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鉄パイプで大ハンマーの柄をぶっ叩いて、頭を外した柄は60cmぐらいの手ごろな凶器になった。・・・太鼓のバチをぶんぶん振っていたカズオの姿が頭をよぎる。
(カズオ、すぐに行くから待ってろ・・・)怒りの炎がまた燃え上がる。
ジーンズの尻ポケットにトカレフをつっこんだ2人、俺はハンマーの柄、園部は鉄パイプを片手にぶらさげてミラを降りる。
車道を斜めに横切り、玄関のガラスの片開きドアを開ける。廊下のつきあたりにエレベーターの扉が見えたが、それには乗らず左側の階段へ向かう。非常口の看板灯だけの暗い階段を下りていく。
下りきった地下階は、1階と同じく狭い廊下があり、向かって左側に金属製のドアがひとつだけあった。・・・切れかかった蛍光灯がチカチカ点滅していた。
俺と園部は階段を2段上がった暗がりで作戦を練る。・・・ある程度決めて、あとは運にまかせるしかなかった。
「とにかく先手必勝だ、なりふり構わずにいこうぜ」園部はヒソヒソと話してるつもりだが、階段スペースに響いていた。
園部が廊下に下りて、玄関ドアを少し過ぎた壁にある『非常ベル』のボタンを押す。・・・途端にけたたましい音が廊下中に響き渡った。
すぐにドアの横に移動する。じきに部屋の中でゴトゴト気配がして、ロックが解かれグレーのドアが開いた。角刈りの背の高い男が左右を見回しているが、ドアの死角に隠れた園部に気づかない。
男は非常ベルに目をやりながら、玄関から廊下に踏み出す。・・・その瞬間、園部が鉄パイプを男の後頭部に叩きつける。不意打ちをくらった角刈りは両手で頭を抱え込みながらも、振り向こうとする。
園部は即座に2発目を振り下ろした。角刈りは呆気なくのびた。
俺は間髪入れずにドアを開けて部屋に侵入する。短い廊下の向こうにもう1枚ドアがあった。躊躇せずにドアに手をかけ開ける。・・・途端にナイフが飛んできた、俺の左頬すれすれを通過したナイフは、まっすぐに飛んで、ドアに衝突して金属音を立てた。
俺には怖気づいてる時間はない、ハンマーの柄を構えたまま室内に入ると、部屋の中央に坊主頭のやせた男が立っていた。鋭い目で睨みつけてくる。
その向こうにホクロの男が、事務椅子に逆向きにまたがっていた。部屋の中には事務机が2組あるだけで、あとは何もない。タバコの煙が天井近くに滞留し、室内は霧がかかったようになっている。
「なんだ貴様は、・・・うん?カズオと一緒にいたガキじゃねえか」ホクロの男は俺を認めると、唇をゆがめた。
坊主頭が懐からナイフを抜き出す、刃渡り20cmぐらいのボウイナイフと呼ばれるものだ。坊主は構えた。俺も柄を構えて足場をはかりながら、ジリジリと移動する。
(・・・!)不意に事務机の陰に、血だるまになり膨れあがったカズオの顔が視界に入った。・・・首から下が不自然によじれて倒れている。閉じた目に生気が感じられない。(・・・死んだ・・・カズオが)
・・・途端に、俺の背筋から激しい怒りと震えが駆け上がる。目に激しい憎悪の光が宿り、頭髪は逆立つような感覚が走る。
「うぉおおああー!」叫びながら、握りつぶすように振り上げた柄を、めくらめっぽうに振り回す。ぶんぶんと唸りながら暴れる柄を、坊主頭は的確にかわす。かわしざま振ったナイフは、俺の左腕をかすめた。
シャツがパックリと裂け、激痛が走った。一度はなれて構えなおす。傷口から流れる血は、左手首あたりまで滴り、ポトポトと落ちた。
坊主はニヤリと余裕の笑みを見せる。・・・俺が先に踏み出す、柄を振り下ろす。ヤツはふらりとかわし、踏み込んだ俺の右足を引っかけた。前のめりに倒れる。振り返った坊主は短い間を置くと、ナイフを逆手に持ちかえ振りかぶる。
・・・瞬間、轟音とともに坊主の右手首から上が炸裂した。トマトでも破裂したように何もなくなった手首は、血しぶきを上げた。一瞬呆然となった坊主は、やがて悲鳴を上げて転がりまわる。
・・・視界の隅でホクロが、懐の拳銃を出しかけているのが見えた。俺は倒れた姿勢のまま、尻ポケットからトカレフを抜き出し、スライドを引いて戻す。即座に狙いをつけて銃爪を引いた。
耳をつんざく発射音と硝煙の中、7.62mmの弾丸はホクロの右肘を貫通する。勢いでホクロの身体が右に回転した。
駆け込んできた園部は、坊主頭のアゴを蹴り砕き、ホクロの頬に強烈なストレートを叩きこんだ。
・・・俺は立ち上がり、カズオの屍に近づいていく。




