九話 受難の真実
今、ナディスはペンになってもらってるから気づいてないと思うけど…
なんで謙二君にも死神がいるの!?一般人にも契約した人は多いのだろうかしら
「どうしたの?」
!?
けど、私に死神がいることが分かってないんだ。 どう接したらいいのか分からないよ……
「具合悪いの?」心配そうな顔でこちらを見ている
「 い、いやなんでも、ないよ」
「じゃ、早くいこうよ!あっちに美味しいカフェがあるんだ。」
謙二君も初めての機会であろう雰囲気を醸し出している。そして、コソコソと、私にバレないように死神と何かを話している。
私は決心した。迷っていてもきりがないし、いずれかは、ナディスのこともバレるだろうし
「あ、あの謙二くん」歩きだそうとしている謙二を呼び止める
「ん?何?」
「実は、私にも、そこにいる死神。みえてるんだ…」
少しの静けさが私達を包む
「えーーーーーー??????」
「ごめんね。隠すつもりは無かったんだけど、言い出すタイミングがなくて、」
「な、なんで見えるの?霊感が強いの?それとも……」
「うん。契約してるんだ。こいつと」
そういい、私は「これ」といいつつカバンから例のペンをだし、そこからナディスを放った。ペンがシュルリと姿を変え、髑髏の顔がよく映える格好になった。
「ナディスっていう死神なんだ。そっちのは?」
「え、あ、こいつはカディシ。やーまさか琴華ちゃんも契約者だったとは」戸惑っているように見える
「こいつとは、種類が違うけどな」
なぜだか、ナディスが気まずそうな顔をしている。逆にあちらの死神はなるほどと言う顔をしている
「その子が例の契約者か。まさかこいつの恋愛対象だったとは」
「そっちこそ。あんだけ言ってたのに、自分だってこっちの世界にきてるじゃん!」
訳の分からない争いが始まった。ていうか、その前に
「2人共、知り合いなの?」
「ちょっとね。」
「死神界でな。」
二人(?)とも息のピッタリ合った回答をした。
ふと見渡すと、立ちどまって喋っているのに気づいて、周りの人に変に見られるのに気づいた。変に注目されるのは嫌なので、ゆっくり先頭をきり、歩き出した
「そういえば、こうやって話てるのって、他の人から見たら」
「それは大丈―――」
「大丈夫だ。ここは、俺とあいつの魂の空間内だ。外部からの影響はないし、お前達がカフェへ行こうが、ホテルへ行こうが、問題なく過ごせるだろう。」
そうなんだー。と、最初は聞き流したが、謙二が赤くなっているのを見てホテルという言葉を思いだし、耳が熱くなった。あと、ナディスが華麗にスル―されていた
気が付いたら、駅から少し入ったところの裏路地にいた。人通りは無く、太陽の光もあまり入らない。私と謙二君が並んで歩き、その後ろに死神が浮いて憑いてきている。そんな時だった。
?「まさか。本当に報告通りだったとは。」
その声は、前からでも後ろからでもなかった。私達全員が上を向いた。路地裏のはずなの陽光が差し込んできている。すると、そのボロ切れのようなコートを着た少年(少女?)がスッと降り、音もなく足を地面に着けた。
「お前は誰だ。なんでここにいる!」
「どうやって魂の空間内に入ってきたの?」
どうやら、魂の空間内に他者が入り込むのは異常なことらしい
謙二君とその死神が私たちの前に出て、好戦的に話をかけていると、その少年はコートから顔を出した。一般的にいる小学生の平均より、少し目鼻が整っているような、可愛げな少年だった。
「まあ、落ち着いて素直に私の事を聞いて下さい。手荒な真似をしたくはありません」
突然な要求にどう対応するべきなのか。少しざわめいた。
「せめて、名前とどこから来たか名乗って貰おうか」
「そうですね。しかし私には名前がありません。どこから来たかと言えば、私は、生と死の狭間から来ました。この世界でいう、無と言える場所です」
「!?」
謎の少年と謙二君達が話をしている間―――
「ここはスルーした方がいいんじゃないかな?なんだか危ない気がするよ」不安げな顔をしてナディス言う
「でも、逃げてもダメだと思うの。逃げ続けてたって、そんなのはただの後回しだよ。悩んでも苦しくても、辛くても、乗り越えてきたからこそ得られるものがあるんだから。昔の人達だってそうだったんだよ」
「そうかぁ……」
納得したように言う。そして私は謙二君の肩をポンと叩いた
「謙二君。ひとまず、この人の話を聞いて見ようよ。」
「え」
「そうですね。賢明な判断です。」爽やかな笑顔を見せた。
「言っとくけど、おまえを安全だって認めたわけじゃないからな。」
「はい」と少年が返事をする姿が目に映らないくらい、その時の謙二君はかっこよく見えた。
そうしてしぶしぶ私達+無は予定していたカフェへ行き、窓側のテーブル席(4人席。私の隣は謙二君。向かいは無。死神達は浮かんでる)に座った。
「早速、本題に入りましょう。私つまり、無というのは相反するものの間に必ず存在し、両方のバランスを保っています。そして…」
「ちょっといいですか?」ナディスが口を挟む
「なんですか。」
「無ってつまり、何もないことだよね。なのに、なんであるの?」
「愚問ですね。無いことで発生する空間こそ、無じゃないですか。」
強い口調で言われたが、無以外誰一人と理解できている様子はなく、ナディスはそうですねと言って、引き下がってしまった。
「なので、先ほど……」
「はい!」今度は私が手を挙げた
「なんでしょうか。いちいち話の腰を折らないで下さい。」
「名前がないのは可哀想なので、うーん……そうだ。ムーちゃんはどう?」
「自由に呼んで下さい。」
「分かったわ。」意外と良い人っぽくてよかった
「それでですね。この世界に来たわけは、いや、原因はあなた達に責任があるのです」
私と謙二君が動揺する。やはり契約はよくなかったのか
「順を追って、説明しましょう。まず、神界と死神界とは水と油。つまり、先ほど申しました通り、間に界面があるように無があるわけです。私はそこから来ました。何故かというと」
「2つの世界のバランスが、とれてないということか」カディシが分かった様な口調で答えた
「そういうことです。そして先日、理由が判明しました」
妙な空気が感じ取れる。窓の外の人通りが、関係ないといえど、こちらを見ているようだ。
「死神がこの世界で神界のものと、接触したという事でした。先程の例で例えるなら、なんらかの理由により乳化剤のようなものが出来てしまったと」
て、ことは…
「検討がついてると思われますが、あなたがたお二方は人間ではなく、女神と天使です。」
そう、私と謙二君はムーちゃんに指を差された。けれど理解が出来ない。自分がいきなり人間じゃないと言われる感覚が、現状が。神様としての記憶がない以上、じゃあ、今まで生きてきた思い出は何だったの?お母さんとお父さんも神様だったの!?頭の中がカオスする
「動揺してると思われますが、すべて本当です。本来ならあなた達『運命の女神』と『記憶の天使』は神界の記憶を一時的に消去し、人間界を視察するという仕事だったのです。しかし、死神が乱入したことで、事態は混乱を極めました」
もう、私達には聞くことしか出来なかった。隣では、ナディスが困ったように首を曲げていた
「本来なら、一般的な人間なら死神からかかる負荷に耐えられるハズがないのです。それなのに。因果というよりは『運命の女神』の力が働いたのでしょうか。あなた達と死神がそれぞれ異なれど、契約を交わしている」
誰一人と口を開かないのでムーちゃんが続けた
「私も、この状況は信じ難いものでした。が、本当のようですね。なのであなた達は、これから私の命令をすべて聞いて貰います」
いいですね。と確認をとって返事をしたのは、死神だけだった
私、謙二君は共に黙り込むしか出来なかった。今までの辛いことも楽しいことも、全部視察のため。今、こうしてるのは視察?分からない。もう、何が何やら
「僭越ながら、計画を立てました。まず、私と死神達は死神界に行き、契約破棄の言い付けを聞いて貰います。その間、あなた達は私が指定する場所で、何もしないで下さい。その後、私が戻って来たら『記憶の天使』さん」
「あ、はい。俺の…ことですよね。」謙二君が曖昧に答える。
「はい。あなたが持っている記憶の力を使い、強制的に神界の記憶を取り戻します。いいですね」
ただただ頷いてるのが分かる。暴れて殴りたい。泣いてタダをこねたい。せめて最後にお別れを言いたい。だけど自分の要望も通されない今、出来ることは、従う。それだけ
その後ムーちゃんは死神と共に何処かへ消えた。ホテルのキーを置いて。ムーちゃん曰く、人目のつかない場所に居て欲しかったらしい
「どうするの。どうしたらいいのか分からないよ。あんまりだよ。なんで記憶なんか消しちゃったんだろう。そうしたらこんな悲しい思いしなくていいのに」
眼の奥が熱くなる。呼吸が乱れて、今すぐ泣いてしまいそうだ。
「とりあえずはホテルに入って落ち着こう」
「うん……」




