54.日記〇×年〇〇月〇3日
―フィリップスの日記より―
〇×年〇〇月〇3日
遂に私とイゴナもウィンドウ学園に入学することになった。入学式には生徒会の方々が挨拶してくれるのがこの学園の伝統だった。だからこそ私とイゴナは驚いた。兄さんが生徒会のメンバーにいたのだから。それでいて屋敷で見せなかったような、しっかりした姿を見せつけているのだから更に驚かされたものだ。
「生徒会……本当に、入れたんだ」
「ベーリュ兄さま、格好いいわ」
数か月前に生徒会に入ったと聞いていたが、正直信じられなかった。生徒会は学園でもトップクラスの成績を収めなければならない。たとえ王太子殿下の取り巻きと言えど、入る条件は厳しかったはずだ。なのに、どうやって……。
兄さんに直接聞いてみたら、屋敷に戻ってから教えてくれるということになった。そして、予想を超える答えが返ってきた。
「実は、一年前に平民を苛めた辺境伯令嬢の兄貴がさ。俺を生徒会に推薦してくれたんだ」
「ええ!? どういうこと!?」
一年前にそんな話を聞いてけど、その令嬢は退学して姿を消したっていうじゃないか。そんな人の兄君がどうして推薦なんか!?
「何でも妹の横暴さは向こうも嫌気がさしてたらしくてね。それを止めてくれた俺に感謝してたらしい。だから俺の念願だった生徒会入りを推してくれたってわけさ。ははは、いいことをするもんだな~」
「そ、そうなんだ。それは良かったね」
そんなうまい話があるものなのか? 何か引っかかる、釈然としないな。そう思った時だった。兄さんの様子が変わった。
「……フィリップス、ここだけの話だが両親と妹には言うなよ?」
「え? 何?」
「一年前の辺境伯令嬢の平民への苛めはな。俺が仕組んだことなんだ。王太子殿下に取り入るためにな」
「っはあ!?」
「殿下が気にかける平民なんて貴族なら誰もが気に入るはずがない。特に頭が悪くてプライドの高い奴ならいじめを行うのは間違いない。その背中を俺が押してやったのさ。家の立場が上ならなおさらだ」
「ど、どうして、そんなことを……」
「言ったろ、王太子殿下に取り入るためだってな」
なんということだろう。一年前に起こったという事件の元凶は兄さんだったのだ。私は目の前にいる兄が恐ろしくなった。
「お前にだけ真実を明かしたのは、なるべくそこに触れないようにくぎを刺すためだ。お前は疑問に思ったら勝手に調べようとするからな。真相を知られる前に教えてやったのさ」
「…………」
そんな理由で私に教えてくれたというのか。いや、納得できる。確かに私はそういう男だ。
「せっかくお前が入学してくれたんだ。学園では俺のために働いてもらうよ。邪魔はしてくれるなよ?」
そういって兄さんは部屋を後にした。私は、これからの学園生活が不安で仕方がなかった。




