25.護衛?
ミルナは更にこんなことを付け加えた。
「可能なら護衛の方とご一緒にお願いします」
「護衛も?」
カーズは首を傾げる。本来、公爵の立場にある家で王太子に危害を加えるような不届き者などいるはずはない。だからこそ、カーズはソノーザ公爵の屋敷に入る際に、護衛を馬車に待機させていたのだ。なのに、ミルナは護衛が必要だという。
「何故、護衛が必要になる? 公爵は大きな権力を持っているが、王家の者に対して危害を加えるようなことはしないと思うのだが?」
「それは旦那様ならです。ワカナお嬢様は違います」
「!」
「ワカナお嬢様はそういう教育がなっておりません。それゆえにでございます」
「あ、ああ……そうだな」
カーズはつい数十分ほど前にワカナの醜悪な性格を知ったばかりのため、ミルナの言うことにも納得した。地下牢に連れていかれるときのワカナの叫びが、カーズの頭に残っている。もし見つかったら、彼女を袖にしたカーズに襲い掛かってくる可能性も否めない。
「彼女なら何をしてきてもおかしくはないな。む? だが、彼女は今地下室にいるのでは?」
「奥様が娘可愛さに出してしまう可能性もなくはありません」
「なっ、ありえ、そうなのか?」
「奥様がサエナリアお嬢様を蔑ろにしてワカナお嬢様を可愛がる様を見てきてまいりましたゆえ、可能性は高いと存じます」
「娘可愛さ、か……」
カーズは確かに、ソノーザ公爵が部下にワカナを地下室に閉じ込めるように命令したのを見聞きしている。だが、ワカナが本当に地下室に軟禁されたところまで確認したわけではない。それに公爵家の家庭における歪みを聞いてしまっては、確かにワカナを救出されてもおかしなことだとは思えない。公爵夫人ネフーミはサエナリアを蔑ろにしてワカナを優先してきたことも分かっているのだ。
「(公爵夫人はその愛情を何故サエナリアにも向けてくれなかったのだ。俺にそれを咎める資格はないが、教育が偏りすぎではないか。……だが、サエナリアの部屋をこの目で見させてもらうのは都合がいい。公爵家を断罪できる材料になるやもしれん)」
侍女ミルナの話では、サエナリアの手掛かりを探すという話だったのに、いつの間にかカーズは公爵家の弱みを探すつもりになっていた。それほど、歪んだ家庭を持つソノーザ公爵家に不快感を感じていたのだ。
「分かった、待っててくれ。すぐに呼んでくるよ」
カーズは、少ししてから屋敷の外に待機している二人の護衛を連れてきた。二人ともガタイはよくて鍛えられた騎士のようだ。
「これで護衛は十分だ。二人とも私が信頼できる騎士だからな。では、案内してくれ」
「かしこまりました。私についてきてください」
「(サエナリアの部屋か。思えば令嬢の部屋に入るのは初めてだな。どんな部屋なのだろうか)」
侍女ミルナは三人をサエナリアの部屋まで案内する。サエナリアの部屋のことに妙な期待と緊張するカーズだったが、この後で実際に目にして大きく期待を裏切ることになった。




