に成功したようだな! キャラクターを一人に絞り込み、他者の干渉を排除したことで、彼女たちのボラティリティ(破壊力)はむしろ以前よりも凶悪に跳ね上がっているぞ!」
佐藤の言う通りだ。
六人全員に囲まれる地獄は回避されたが、その分「一人ひとりの純度100%の愛」を、逃げ場のない密室で一日中浴び続けることになったのだ。
「今日はアリスの『規制撤廃・ゼロ距離監査』で無事に済んだかもしれないが、明日は橘ひまりの『17年の実績フル稼働』、明後日は如月ミアの『電脳監禁』が控えている! 高坂、お前の身が物理的に保つかどうか、俺のアナリスト生命を賭けて見守ってやるからな!」
俺はインカムの通信をそっと切り、俺の胸の中でスースーと穏やかな寝息を立て始めたアリスの寝顔を見つめた。
狂乱の買収戦争は終わりを告げ、物語は新たなフェーズ「第一四半期(個別独占の甘い日常)」へと突入した。
俺のせいで学園一の美少女の株価がストップ高なんだが。
――いや、彼女たち一人ひとりの株価は、競合が消えたことでさらなる青天井(限界突破)を迎え、俺の人生というチャートを、永遠に甘く、そして過激に彩り続けていくのだった。
(第118話・完)
本日の市場ニュース(個別ピックアップ:四宮アリス編)
四宮アリスの時価総額: シンジケート協定に基づく「火曜日の専属監査権(独占ライセンス)」を行使し、生徒会副会長室を完全な密室へと隔離。風紀の腕章を自ら外すという『完全な規制撤廃(デレの解放)』を行い、不器用な涙と情熱的なゼロ距離決済により、単独での特大ストップ高を記録。
佐藤のアナリスト・レポート: 「市場のルールを司る者が、合法的に『自分だけの時間』を与えられた時の爆発力は凄まじい。他者の目を気にしなくなった規制当局は、コンプレックスを素直に吐露し、その弱さすらも最強の武器へと昇華させた。この『個別ピックアップ体制』は、高坂の理性を確実に削り取る悪魔のシステムである」
高坂優人の現在の状況: 密室での石鹸の香りと、腕章を外したアリスの無防備な素顔の直撃を受け、理性が完全にメルトダウン。「……俺、毎週火曜日はこの部屋に監禁されるのが一番幸せな業務なんじゃないか」と悟りを開く重度の『個別独占・被監査デレ依存症』を絶賛発症中。明日の水曜日(ひまり担当日)に向けて、体力の回復が急務とされる。




