第二十四章 広美、結婚する
ある日、広美は勤務を終えて須藤刑事と京都府警を出ると、勤務を終わらせた隆の妹由紀子が、「広美さん、先日お願いした件はどうしたの?」と声を掛けた。
広美は、「えっ?何か頼まれていたっけ?」と考えていた。
由紀子は、「もう、大事な事を忘れて。お兄ちゃんのお嫁さんになってくれる話はどうしたのよ。考えておくと言っていたけれども、お兄ちゃんに聞いても全く動きがないようですね。」と広美に先日の話は本気だった事を伝えた。
由紀子は、広美が一人ではない時に伝えて、噂が広がらないか期待している様子でした。
須藤刑事は、「えっ?主任、結婚されるのですか?おめでとうございます。」と鬼軍曹に惚れる男は、どんな男なのか興味がある様子でした。
広美は、「勧められているだけで、まだ付き合ってもないのに結婚はまだしないわよ。」と須藤刑事に変な噂を流されないように結婚話は否定した。
由紀子は、「付き合ってなくても仕事上の付き合いがあり、二人は仲がよかったじゃないですか。」と二人を結婚させようとしていた。
広美は、何故由紀子がそこまで積極的なのか不信に感じて、「何故そんなにまでして私達を結婚させたいの?」と何か理由があるのか確認した。
由紀子は、「実は先日、友達と喫茶店で話をしていると、私のお兄ちゃんの話題になり、結婚はまだだとか付き合っている人もいない事などの話をしていると、隣のテーブルのおばさんが、“あなたのお兄様って週刊誌の高木記者ですか?”と声を掛けてきたのよ。何故お兄ちゃんの事を知っているのか聞くと、広美さんのお母さんだったのよ。お兄ちゃんが鶴千代さんの独占記事を掲載して、その内容が良かったので、広美さんの事をよく見ているこの人なら!と思ったらしいわよ。そのお母さんに頼まれたのよ。」と説明した。
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広美は帰宅して母の初美に由紀子から聞いた話をして、「結婚は私が決めるから余計な事を他人に頼まないで!おかげで恥掻いたじゃないの!」と切れた。
初美は、「由紀子さんと話をすると、広美も高木さんも仕事に夢中で結婚の事は頭にないようなので私が動いたのよ。男性はいいかもしれないけれども女性が子供を産めるのは若い時だけなのよ。早く結婚して出産しないとマル高になるわよ。」と広美の結婚を心配していた。
広美は、「それが余計だというのよ!京都府警で噂が広まればどうするのよ!」と怒って自分の部屋に入った。
翌日広美は職場で緒方係長から、「林君、結婚するらしいな。」と心配していたように噂が広まっていた。
広美は須藤刑事を、「お喋り!違うって言ったじゃないの。」と睨んだ。
須藤刑事は、「火のない所に煙はたたないというでしょう?私も主任が高木記者と仲良く会話している様子を何度か拝見した事があります。それに、私は何も喋っていませんよ。」と反論した。
広美は、「仲良く話をする事と結婚とは別よ。須藤刑事が喋ってないのならなぜ、係長が知っているのよ!」と結婚は否定した。
緒方係長は、「私は林君のお母さんから聞きました。母親からの情報なので間違いないと思ったものですから・・」と須藤刑事が責められていたので情報の入手経路を明かした。
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広美の勤務が終わり京都府警から出ると隆に声を掛けられた。
「由紀子が、お前と結婚しろと五月蠅いんだ。お前の所にも由紀子が行ってないか?」と隆も広美の事は嫌いではないので、由紀子をダシにして広美に声を掛けた。
広美は、「ええ、お兄ちゃんのお嫁さんになってくれと来たわよ。」と雑談していると、その様子を見ていた由紀子が来た。
「二人とも、そんな所で立ち話せずに落ち着いてゆっくりと話をすれば?」と二人の背中を押して、自分が勤めている喫茶店に、連れ込んだ。
隆が、「ここはキャッチバーか!」と不満そうでしたが、由紀子に押し切られて広美と二人で喫茶店に入った。
由紀子は二人を奥の目立たないテーブル席に誘導した。
二人で雑談していると、やがて良い雰囲気になってきた。
これをきっかけにして、二人はたまに外で会うようになった。
数ヵ月後由紀子が、「お兄ちゃん、たまに広美さんと会っているようね。先日広美さんの実家の置屋に行ったのでしょう?そろそろプロポーズしなよ。広美さんも、きっと待っているわよ。」と後押しした。
隆は、「お前、何でそんな事を知っているのだ?」と不思議そうでした。
由紀子は、「広美さんのお母さんから聞いたのよ。お母さんの話では、広美さんも結婚には前向きのようよ。今がチャンスよ。プロポーズすればきっとOKされるわよ。」と広美の気持ちを初美から聞いた事を説明した。
翌日隆は意を決して広美にプロポーズした。
広美は結婚しても刑事を辞めない事を告げると隆は、「俺も取材で夜遅くなる事が多く、食事は外食ですましている。お前にメシを作って貰おうとは考えてない。刑事だけではなく芸者も続けて良いぞ。俺は仕事していて輝いているお前が好きなんだ。気の済むまで仕事しろよ。でも子供は欲しいな。子育ては俺も手伝うから仕事も芸者も続けろよ。」と仕事は続けても子供は欲しいと条件を出した。
その条件に広美も納得して二人の結婚が決まった。
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二人で式場の下見などして、キリスト教や仏教の信者でない招待客もいるので教会や神社ではなく、ホテルで結婚式を挙げる事にした。
色々と検討して京都センチュリーホテルに決めた。
日取りも決まり、招待客のリストを作成する為に出席の有無を確認していた。
出席者の確認をしていた為に、京都府警内部に噂が広まった。
「主任、結婚されるそうですね。相手は週刊誌記者らしいですが、捜査情報を性感帯を刺激されてガードが緩み、寝物語で漏らさないで下さいね。」などと冷やかされていた。
広美は、「何が性感帯よ。なんであんた達はそんな事しか考えられないのよ!それは立派なセクハラよ。私は一課長秘書よ。風紀を乱す行為が見られたと一課長に報告して処分の対象にするわよ!」とHな事しか考えられない部下が許せませんでした。
隆も職場の同僚に、「お前、京都府警の婦人警察官と結婚するのか?交通課か事務系の婦人警察官か?」と雑談していると、編集長が広美の名前を覚えていた。
「ちょっと待て!林広美って、どこかで聞いた事あるぞ。そうだ!京都府警の鬼軍曹だ。高木!お前が結婚するのは検挙率No.1のその鬼軍曹なのか?」と信じられない様子でした。
隆は、「はい、そうです。ある事件の取材を通して彼女と知り合い、最初は心のない冷酷な女だと感じましたが、取材を続けていると、感情に流されず、すごく冷静なので驚いて話を聞いていると、次第に親しくなり、私の妹が間に入り今回ゴールインしました。」と説明した。
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結婚式には、新婦側の主賓として京都府警本部長を迎え、倉田一課長、緒方係長以下、三係の刑事達が招待され、実家の置屋の芸者も芸者姿で出席していた。
広美は、「ちょっと、何故私服ではなく芸者姿なのよ。」と不満そうでした。
小菊が、「だって鶴千代姉さん、正装で出席しろと言っていたじゃないの。これが私達の正装よ。」と芸者姿で出席した理由を説明した。
広美は、誰が主役か解らなくなりそうだが、正装と説明した私も悪かったので仕方ないか。と諦めた。
府警本部長が挨拶で、広美は検挙率No.1の優秀な刑事で、犯罪者から鬼軍曹として恐れられている事などを説明した。
倉田一課長が、広美との出会いは、広美が中学生の頃で、広美の将来の夢が刑事になった理由を説明した。
その当時は、鬼軍曹の陰もなく初心な女子中学生だった事を説明すると招待客の笑いを誘い、三係の刑事達も、鬼軍曹の異名をもつ主任が初心だったとは信じられないと驚いていた。
緒方係長が、広美の実家が置屋で、人気No.1の売れっ子芸者の鶴千代が広美である事を説明すると、招待客も驚いていたが、凶悪な犯罪者が美人芸者に鼻の下を伸ばした瞬間、鶴千代に逮捕されたと説明すると招待客の笑いを誘った。
新郎側の招待客もこの説明で新婦側の招待客の中に芸者が数人いる事に納得していた。
由紀子が、「清滝で殺人事件を目撃して犯人に殺されそうになった時に、お兄ちゃんに助けを求めると、広美さんが覆面パトカーで助けにきてくれました。」とその時の様子を説明した。
隆の同僚が、「そういえば、その時間、その近くを車で走行していると、覆面パトカーがサイレンを鳴らして、対向車線を逆走してきました。高木君に似た刑事が後部座席に乗っていたが、あれは刑事ではなく高木君だったのか。」と驚いていた。
その後、花嫁の広美が鶴千代として踊りを披露するパフォーマンスを行い、招待客は広美の色っぽさにうっとりして、凶悪犯が鼻の下を伸ばすのも当然だ。と納得していた。
やがて結婚式も無事に終わり、二人はハワイへ新婚旅行に出発した。
次回投稿予定日は、8月31日を予定しています。
第二部はこれで終了です。次回から第三部の投稿を開始します。




