24.入室?
客間を出た後、カーズはすぐにでも王宮に戻って、国王である父親にサエナリアの捜索願を出そうとしていた。
「急がなくては! 待っていてくれ、サエナリア!」
だが、屋敷から出る直前に、意外な人物に呼び止められた。
「お待ちください! 王太子殿下!」
「! 君は……?」
カーズを呼び止めたのは公爵家につかえる侍女だった。黒髪でそばかすのある眼鏡をかけた女性だ。息を切らした様子を見ると、全力で走ってきたようだ。
「はあはあ………お初にお目にかかります王太子殿下。私はサエナリアお嬢様の唯一の侍女ミルナと申すものです」
「サエナリアの、侍女?」
確かにそうだった。彼女、ミルナこそが、ソノーザ公爵家の中で唯一のサエナリアの使用人であり、従っていた侍女だった。サエナリアの部屋で書置きを見つけ出したり、サエナリアの似顔絵を描いたのも彼女だ。
「そういえば一人だけサエナリアに侍女がいると聞いたな。君がそうか。サエナリアのことは世話になっ、」
「王太子殿下! サエナリアお嬢様の捜索にご協力してくださるという話は真でしょうか!?」
「!?」
侍女ミルナはカーズの言葉を遮って詰め寄る。本来なら不敬な行為だが、ミルナのことは切羽詰まった態度に咎める気が起こらなかった。
「あ、ああ………真も何も、これから父上、国王陛下に直接願い出るつもりだ。願わくば私が先導したいくらいだと思っている」
カーズの言葉に嘘はない。正直な言葉だ。国王から許されるなら、見つけだすまで王宮に帰らないつもりでいた。
「それならば、無礼を承知でお頼み申し上げますが、今すぐにでもサエナリアお嬢様の部屋を殿下ご自身の目で見ていただけないでしょうか?」
「何! サエナリアの部屋を? ………私が入っていいのか?(サエナリアの部屋か。気になるな。だが……)」
カーズにしてみれば驚きの提案だった。サエナリアの部屋に入るなど考えてもいなかったのだ。だが普通、貴族が家族以外で未婚の女性の部屋に許可なく入るなどはしたないことなのだ。婚約者でも例外ではない。しかも、今は肝心のサエナリアが行方不明なのだ。許可の取りようがないではないか。
「王太子ともあろう者が、謝罪する前に許可なく彼女の部屋に入るなど、」
「今は非常事態なので仕方ありません。是非、お願いします。私達のような者の視点ではなく、第三者の目から見ればサエナリアお嬢様の手掛かりが見つかるかもしれません。そのお時間をいただけないでしょうか?」
「な、なるほど、それもそうだな。そういうことなら受け入れよう(そうだ、サエナリアためなんだ。仕方ないじゃないか。……決して女性の部屋を見ていたいというわけではないがな)」
「ありがとうございます!」
カーズは少しでも手掛かりを見つけたいと思っている。だからこそ、ミルナの言うことに承諾した。




