第112話:規制当局の「中央銀行(プライベート・ルーム)」! 四宮アリスの金融緩和と、規律崩壊のゼロ距離監査!
1. 10:00:市場を統制する「絶対聖域」への召喚
「いいか高坂、よく聞け。昨日の神宮寺カレンによる『メガ・クルーザー貸し切り(圧倒的資本の暴力)』は、お前という市場に強烈なインフレを引き起こした。だが、マーケットにおいて過度な熱狂が生まれた時、必ずそれを冷まし、正しく統制しようとする存在が動く。……そう、市場のルールそのものを司る『規制当局』のターンだ!」
振替休日の二日目、日曜日。
俺、高坂優人は、閑静な高級住宅街の一角にある、要塞のように堅牢で美しい門構えの邸宅の前に立っていた。インカムからは、今日も絶好調な親友・佐藤の解説が響く。
「タイムシェア(輪番制による個別独占)の第二陣を勝ち取ったのは、生徒会副会長にして風紀の番人、四宮アリスだ! 彼女はお前を外の派手なデートスポットには連れ出さない。なぜなら、規制当局にとって最も安全で、最もお前を完全に監視(独占)できる場所……すなわち、彼女の自宅(中央銀行の金庫室)へとお前を直接召喚したからだ!」
「中央銀行の金庫って……ただのお家デートだろ?」
俺が苦笑しながらインターホンを押すと、数秒も経たないうちに「ガチャリ」と重厚な門が開いた。
「……遅いわよ、高坂くん。指定時刻の10時00分から、わずか45秒の遅延(コンプライアンス違反)よ。今日は私との『個別専属監査日』なのだから、時間というリソースの管理は徹底しなさい」
門の向こうに立っていたのは、四宮アリスだった。
学園での厳格な制服姿とは打って変わり、本日の彼女は、清楚な白いブラウスに淡いブルーの膝丈スカートという、ひどく可憐で清潔感に溢れた私服姿だった。しかし、その髪は一本の乱れもなく完璧に整えられており、手にはなぜか「バインダー」と「メジャー」が握られている。
「ア、アリス……そのメジャーは一体……」
「当然でしょう? 今日のあなたは私の『完全な管理下』に置かれるの。室内の温度、湿度、そして……私とあなたとの『適切な物理的距離』を正確に計測するためよ。さあ、中へ入りなさい。徹底的な監査の始まりよ」
アリスは俺の腕をきゅっと掴み、その華奢な身体からは想像もつかないほどの強い力で、俺を彼女の「絶対聖域」へと引きずり込んだ。
2. 11:30:密室での「厳格なストレステスト(距離測定)」
通されたアリスの自室は、彼女の性格をそのまま体現したような、塵一つ落ちていない完璧に整理整頓された空間だった。本棚の背表紙はミリ単位で揃えられ、机の上には余計なものが一切ない。
「そこに座りなさい。……ストップ、そこから15センチ右。私との距離は、常に『50センチ』の安全保障条約を維持すること」
俺がふかふかのカーペットの上に座ると、アリスはメジャーを伸ばして俺との距離を厳密に測り、コクリと頷いてから向かいに正座した。
部屋の中はしんと静まり返っており、時計の秒針の音だけが規則正しく響いている。窓から差し込む秋の柔らかな日差しが、アリスの透き通るような白い肌と、端正な顔立ちを照らし出していた。
「あ、あのさ……アリス。今日はせっかくの休日の『個別独占日』なんだろ? もう少しリラックスして……」
「リラックス? 冗談でしょう。私の目的は、昨日神宮寺さんがあなたに付着させた『不浄な外資の匂い』と『緩みきった精神』を、私の規律で完全に引き締め直すことよ。……まずは、持ち物検査と、昨日の行動ログの提出を求めます」
アリスはバインダーを開き、ペンを構えながら俺を鋭く睨みつける。
しかし、その声はいつものように凛と張り詰めているものの、彼女の膝の上でペンを握る指先が、微かに、本当に微かに震えているのを俺は見逃さなかった。
「……昨日は、カレンと一緒に海に……」
「海! クルーザー! あんな密室の極みみたいな場所で……っ! そ、それで!? 他に何をされたの!? どこまで『不当な配当』を受け取ったの!?」
アリスは身を乗り出し、先ほど自ら設定した「50センチのルール」を完全に無視して、俺の顔のすぐ目の前まで詰め寄ってきた。
彼女から漂う、いつもより少し甘い石鹸の香りが、部屋の空気を一気に染め上げる。
「近っ……アリス、距離のルールが……」
「る、ルールは私が決めるの! 規制当局の特権よ! ……答えて、高坂くん。昨日は……楽しかった?」
彼女の瞳の奥で揺れるのは、風紀の番人としての怒りではない。
自分以外の女の子と特別な時間を過ごした俺に対する、隠しきれない焦燥感と、胸が張り裂けそうなほどの「嫉妬」だった。
3. 14:00:規制当局の「金融緩和(デレの漏洩)」
午後になり、アリスが淹れてくれた紅茶を飲みながら、俺たちは少しずつ雑談を交わしていた。
厳格な監査はいつの間にかうやむやになり、アリスの表情も少しずつ柔らかく解けている。
「……神宮寺さんは、お金で何でも解決しようとするから嫌いよ。メガ・クルーザーなんて、ただの見栄じゃない。……私には、あんな派手な資本力はないわ。あなたを喜ばせるような、気の利いた会話のアルゴリズムも持っていない」
アリスはティーカップを両手で包み込むように持ちながら、ぽつりと呟いた。
彼女の視線はカップの紅茶の波紋に落とされ、その横顔には、普段の完璧な優等生からは想像もつかないほどの「自信のなさ」が滲み出ていた。
「アリス……」
「……ねえ、高坂くん。私、本当はずっと怖かったの。風紀委員長としての『規律』や『ルール』を盾にしなければ、あなたを私のそばに引き留めておく理由が一つもないから」
彼女はゆっくりと顔を上げ、潤んだ瞳で俺を真っ直ぐに見つめた。
その瞳には、規律という名の分厚い鎧を脱ぎ捨てた、一人の等身大な少女の無防備な心が完全に露呈していた。
「あなたの周りには、お金持ちで綺麗な神宮寺さんや、昔からあなたを知っている橘さん、計算高くて可愛い七星さん、それにハッカーのミアさんや、スタイル抜群のサマーズさん……みんな、私にはない『圧倒的な武器』を持っている。……それに比べて、私にあるのは『生徒会の権力』という、可愛げのない名目だけ」
アリスの目から、ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。
彼女は慌てて手の甲で涙を拭うが、一度堰を切った感情の決壊(暴落)は、もう誰にも止めることができなかった。
「だから……私、ルールを押し付けることでしか、あなたに関われなかった。……本当は、口うるさい監査なんかじゃなくて、ただの『アリス』として、普通の女の子みたいに……あなたに甘えたかったのに……っ」
4. 16:30:完全なる「規制撤廃(ゼロ距離・マージ)」と独占宣言
アリスの不器用すぎる本音の開示に、俺の胸は激しく締め付けられた。
誰よりも真面目で、誰よりも責任感が強くて、そして……誰よりも俺のことを純粋に想ってくれていたからこそ、彼女は「規律」という不器用な手段でしか愛情を表現できなかったのだ。
「アリス……お前はバカだな」
俺はティーカップをテーブルに置き、彼女の隣へと移動した。
50センチのルールなど、とうの昔に崩壊している。俺は泣きじゃくるアリスの肩を優しく抱き寄せ、その華奢な身体を俺の腕の中へとすっぽりと収めた。
「ひっ……!? こ、高坂くん……距離が……」
「ルールは規制当局の特権だろ? なら、俺がその当局を丸ごと買収してやる。……アリス、お前には他の奴らみたいな派手な武器はないかもしれない。でも、誰よりも真っ直ぐで、誰よりも俺のために一生懸命になってくれる。お前のその『真面目さ(誠実な現物投資)』は、俺にとってどんな資本よりも価値があるんだ」
俺の言葉に、アリスは肩を震わせ、俺の胸に顔をうずめた。
「……本当? 私のこと、面倒くさい風紀委員だって……思ってない?」
「思うわけないだろ。……俺は、ただの『四宮アリス』っていう、ちょっと不器用で、でもすごく可愛い女の子のことが……」
俺がそう言いかけた瞬間、アリスはパッと顔を上げ、その潤んだ瞳を閉じて、俺の首元に両腕を回してきた。
そして、彼女の柔らかく震える唇が、俺の唇にそっと、しかし確かな熱を伴って重なり合った。
静まり返った彼女の自室。
完全に隔離された「中央銀行の金庫室」で、すべての規律が撤廃された、究極の『ゼロ距離取引』。
石鹸の清潔な香りと、彼女の全身から伝わってくる痛いほどの純情が、俺の理性を完全にショートさせ、ストップ高の彼方へと吹き飛ばしていく。アリスは俺の背中に回した手にギュッと力を込め、絶対に俺を逃がさないという「完全なる独占」の意思を示していた。
ゆっくりと唇が離れた後、アリスは顔を真っ赤にしながらも、これ以上ないほど幸せそうな、とろけるような笑みを浮かべた。
「……言ったでしょ、高坂くん。私のこの石鹸の匂いで、あなたのすべてを完全に『浄化(私物化)』してあげるって。……昨日付着した外資の匂いなんて、一ミリも残さないわ」
アリスは俺の胸元に頬をすり寄せ、甘く、そして独占欲に満ちた声で囁いた。
「もう……絶対に逃がさない。あなたは一生、私の『特別監視下(隣)』で生きる義務があるんだからね。……大好きよ、優人くん」
5. エピローグ:市場の熱狂は止まらない
「――おい高坂! 中央銀行の自室からの生体データが、先ほどから異常な急騰を見せているぞ! まさか、あのガチガチの風紀委員長が、自らすべての規制を撤廃して『ゼロ距離の究極緩和』に踏み切ったとでも言うのか!?」
帰路につく俺のインカムから、佐藤の興奮しきった絶叫が響く。
「タイムシェア第二陣、四宮アリス! 彼女は規律という鎧を脱ぎ捨てることで、カレンの資本力をも凌駕する『圧倒的な純情』を市場に叩きつけた! ……だが高坂、休む暇はないぞ! 明日はタイムシェア第三陣、いよいよ『17年間の絶対的インフラ』を誇る、幼馴染・橘ひまりのターンだ!」
夕焼け空を見上げながら、俺はアリスの部屋で嗅いだ石鹸の甘い香りを思い出し、どうしようもなく顔がにやけてしまうのを止められなかった。
資本の暴力の次は、規律の完全崩壊。
一人ずつ順番に、全霊の愛情を真正面から叩きつけられる「タイムシェア」の地獄(天国)。俺の理性の残高はすでにマイナスを振り切っているが、明日もまた、逃げ場のない極限の独占市場が俺を待ち受けているのだ。
秋の風が心地よく吹き抜ける中、俺の狂乱相場は休むことなく、さらなるハイパー・インフレの頂点へと突き進んでいくのだった。
(第112話・完)
本日の市場ニュース(個別ピックアップ:四宮アリス編)
四宮アリスの時価総額: 「完全な密室(自室)」への召喚により、カレンのクルーザーに匹敵する非公開市場を構築。厳格なルールの押し付けから一転、涙ながらに「普通の女の子として甘えたかった」という本音を吐露する『究極のデレ緩和』により、株価は計測不能のストップ高を記録。
佐藤のアナリスト・レポート: 「市場を縛る側(規制当局)が、恋という名のバグによって自らルールを破棄する瞬間の爆発力は凄まじい。50センチの距離制限を自ら破壊し、ゼロ距離での『完全浄化』を敢行したアリスの行動は、高坂の理性を容易くデフォルトさせる最強のインサイダー取引である」
高坂優人の現在の状況: アリスの涙と、真面目な委員長の「大好きよ」という破壊的コンボを直撃し、理性が完全に大破。「……俺、もう一生アリスの監査を受け続けて生きていくのが正解なんじゃないか」と呟く重度の『規律依存・被監査デレ障害』を絶賛発症中。




