第2章 その39
よろしくお願いします。。。
結局、参加者の数は千を超えたところから数えられなくなった。
屋外なら席は要らないからだ。
「衛士様の数は把握していますがね。
皆様、神殿所属になりますから……
その件については後でエティ様にもご相談があります。
本当に人間として生活していただくのか」
「何よそれ。当然でしょ」
何も考えずに即答したエティ。
それをキーペは片手をあげて制した。
普段の穏やかな様子よりもほんの少しだけ難しそうな、苦みを含んだ表情で告げる。
「後でお願いします。
今はおひろめと、そう、ご自身のスピーチにも集中していただくのがよいかと思いますよ」
その顔に苦みは混ざったまま、キーペが薄く微笑んだ。
うーん。と、うなったエティが腕を組んで首を傾げる。
困ったような笑顔だ。
「スピーチというほど物々しい話じゃないけれどね」
「命の大切さを説かれるのでしょう?
衛士様方をお相手に。
無事に乗り切っていただきたいですが──
ぼくが、集中しなければいけないといった意味、きっとすぐに分かりますよ」
「あんまり緊張させないでよ。
大勢の前で発表するのなんて慣れてないんだから」
防寒着をしっかり着込んだエティは、神殿の入口付近から外に集まっている参加者たちを見ると、深い深いため息を吐き出した。
『大勢』の規模が違い過ぎだ。
拡声の術で声は遠くまで届くらしいが、もう端っこのほうは顔が分からないほど遠くまで人が並んでいる。
今日は少しは寒さが和らいだほうだ。
それでもこんな大勢に寒空の下、並ばせて申し訳なかったという気持ちもわいてくる。
まあ自分もこれから同じ立場になるのだが。
エティは、普段は暖かな自身の指先が冷えて震えているのを感じた。
郷里ならこういう時は唇に指先を触れさせるのだが、同じことをこの世界でやると、唇のほうもそんなには温かくなくて、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「どうしよう」
動揺が伝わったようで、キーペが両手を差し出してくる。
まだ育たない少年の手。それでもエティの手を温めるには充分な熱量があった。
「大丈夫ですよ。
どうしても対応が難しい時は、精霊神様に心で祈りを捧げてみてください。
次の言葉が自然と口をついて出てきますよ」
「そうかしら……まだ神殿に戻ってきてないんでしょ。神様」
緊張しながらも冷静に状況を把握しているエティに、キーペは苦笑の度合いを深めた。
彼は彼女の手を包んでいる自分の手の甲に唇を落として言う。
「この世界のどこかにいることは確かなんです。
そうでなければこの神殿の建物の機能が維持できないので。
……時には信じてあげてください。
精霊神様はエティ様のこと、悪くはなさらないと思いますよ」
「そうだと良いわ。
──ありがとう。キーペ」
話をしていて少し緊張がほぐれたエティは、そっと少年の手から自分の手を引き抜いた。
お礼の言葉に笑顔を混ぜたのは一瞬のこと。
緊張とは異なる、真剣な面持ちになって前を向く。
おひろめが始まる。
もうちょい緊張してるところ念入りに書いても良かったかな〜と思う、おひろめの直前の様子でした。
これまでの乙女との比較があってもいいよねと思いつつ、それはこの後に描かれます。の予定です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!




