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第1話「救えない子供」
母親は、子供を殺そうとした。
けれど殺せなかった。
何度も思った。
何度も首に手をかけた。
それでも、そのたびに指は震えて離れていった。
何度も訴えた。
「あの子は普通じゃないの」
誰も信じなかった。
疲れ果てた母親の妄言だと笑った。
誰も、あの子を見ようとはしなかった。
だから母親は諦めた。
ある夜、静かな部屋の真ん中で首を吊った。
子供はそれを見上げていた。
天井からゆらゆらと揺れる足。
きしむ縄の音。
母親の開いたままの目。
子供は、しばらく黙ってそれを見ていた。
やがて小さく口を開く。
「……お腹すいたな」
そして母親の足を引きながら、暗い台所へ消えていった




