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男爵令嬢レイクーリアがんばる  作者: 山吹弓美
三 私と龍と山の民
93/118

93話 今度の龍神様は

「あ、レイクーリア様!」


 お屋敷の玄関に向かっていると、廊下の向こうからぱたぱたとカルメア様が走ってこられた。後ろにはトレイスが付き添っているから、祠のお参りは済まされたようね。


「あら、カルメア様。龍神様にお話は」

「しました! そうしたら」


 そうお答えになって、カルメア様はくるりと背後を振り向かれた。あら、トレイスと一緒に小柄な殿方がいらしてるわ。髪は深い青で、魔術師のようなローブを纏っておられる。……もしかして。


「ナジャっ子が来てると聞いたんじゃが?」

「あ」


 ナジャっ子、ですか。というかナジャ、確実にお知り合いというかこの方がここの龍神様ですわね、間違いなく。

 龍神様はナジャを見つけると、つかつか歩み寄ってきて下からじろりと睨みあげられた。ええ、ナジャより小柄ですもの。でも、眼力は相当のものね。私も一瞬、足を引きかけたもの。


「おう、また大暴れするつもりかえナジャっ子!」

「わあ! そんなつもりはないですようクリカおじさまあ!」

「おじさま……」


 あらら、ナジャ頭を抱えこんでしまったわ。それにしても、おじさまなのね。アナンダ様のことをナジャは兄様と呼んでいたから……もしかして、こちらのクリカ様? の方がお年を召しておられるのかしら。まあまあまあ。

 そんな風に思考を巡らせていたら、カルメア様と目が合ってしまった。


「……というわけですの」

「そういうことみたい、ですわね……」


 お互いうんうんと頷き合って、ひとしきり収まるまで待つことにした。クリカ様、ナジャに向かってお説教始めてしまったものね。


「……ナジャ、君の悪名とどろきまくってるんだね……」

「うわーん、だから違うんですってえ!」


 アルセイム様まで呆れていらっしゃるじゃないの。しばらくがんばりなさい、ナジャ。




 とは言え、そんなにお説教は長くはなかったわ。せいぜい、お茶を淹れ始めてから飲み始めるくらいまでかしら。「ふう」と満足げに口を閉ざされたクリカ様に、恐る恐る声をかけてみる。


「あ、あの」

「おお、待たせたのう。さすがにこの、おてんば娘には言いたいことが山ほどあっての?」

「まあ、分かりますが」


 ですよねー。あの時は龍女王様も青筋立てておられた……いえ、龍神様なので分かりませんがおそらく、なんですもの。ええ、分かります。

 と、クリカ様は私をまじまじと見つめられて、それから口を開かれた。


「それはそうと、そなたがエンドリュースの娘御じゃな?」

「はい。レイクーリアと申します」

「うむ、わしはクリカじゃ。老体ゆえ、人の名などすぐ忘れるやも知れぬが許せよ?」


 改めて名乗っていただいたクリカ様は、どう見てもその、少年というくらいの外見である。口調がお年を召された方のそれでなければ、老体と言われても分かりませんわ。第一、基準が龍神様でしょうしね。


「ご老体なのですか?」

「人の十数世代は余裕で生きとるからのう。ところで、ナジャっ子連れて我が領まで来るとは何用じゃね?」

「はい、実は」


 人の十数世代……えーと、1000年ほどは生きていらっしゃると言うことかしら。さすがは龍神様、長く生きておられるわね。

 それはともかく、私たちがスリークのお屋敷に来た理由を、ざっとお話することになった。やっぱり、主にアルセイム様がなのだけれど。


「ふうむ。魔龍に、もしかしたら魔女か……」

「はい。グランデリアも以前魔女に侵入されまして、その時の状況と今のスリークがよく似ておりますので」

「なるほど。魔女なぞ滅んだと思うとったが、まだあちこちに生きとるのかもなあ」


 アルセイム様のお言葉に、クリカ様も頷かれた。そうね、パトラ1人だけなんてことのほうが珍しいでしょうからね。

 けれど、その後にクリカ様が思い出されたように口にされた言葉に、この場は固まってしまったわ。


「そういえば、スリークは昔に魔女を出したことがある家系じゃったな」

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