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転校生 ― 十代の衝動 ―  作者: 村松康弘
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『EJECT』の四角いボタンを押すと、ガチャンとテープを挿入する枠が上に飛び出す。テープを枠に差し入れて、押し下げる。

・・・俺は再生ボタンを押すのをためらった。悲しみに暮れて、アカシアの丘にひとり佇んでいた真奈美の姿が、頭をよぎったからだ。

「見た方がいい。・・・つらいけど見た方がいい」カズオは俺の気持ちを察して言った。

鴨島は開き直ったような表情で、ソッポを向いている。

再生する。・・・画像ノイズが消えると、黒い画面に白い文字で、『vol.12 長野市 真由美』と表記された映像が流れた。

「こいつは原版じゃねえ、編集されたものだ・・・」カズオが呟いた。

やがてホテルのドアが映り、暗い部屋に侵入していく様子が映しだされる。カメラの前に覆面の後頭部が映る。どうやら覆面レスラー用の、合成皮革のようなものだ。

部屋に明かりが点き、カメラのレンズはベッドに向く。・・・覆面の男は人型で膨らんだベッドの薄い布団を、勢いよくはぎ取る。

下着姿で眠っている真由美の全身があらわになった。すぐに目覚め、びっくりして目を丸くしている表情に、不可解さと恐怖の色が浮かんでいる。それはすぐに悲鳴に変わった。

両腕で身を隠す仕草で悲鳴を上げている真由美の頬を、覆面の男が張り飛ばす。うつぶせになった真由美は、悲鳴を上げたまま暴れる。

カメラは一度、家具かテーブルの上に置かれて、固定カメラのように動かなくなった。やがて画面の右側から、太った覆面の男がフレームインしてきた。

太った男は真由美を力まかせに押さえつける。ひとり目の男がズボンのポケットから手ぬぐいのような布を出し、激しく首を振って抵抗する真由美に、無理やり猿ぐつわを咬ませた。

男は下半身を押さえたまま、暴れる真由美の下着を引きちぎり取り去る。太った男が髪の毛をつかみ、頬に数発平手打ちをくらわす。・・・真由美は抵抗する気力をなくし、グッタリと仰向けになった。

・・・カメラはハンディ状態に戻り、ベッドに倒れ虚ろな目をしている全裸の真由美を、舐めまわすように映し出す。背後に下卑た笑い声が重なる。

ひとり目の男がパンツだけの姿になってフレームインしてきた。カメラワークは暴行を楽しむように局部を映し出す。


俺は両手を強く握りしめる、全身は怒りと悲しみで震える。こらえきれない涙が、次々と流れ落ちる。

「・・・もう無理だ、見れねえ」俺はカズオを振り向き言った。

沈痛な目をしたカズオが、「最後まで見よう。・・・落とし前をつけるために」呟いた。・・・本当につらかった、人生最大の苦しい時間だった。

ビデオは約1時間で終わった。・・・だがそれはほんの一部だろう。夜明けまで獣姦された真由美を思い、俺はまた涙が流れた。


ふて腐れたような顔をしている鴨島に向き直る。「お前みてえな腐れ外道が、なにが教師だ!その前に人間として生きる資格などねえ!」俺は怒鳴る。

「うるせえ!お前らにストレスだらけの教師のつらさがわかるのか!バカなガキどもにつきあって苦労して、そのバカ親に突き上げられてまた苦しむ。わかってたまるか!」

鴨島はテーブルの上の吸い殻がたまった灰皿を投げつけてきた。吸い殻が飛び散り、灰が舞い上がり、灰皿は俺の方へ飛んできた。俺はよけなかった。灰皿は左肩に衝突して落ちた。

素早く鴨島に近づいたカズオは、バタフライナイフを振り下ろす。鴨島の額と鼻がパックリと割れ、血が噴出す顔を押さえながら、声を上げてのたうち回った。

俺はバッグから石頭(せっとう)ハンマーを取り出す。石屋が庭石・墓石などの石を加工する時に使う、頭が四角い重量のあるハンマーだ。

箱から出した12本のテープとビデオカメラをキッチンのテーブルの上に載せる。テープを片っ端から叩き潰す、粉々になるまで叩き潰す。グシャグシャに広がったテープは引きちぎる。

ビデオカメラも同様に叩き潰す。足元にはプラスチックやガラスや電子部品の破片が、あたり構わず散乱した。

カズオが喚いている鴨島の喉元にナイフを当てる。「これ以上騒いだら、殺す」鴨島は呻きながらも動きを止めた。

「ビデオの原版はどこだ?」カズオは押し殺した声で聞いた。鴨島は血まみれ顔の右目だけ開けて、「し、知らねえ」と答えた。

「死にてえんだな」ナイフは鴨島の肥えた首筋を浅く切る。血の玉がプツプツと浮かびあがった。

「・・・兄貴のところだ、そこに全部ある」


俺は石頭を持ったままキッチンからリビングに行く。怒りは頂点を迎えていて、むしろ冷静になっている。

「こんな野郎は、一生チョークなど持つ必要はねえ」カズオは察し、鴨島の血まみれの右腕をテーブルの上に載せて押さえつける。

「な、なにをする気だ!はなせ!」鴨島は地獄の形相で喚く。

「やめてくれ!俺には女房も子供も家の借金もある!俺の人生が台なしになる!」なおも鴨島は必死で喚く。

「自分の行為を省みず、よくもそんなことが言えたもんだな・・・」俺は掌の汗をジーンズでふき、石頭を握りなおす。

鴨島は必死で懇願してるが、聞く耳もなければ、言葉も聞こえない。

ヤツの右手の甲に石頭を振り下ろす、骨が砕ける感触が手にも伝わる。鴨島はひと声吼えて気絶した。

甲の骨を砕き終わると、親指から順々に叩き潰す。・・・それは工作機械が淡々と作動するのと何ら変わらない。


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