32(8裏側).人を見る目?
使用人たちはやっとワカナの部屋にたどり着き閉じ込めることができたが、その顔はとても疲れ切っていた。
「遂に閉じ込められたか。いつかこんな日が来るとは思ったよ」
「それが実の父親にとはな、ざまあないな」
「上のお嬢様、確かサエナリアお嬢様だったかな? 彼女もこの事実を知ればお喜びになるだろうな。今いないのが残念だ。きっと、ざまあって思うだろうに」
使用人の執事の一人がそんなことを口にして笑うが、彼らの前に一人の侍女が現れた。
「サエナリアお嬢様はそんなことを思うお方ではありませんよ」
「ん? お前は……(顔こわっ!?)」
その侍女は黒髪黒目にそばかすに眼鏡の姿だった。目つきが鋭くて、冷たい雰囲気を出している。
「お前は確か、サエナリアお嬢様の専属の……」
「はい。サエナリアお嬢様の専属侍女ミルナです。お言葉ですが、サエナリアお嬢様の人柄からして、実の妹が酷い目に遭えば嘆くと思われます。あのような酷い妹だったとしても、憎むことはできないお方です。誠に残念ながら……」
ミルナは悔しそうな顔をワカナの部屋に向けた。こぶしを握り、その目には怒りが宿っている。
「(な、何か怖いな、この子)そ、そうか。悪かったな、確かに良く知らないのに滅多なことを言うもんじゃねえな」
「サエナリアお嬢様はそんなにいい人なのか。俺達もそっちの専属がよかったな」
「何言ってんだ。サエナリアお嬢様はあの女と対極にいるってんなら、顔が売りの俺達じゃ専属になれないだろ」
「はは、言えてるな」
愉快そうに笑う執事たちを無表情な顔で見つめるミルナ。彼らには関心はないようだ。サエナリアを顧みなかったソノーザ一家に対する憎悪は使用人までは含まれないらしい。
「(彼らは雇われた使用人にすぎませんしね)皆さん、旦那様はこれからサエナリアお嬢様の捜索を始めるそうです。今一度下の階の広間に戻ってください」
「! やっぱりそうなるか。はぁ~、忙しくなるぜ」
「ちっ、これは母親の方のせいだな」
「いや、父親もそうだろ。育児放棄してたんだからな」
自分たちの主に愚痴をこぼしながら、彼らは下の階に戻った。ミルナはそこで溜息を吐いた。
「何て口の悪い方々何でしょう……サエナリアお嬢様、貴女様の愚妹は人を見る目が腐っています。貴女様とは違って」
ミルナはサエナリアの部屋を悲しげに見つめた。倉庫とはいえ二度と主が戻っては来ない部屋は寂しそうに見えたらしい。




