第2章 その5
よろしくお願いします。。。
食後の運動を兼ねて少し歩こうとのキーぺの提案で、ソリを停めたところから歩いて十分ほどすると、先ほど店で聞いたのとは違う類の賑やかな笑い声が青空に響き渡っていた。
さらに五分ほど歩くと見えてきたのは、下からボードを抱えて登ってきた少年や、ひとり用のソリに乗ってすぐに姿を消した少女など。
すり鉢状のゲレンデの縁に立って中を見やると、そこには数え切れない人数が集まって、思い思いにスノーボードやソリ遊びを楽しんでいる光景が広がっていた。
圧倒的に子どもが多いが、中にはちらほらと大人もいる。
キーぺに気付いたゲレンデ客が何人か集まってきた。
「おー! キーぺ! 神殿お手柄だなあ!」
「キーぺさん! 今回の救世の乙女ってどんな方なんですか?
絶対お礼言わなきゃ!」
「そうだよ。こんなことしてくれるなんてさ。
今までと違うよね! ぼくもお礼言いたい!」
「……」
目が真ん丸になったエティだ。
無言で片手で覆い隠した、その口元が嬉しそうにほころんでいる。
その様子を横目で見つつ、勝ち誇ったように笑うキーぺ。
彼は集まってきた人々に彼女のことを示しつつ、楽しそうに言った。
「こちらのかたがそうですよ。エティ様と仰います。
仲良くしてあげてくださいね?」
「おー、あんたがそうか姉ちゃん! ありがとな!」
「エティさまー、とってもありがとうございます!」
「エティさま、ありがとう! すごくうれしいよ!」
「いえ、いえ、いえっ。
こんなによろこんでくれて、あたしも嬉しいわ」
「エティさま、いっしょにあそぼ!
うちのソリふたりのれるから、うしろにのせたげる!」
「えっ」
ついつい、期待に目が輝いてしまうエティ。
はたと気付いてキーぺのほうを見ると、彼は微笑んでうなずいた。
エティは超乗り気で遊びに誘ってくれた少女に礼を言うと、いそいそとソリに乗り込み、風を切ってゲレンデを滑り降りて行くのだった。
* * *
結局、数名の子どもたちと日が傾くまで遊んだエティは、そろそろ帰りますよとキーぺに言われてゲレンデを辞した。
どうだったかとキーぺに聞かれて、エティが気恥ずかしそうに答える。
「すごく楽しかったし、すごく嬉しかったわ。
ありがとね、キーぺ。あんたのおかげよ」
「いえいえ。エティ様のお力ですよ。
──おつかれではないですか?
家まで何十分かあります。
よろしければ少しお眠りください」
「うん……そうね、そうするわ。ありがと」
エティが滑走するソリのシートにもたれて寝息を立て始めたころ。
キーぺは水色の石が付いたペンダントを懐から取り出し、何事か囁いた。
すると石がほんのりと明滅を始める。
それは微かに振動し、音声を伝えてきた。
『キーぺか。どうした?』
仰々しいのが嫌だったエティ。
ゲレンデでみんなとたくさん遊んだので、だいぶ気楽になったんじゃないでしょうか。
キーぺは一体どこまで計算だったのか。
さっぱり分からないです。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます!




