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男爵令嬢レイクーリアがんばる  作者: 山吹弓美
三 私と龍と山の民
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89話 スリーク家の事情

 そんなこんなで、夕方頃になって無事スリーク伯爵家に到着。ナジャはずっとすねてるというか、呆れ顔をしたままだったわ。えー、だってアルセイム様ってば、ずっと私の肩を抱いていてくださったんですもの。嬉しいじゃない。ねえ。

 まあそれはそれとして。スリーク伯爵家は、さすがにグランデリアのお屋敷よりは少し規模が小さめではあるけれど寒色系の、落ち着いた感じのお屋敷だった。あ、エンドリュース家はもっと小さいわよ。何しろ私やお母様、メイド部隊が訓練するためのお庭を広く取ってあるから。


「レイクーリア様! お待ち申し上げておりましたのよ!」


 玄関までお迎えに来てくださったのは、侍従らしい子供を連れたカルメア様だった。相変わらずふわふわの、とても愛らしいドレスをお召しになっておられる。私にはこういうの、似合わないものねえ。あと、敵殴るときにはリボンとか邪魔だし。


「ごめんなさいましね、カルメア様。なかなかこちらをお訪ねする機会がなくて」

「レイクーリア様が来てくださっただけで、カルメアは嬉しいです!」


 えっと、いえ、あの。

 どうして私は、カルメア様にしがみつかれているんでしょうねえ。こういうときってやはり、殿方であるアルセイム様に……いえ、それは駄目よ。アルセイム様は私の婚約者なんだから、いくら従妹でも駄目です、駄目。


「ははは。カルメア、元気そうで何よりだよ」

「あ、アルセイム様」


 おお、アルセイム様がお声を掛けられたらひとっ飛びに離れてくださった。というか何でしょう、びっくりして逃げたに近いものがあるような。


「ごめんなさい! その、嬉しかったもので、つい」

「いや、婚約者と従妹が仲がいいのは悪いことじゃないからね」


 ペコペコ頭を下げるカルメア様と苦笑を浮かべられたアルセイム様に、私とナジャは顔を見合わせて笑うしかないわ。ああ、トレイスは軽く眉間を揉んでいるわね。呆れた……んでしょうねえ、やっぱり。


「やあアルセイム、レイクーリア嬢。よくぞおいでくださった」

「あら、父様?」

「叔父上?」


 やっと中に入れそう、となった時に、玄関からスリーク伯爵が出てこられた。背の高い侍従を連れて、何だかお急ぎの様子だわ。お召し物も、どう見ても外出用だし。


「スリーク卿、お出かけですの?」

「ああ、急ぎの用事があってな。話はグランデリア公爵閣下から伺っている、お手柔らかに頼むよ」


 私が尋ねてみるとスリーク伯爵は頷かれて、それから少しだけ困ったような笑顔をされた。ああ、私がお屋敷破壊しちゃったりしたら大変ですものねえ。


「ミリアが数日前から寝込んでいるんでな、本当なら家を出ないほうがいいんだが」

「あら」

「それで私、不安で不安で……」


 そういえば、大変に賑わしい方がおられないと思いました。ええ、寝込んでいらっしゃるなんてこれはやっぱり、魔女かそれに近い者が絡んでいる可能性が高い、ということかしら。

 それに、カルメア様が不安になられるのも分かるし。


「だが、お2方が来てくれたのなら安心だ。一両日中には戻るから、それまで頼みたい」

「了解しました。どうぞ、お気をつけて」


 でも、やっぱりこういう時にお家を離れるのは……ああでも、大切なご用件なら仕方のないことですものね。それに、すぐに戻られるそうですし。


「すまんな。テンポウ、行くぞ」

「はい」

「父様、いってらっしゃいませ」

「お気をつけて行ってらっしゃいまし」

「道中、お気をつけて」


 お連れになっている侍従、テンポウというらしい彼を連れて、スリーク伯爵は大急ぎで出て行かれた。門の方を見ると、私たちが乗ってきたのとは別の馬車が待っているわ。あれに乗って行かれるのね。


「……」

「どうした? トレイス」

「いえ。お忙しいことだな、と」


 トレイスの感想はもっともよね。奥方であるミリア様が寝込んでおられるのに、お屋敷で案じている暇もないんですもの。

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