第2章 その4
よろしくお願いします。。。
「うっ、ぐ……」
──こういうの、『ぐうの音も出ない』って言うんだな。
勝利を確信して、にかっと笑うキーぺ。
エティは不承不承身を引いて、両腕を組んで斜めから彼に告げた。
「二度と。救世の乙女のこと明るみにすんじゃないわよ」
くすくす。笑み声を漏らしてキーぺがドアを示す。
「良いじゃないですか。殊更に存在を伏せなくても」
「なんか仰々しいじゃない! やぁよほんとに」
肩を怒らせて頬をふくらませるエティ。
彼女へ向けて、彼は両手のひらを見せてなだめた。
「まあまあ、そろそろお昼の時間です。
昼食を召し上がったらもう一度、雪積み──もとい、簡易ゲレンデまで行ってみましょう」
お昼と聞いてそこそこ機嫌を直したエティは、ん? と首を傾げる。
「もう一度? なんかあるの?」
「ええ。良いものをご覧に入れます」
「良いものって何よー?」
「さて、お昼、お昼」
エティは先に部屋を出たキーぺを追いかけながら聞くが、キーぺは声を弾ませてごまかすのみだった。
* * *
いつもは家で食べている昼食だが、今日は外食のため気分が違った。
ランチタイムで賑わっている店内は、人が少なければ敬遠される窓際席まで熱気にあふれ、ほぼ満席状態だった。
だが気楽なその店は回転率が高く、少し待っていただけで順番が回ってきた。
何だか久しぶりに自分で引いた席に腰かけながら、エティは、ほくほくした顔をしていた。
やっぱりこのくらいのほうが性に合ってるわよね。と考えていると、顔に出ていたのかキーぺが口を開いた。
「たまにはこういう場所も良いでしょう?
普段は乙女を同伴する時はもう少し格式の高い店にお連れするのですが、エティ様ならこちらかな、と」
片目をつむるキーぺを、エティがサムズアップで讃える。
「うん! 気が利いてるわキーぺ。
あたしが元いた世界で行きつけだったお店と雰囲気が良く似てるの」
「冒険者ギルドでお勤めだったと仰ってましたっけ?
荒くれ者ばかりのイメージですが、怖くはなかったですか」
「あ〜、確かに荒っぽい人は多かったけどね。
みんな基本は気のいい連中ばかりだったわよ」
注文を聞きに来たウェイトレスに、キーぺお勧めのミルクスープのうち、キノコが入ったものを頼む。
キーぺが鮭の入ったものを頼んだのを聞いて、ウェイトレスが去った後でエティが言った。
「あ〜。鮭のミルクスープ! キノコとどっちにしようか迷ってたのよ」
ぴ。とテーブルの上で伸ばす人差し指。
対面に座っているキーぺが、くすくす笑って、同じように伸ばしてきた人差し指の先をエティのそれにくっつけた。
「そうしたらぼくのスープも一口、召し上がりますか?
どっちも美味しいですよ」
「嬉しい! そうして? あたしのも一口あげるわ」
「はい、そうしましょう」
すっかり機嫌の直っているエティを見て、キーぺは、そうか食べ物なんだな。と学習していた。
うちのヒロインは食べるのが好きな子が多いです。
作者の呪いです……。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます!




