第二話
土曜の夜、部屋で寝ていた私は、穴に落ちそうになる夢を見ていた。
地中につきだしている木の根っこに、必死でつかまっている私の足首を、毛むくじゃらな何かが掴んだ。
振り払おうと足をばたばたさせる。
何かが足から離れた感覚とともに、声が聞こえた。
「ッテイタノニ」
はっと目を覚ました私は、自分が布団の中にいるのに気づいた。
(里美や朱莉と同じ?)
足首を掴まれた感触が、まざまざと残っている。
気になって灯りをつけて確かめたけれど、何の跡も残ってなかった。
(寝るから変な夢を見ちゃうんだ)
その夜私は部屋の灯りをつけ、椅子に座ったまま、眠らないようにと、ヘッドホンを使って大音量で聞いていた。
けれどついウトウトとしてしまったらしく、夢を見ていた。
毛むくじゃらな何かは、私の足首をがっつりとつか。
『マッテイタノニ』
そういうと私の体を穴に引きずり込んだ。
“ドスン”椅子から落ちた衝撃で目を覚ました私は、【あること】を思い出した。
二か月ほど前、三人で遊びに行った時のことだ。
途中、仔猫の声に朱莉が気づきあたりを探すと、片手に乗りそうな仔猫が、空き地の草むらにうずくまっていた。
『こっちにおいで』と里美が手を出すと、仔猫は近寄ってきた。
でも食べ物を持ってなかったのと、早く遊びたかったので『餌持ってくるから、ここで待っていてね』と私が言い、その場を後にした。
でも、遊んでいるうちに仔猫のことはすっかり忘れてしまい、そのままになっていた。
(猫の事、忘れてた!)
夜明けを待って家を抜け出した私は、猫を見つけた空地へと向かった。
「確かこのあたり…」つぶやきながら歩いていると、かすかにニャアと聞こえた。
声をたよりに、空き地の奥へと足を進める。
と、木の根元に大きな穴があいている場所に、行きついた。
中を覗き込むと(!!)穴の底には白い棒状のものが散らばり、そばには見慣れたシュシュとメガネが落ちている。
(…もしかして、朱莉と里美の?!じゃ、あの白いのって…とりあえず警察!)
私は震える足を必死で動かし、一歩下がろうと…した途端足もとの土が崩れ、穴の中に落ちてしまった。
暗闇の中、背後に何かの息遣いを感じた。
気配が、私の耳元に近づく。
眼のはしに、長いしっぽのようなものがうつる。
やがて、頬に先の尖った細い何かが触り、耳元で声がした。
「ヤット、エサヲ、モッテキテクレタ」
了




