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案の定、クライヴがその標的を見つけるまで、それから三日と経たなかった。
一応普通に情報筋も洗ってみたが、流石に居所は割り出せなかった。そこで、少々派手に港湾分署の所轄を荒らした。何も自身で暴力沙汰を起こした訳ではない。自分が捕まっては元も子もないし、後々を考えればそも表沙汰にならないのが望ましい。
故にクライヴは、目に付く火種に積極的に油を注いでいった。恨み辛みを抱えている連中に相手の居所を流したり、スリの類を被害者にそれとなく指摘したり。ついでに見かけた深夜の酔っ払いの揉め事は、喧嘩になるまで煽っておいた。
果たして地道な努力のお陰か、男の事務所に拉致された翌々日の昼には、増員されたパトロールの警察官の中に探し人の姿を発見した。
標的がかかったのは、初日に万引きを指摘した露天商だった。例の妙に整った顔立ちは初日から頭に叩き込んでおいたので、遠目で見てもすぐに分かる。世間話でもしているのか、当の本人は店の主人とにこやかに言葉を交わしていた。
その様子をさりげなくすれ違って確認したクライヴは、予想より高いその声に軽く目を見開く。そのまま通りの向かいの路地の影に身を隠すと、ぽつりと呟いた。
「女、だったのか」
中性的な顔立ちとスーツ姿からてっきり男だと思い込んでいた。写真では短髪に見えたその髪も、後ろで一つに括っていただけのようだ。
──じゃ、思ったより楽かもな。
クライヴは胸中で嘯く。標的が女なら男よりは楽、子供ならもっと楽に済む。それ以上の思考は生きて行くのには邪魔だった。
ましてや所謂ストリートチルドレンの身の上であるクライヴにとって、当たり前だが警官にはいい思い出が無い。番犬だか何だか知らないが、またとない憂さ晴らしの機会だった。恨むならヴォルピーノ相手に喧嘩を売った己を恨んで貰おう。
「ま、精々楽しませてよね、役立たずのおまわりさん?」
薄暗い決意を固めたクライヴは、通りの向こうへ向けて小さく呟いた。




