第1章 その3
よろしくお願いします。。。
少年がそばにいるので寝つきは良くないようだ。
調子が良ければ枕に頭を乗せてから十秒ほどで寝入ってしまうのだが。
目をぱっちり開いているエティへ向けて、笑み交じりの声でキーペが言う。
「目を閉じて、リラックスなさってください。
ぼくのことは置物だとでもお考えいただいて。
神様は乙女や守護者がレム睡眠の時にそれを訪うんです。
ひょっとしたらまだ神様が会われないうちからぼくがエティ様を起こしてしまった可能性があるかと思いまして」
「ああ……それは大変ね……」
けど。神様ってそんな簡単に夢枕に立つもんなの?
エティは疑問に思ったが、それを質問する相手は、神官見習いの少年よりも、もっと別に相応しい人がいるだろうとも思った。
キーペは感心を通り越して内心で舌を巻いていた。
なんと本当に一分も経たずにエティの口元から寝息が聞こえてきたのだ。
次いで途切れがちな寝言。
「ん……ただ…ま……母さ……。
父…ん……も今……? おか……」
どうやら今は日常的なシーンみたいだ。
精霊神の訪いは、寝覚め際に多い。
彼女が眠りにつく前に睡眠時間が短くなる仮眠香を嗅いでもらっている。
キーペは今回は待ってさえいれば良いはずだった。
エティの寝言が収まってから四~五分。
キーペが香を片付けていると再び寝言が始まった。
いよいよかと少年が女性の様子を見に戻る。
が、その寝言はおよそ神と交わすような内容のものではなかった。
「ボイ……久しぶ………。新作……レット、美味し……」
キーペが試しにエティの頬に触れてみたが、精霊神の気配はついぞ感じられなかった。
「ボイ……?」
エティの目が覚める。
彼女のまぶたが震えて持ち上げられる。
現れた瞳は少し残念そうにかげっていた。
そのかげりを見て、キーペは少しだけ罪悪感を覚えた。
「これ、夢じゃなかったのね、キーペ……」
「はい。精霊神様は現れなかったようですね」
「ええ。昨日まで普通に会えていた人たちに、また普通に会えている夢を見たわ。
それがずっと続くと思ってた」
「再開できますよ。エティ様。
救世の儀式を執り行えば、星神からの報奨として、元の世界へ戻るか、こちらの世界で生きていく資格を得るか、どちらか選べるんです」
「──そうなの? あたし、帰れるのね?
……あ……良かったぁ……」
不安はあったのだろう。
エティの目元から険がなくなり、代わりに涙で瞳が潤んだ。
彼女は両手でそれを隠すように顔を覆う。
キーぺがそんな彼女の頭をそっと抱いた。
もしかしたら拒絶されるかもしれないと思ったが、エティはされるがままだった。
きつめの対応をしていたのが不意に弱いところ見せて…これもツンデレの一種でしょうか?
とある人の名前が出てきました。
いつか伏線回収したい作者です。
忘れないようにしないと。




