68.好奇心?
ナシュカは心の中で反省すると決意を新たにした。目的だったマリナに直に会って知ろうという思いを強くしたのだ。
「分かりました。是非、マリナ様に会わせてください」
「おい、ナシュカ!?」
「ナシュカ様!?」
ナシュカの態度に側近二人が驚く中、教師は落ち着いた様子で対応した。
「承りました。マリナ嬢をお呼びするので応接室でお待ちください」
教師に促され、三人は応接室に案内されて向かう。その途中でバートとバイラが小声でナシュカに話しかける。
「おい、いいのかよ? 俺でもわかるくらい何か様子がおかしいぞ」
「私達が来ることを予測したうえに、男爵令嬢のために教師が出向くなど普通ではないですよ。何が待っているか分かったものではありません。ここはひとまず、」
「会う約束を後日にして改めて出直すというのかい? わざわざ第三校舎まで来て今更出戻り何てできないよ」
心配するバイラの言葉を遮って、ナシュカは出直さないと真剣な顔で答えた。
「そうしている間に事態が動いて、マリナ様に会って話をする機会が無くなったらどうするんだよ。向こうも会う気でいてくれてるのにさ」
「しかし、相手はたかが成り上がりの男爵令嬢ですよ。その程度の身分の者が我らが来るのを待っていただなんて、気味が悪いです。そんなことが分かるくらいなら向こうから来ればいいというのに、」
「でも、だからこそ面白くなってきたじゃないか」
ナシュカがニヤリと口元を曲げた。その顔が心から笑っているとバートもバイラも分かってしまった。だてに側近をやっているわけではないから嫌でもわかってしまうのだ。
「(あ、この顔はヤバい)」
「(ダメですね。完全に面白がってます)」
「せっかく向こうから情報提供してくれるんだ。乗ってやらないほうが王族として失礼だよ。そう思わない?」
ナシュカはバートとバイラを振り返り、それぞれの意見を求めた。二人とも引きつった顔でいる。ナシュカを引き留めるのを諦めたのだ。
「まあ~、確かに招かれたなら行ったほうがいい、かもな」
「複雑な気持ちではありますが、ナシュカ様の言うことにも一理ありますね。それに王族として堂々としていれば問題は無いでしょうし、いざとなれば私達二人がナシュカ様をお守りします」
バイラが「お守りします」と口にしたと同時に顔を引き締めた。それに乗じてバートも真剣な顔になる。それを見たナシュカは笑みを柔らかくして喜んだ。
「ふふふ、いい側近をもって僕は嬉しいよ(文武両道ってだけじゃない。本当に僕のために動いてくれているからね)」
「「はっ、ありがたき幸せ」」
ナシュカは感情表現が乏しくて冷酷な人物と周囲からは思われているが、実際は違う。近しい者にしか分からないが、自身の個人の感情よりも愛国心を尊重しているために誤解されやすいだけなのだ。本当のナシュカは若干好奇心が強い傾向がある。だからこそ、ナシュカはこの状況を少し楽しみになってきている。今のナシュカはマリナに強い関心を持ち始めたのだ。
「ふふふ、マリナ様か。どんな人物なんだろうねえ」
ナシュカ達三人はこのまま教師に連れられて応接室に向かった。




