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死神に生を語る  作者: 惷霞 愁灯
8/11

八話 疑惑の日常


琴華の初めての仕事の同時刻―――――



死神界。


そこには、死神の10倍にもなる大きな椅子に腰掛ける死神大王の姿があった。鎮座ましましているそれにナディスは深々と頭を下げていた。


「貴様!何故仕事をこなさない!禁錮の刑300年に処すぞ!」


「す、すみませんっっっ!」



他の死神がクスクス笑う中、ナディスだけは叱られていた。気にしたくはないが、悲しくなる。


「貴様。あちらの世界で何をしていた。人殺しでもしていたのか?そんなことをもし、してみたとしろ!ただじゃおかんぞ!」


「そんな事してません」


「では、何をしていた?」


「と、とある人間と・・・・・」


辺りがやけに静かになる。みんなが聞き耳を立てていると考えられる。余計に居ずらくなる。


「し、死神契約6条を交わしていました!」


僅かな沈黙がはしる


「6条…」


少しの沈黙の後、何やら怪しげに、近くにいた死神大臣と話始めた。


「貴様。下がってよいぞ」


「? はぁ…」


これ以上なにか言うと、また叱られそうだったので、素直に身を引いた。何があったんだろう。そんなにダメだったのかな?契約6条が、そんなにいけないことだったのかな? やだなぁ。磔にされるのだけは…




数十分後―――


「貴様。人間界に帰ってよいぞ」


「あ、ありがとうございます」



さっきの出来事に疑問を持ちながらも、琴華のもとへ向かおうと思った。丁度その時、友人カディシが話かけてきた。


「なあ、お前人間界で何してんのよ!死人運び以外って、やることなくね?」


「本当はないけど、僕は人間と契約を結んだからね。色々あるよ…」


「契約…。お前が人間と話す時って、媒体って何にしてんの?」


「前はペンに宿ってたけど、今は琴華ちゃんっていう人間だよ。」


「やっぱりか…」


「どうかしたの?」


「いや、普通、俺達の魂分の隙間が人間の器・・・つまり、人間には俺達を維持できるだけの能力は備わってないんだよ!」


「え?」




人間界に着いて、魂の空間が解けてるのに気付いた。つまり、対象の人間が逝ったということなんだ。僕はすぐに琴華ちゃんの所へ向かった。





「琴華ちゃん………」


「…………」


「気に病むことはないよ。なにぶん初めてだったんだし…」


「わたし…今まで、あなたのこと、どこかバカにしてた。なんでそんなんでクヨクヨしてんだって。でも、本当ね…自分の無力さをかんじる」


「分かってくれたのは嬉しいよ…。でも、僕は死神。君は人間。君の運命は君自身で変えられるハズだよ。」


少しでも元気づけてあげたかった。けど、いい言葉が出なかった。


「でも、これも一期一会だよ。」


「もうやだ!こんな事、二度としたくない!!」


嗚咽をもらしながら、泣く琴華ちゃんを黙って見てはいられなかった。


「琴華ち」


「なんで! もう…なんで。  あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ。」


これは、琴華ちゃんの心叫び声なんだろうか。本当のきもち。


「立ち直ってよ。あの時、出会って教えてくれた、立ち向かい、恐れず前に進むこと」


「・・・」


「僕は、忘れないよ」



「ありがとう。ナディス」


この時見せた笑顔が、1ヶ月後見れなくなるなんて。思ってもみなかった。


―――――


少ししてまた、変わらない日常がやってきた。(普通じゃないけど)あれからは二人で、仮死人を説得したり、たまには死神界に運んだりしている。たまには辛いこともある。でも、それでも。なんとか二人でこなしていった。




「最近、死人が少なくなってきてるね。僕、嬉しいよ!」


「当たり前でしょ。私が説得してるんだから」


「で、どう?謙二君とは?」


「う、うるっさいわね!」


魂の空間が解けた後、数日経ったある日、この前事件時、時系列のせいであやふやになっていた謙二との交際を認めたんだ。だから二人は、この世界て言う…

リア充?みたいな関係なんだ。


「聞こえてるわよ!ナディス!」


…そう。死神契約6条(この契約を交わした者は、魂の器を半分を引き渡すと同時に、死神代行人として相応の力を手に入れる。)を交わした琴華ちゃんは、普通の人間には成し得ない芸当ができる。あの橋の事件。焦ってまで契約を交わしたのは、川に激突しないために、身体能力を上げたかったからなんだ。今みたいに人の心の声を聴いたり、魂の結界を張れたり……

ただ、琴華ちゃんにはこの力が、どうも性分に合わないらしい。だけど、本当の所、人間離れするのが怖いらしいんだ。なので、今こうしている間の心の声は琴華ちゃんには聞こえてないんだ。



でも、、、

どうやって器の半分を与える隙間があるんだろうか・・・。

そういう謎は、まだ解けてない。




数日後―――――



ある日、僕(僕達)は某駅に向かった。僕達が住んでる家の近くの駅から2駅離れた場所。そこで、琴華ちゃんと謙二君がデートをするらしい。


「ねぇナディス!こっちの服と、こっちの服。どっちがいい?」


「………こっち?」


「だよねぇ、でもこっちも捨てがたいし…...」


じゃあ聞くなよ!とも思いつつ、女の子って、いや、人間って大変だな~。僕達死神には服なんて、ましてや虫歯然り、睡魔、お風呂、基本的な欲などが、無いし。と、思っていた。



電車の中―――



「ナディス。聞いてる?」


「なに?」


「この前、私と謙二君と、二人で下校したときね」


「のろけ話?」


「違うよ。その時の不思議な話よ」


「不思議な話?」


「そう。あの時、二人で帰ってる時、転んでる子供がいたのよ。その時、謙二君が近寄ってたのよ」


「カッコいいね。」


「そうね~… って違うよ!! いや、まぁカッコいいけど。その子、怪我してて。そしたら」


「そしたら?」


「謙二君が、その子の怪我を、なおしたの!」


「えええ!?」



電車の中ということをすっかり忘れていた僕は、上下に揺れる車体の中で大声をあげてしまった。ただし、前回と同じく、魂の空間内なので、車内で響くことはなかった。


――――――――

某駅のロータリーにて

「お前をみたら、びっくりするぞ」


「びっくりですむのか?」


「そん時は…そん時だ!」


「……そうか」




待ち合わせの場所に来た僕達は、多分。謙二君が予想したのとは、同じようで違う意味で、腰を抜かした。


そこにいたのは、死神カディシだった。



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