67.教師の行動?
遂に第三校舎に着いたナシュカ達三人はすぐにマリナを探そうとした。だが、すぐに三年担当の教師に呼び止められた。
「失礼、皆さんは風紀委員の方々でしょうか?」
「「「!」」」
初老の教師の問いかけにナシュカが二人を制して応じた。
「はい、そうです。風紀委員の権限においてある人物を探しているのです。問題ないでしょう?」
「問題ありませんが、もしやその人物とはマリナ・メイ・ミーク様ではありませんか?」
「「「っ!」」」
教師の言葉に三人は驚いた。教師の口から探している人物の名が出てきたのだ。だが、驚くのはこれからだった。それはナシュカの方から質問してからのことだ。
「……そうですが、何故分かったのですか? 私達は風紀委員ですが初めて第三校舎に入ったのですが?」
「そのマリナ嬢から『風紀委員の方々が来られるようなことがあれば知らせてほしい』とお願いされているのですよ。その中に王家の方がおられるようなら『自分に用があるだろうから会わせてほしい』とも言っておりますが」
「「「っ!?」」」
教師の言葉に三人は顔を見合わせた。バートとバイラは目に見えて動揺している。
「ど、どういうことだよ」
「私に言われても……」
ナシュカも驚いたが、見た目は二人よりも落ち着いている。だが、頭の中は二人よりも動揺していた。
「(どういうことだ? 何故、こんなことが起こるんだ?)」
ナシュカが最初に驚いたのは教師の行動だった。第三校舎で三年を担当する教師が男爵令嬢の願いを聞いているのだ。こんなことは普通ではありえない。
「(第三校舎で三年を担当する教師は皆、有力貴族の親族のはずだ。そんな立場の者が男爵令嬢のマリナ・メイ・ミークの願いを聞いて動いたというのか? 普通ならあり得ないぞ。それだけ教師たちの信頼を得ているというのか?)」
教師の信頼を得るというのは、それだけの価値観を示すことと同義だ。普通の、それも成り上がりの男爵令嬢にはとても困難なはずだ。ナシュカはそう思わずにはいられない。ただ、教師の行動にも驚いているが、ナシュカが一番気になっているのはマリナのことだった。
「(それだけじゃない。教師にこんなことを頼んだということは、マリナ・メイ・ミークは僕たちが来ることを予測していたということになる。それだけの頭はあるということになるが、それだと事前に調べた人物像とは一致しないぞ?)」
ナシュカはカーズの噂を聞いた時から、ある程度マリナの情報を探って人物像を考察していた。成り上がりの男爵家の令嬢として軽く考えていたのだ。
「(教師に信頼されたり僕たちの行動を予測できたりするなら、僕が思っていた人物像とほとんど一致していない。情報が古すぎたか?)」
だが、その情報はカーズがマリナとの関りが噂されたころのものであり、一番古い情報でしかないということだ。つまり、ナシュカは今のマリナのことは実際に知らない。その事実をナシュカは、自分自身の怠慢だったと心の中で舌打ちした。
「(油断したな。たかが成り上がりの男爵家の令嬢と甘く見たよ。僕が甘かったな。もっと情報を集めてから来ればよかったよ。反省しようじゃないか)」




