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第八話

ハロルは村潰しシバの討伐に参加する事を両親に許しを得る。ヲルオテュクはハロルを止めた。

ヲルオテュクの心配をよそにハロルはハンバー家の使用人スワイハントン家に足を運んだ。

奈落から出たここは陸地と川が半々に広がっている。陸地の所々に水溜りができ、小さな花々が咲いていた。

人の気配が全く感じず聖地に近い場所でもあった。

「昔話ではここを見本として描かれている事が多いと聞いてますな」

「ここってさ、奈落に近い場所だろ?聖地と言うよりあっちよりだぜ」とナポリ。

「心が奪われるからこそ、あの世に近いと言われてる考え方かしらね。景色に見惚れて敵に気付けない。死ぬんじゃないよ、て事だわ」メルフィーナは口ではそう言うものの自然と触れ合っていた。

リジンは後ろで談話をする赤き翼を見た。「たまには、花を見るのも悪かぁねえな」エリゼルドに会話をふる。

エリゼルドはずっと正面を見て歩き続けていた。その歩幅は大きく速い。

水溜りにつまずきながらもエリゼルドの歩行についていくベベル。話すよりついていく事が精一杯だ。ナポリ達と離れる距離が長くなっていく。


どさ。「珍しいわね。あなたもつまずくなんて」メルフィーナは転けたアヴィの元へ行く。

「エリゼルド!」メルフィーナは遠くに居るエリゼルドを呼んだ。エリゼルド達は振り返る。エリゼルドの表情はいつもと違って冷たい。

ルフェリトロール、ナポリもアヴィ達が居る所へ近付いた。

「もしかして…」ルフェリトロールは頬が赤くなり息をあげるアヴィを診る。ナポリも症状を見る為顔を覗き込んだ。

急に隣から人影が現れ滑って転けるナポリをエリゼルドが背中を支えた。「気をつけて」と言う。

その姿に赤き翼は安心感を出す。奈落の一件からエリゼルドの様子が違う。


エリゼルドはアヴィの顔を見る。「ごめん、僕が居ながら」と表情が暗い。

アヴィは笑う。大丈夫と声が出ていなかった。「本当にごめん…」と何度も謝るエリゼルドに「大袈裟だな。休めば治る」と小声だがアヴィは笑って話した。

エリトの表情を見ていたベベルは(自分のせいにしてるんだよぉ)とアヴィに訴える。

(だから、ずぅと謝るんだよぉ。エリ君は)ベベルもエリゼルドも負の心を宿らせていた。


左側にある道に行くと休憩に使える場所を見つけたリジンは赤き翼を呼ぶ。エリゼルドはアヴィを抱えその場所に休ませた。

すぅと息を吐くアヴィ。虚ろげな瞳が赤き翼の行為を止める。

「今、言うことではないけど…女性である私でも彼女は綺麗な人だと思うわ」

アヴィの表情は目を奪われる程の美しさが出ていた。

「馬鹿なの」と笑う。「ここの空気は身体に合うみたい」と続けて話すアヴィは立とうとした。

「まだ休まないと行けないよ。道のりは長い。今夜はここで泊まろう。君たちもいい?」とアヴィを座らせ赤き翼にも伝えるエリト。

赤き翼は夜に備えて準備に取り掛かった。


赤き翼は夕食の用意をする。アヴィは崖から見える海と太陽を見ていた。

「あの子後ろから見ても綺麗な人ね」メルフィーナは景色を眺めるアヴィを見る。

「だな。隠しとおせねぇくらいの美人さんだ。体調わりぃせいか、更に色っぺえ」リジンは捕まえた鳥を焼きながら言う。

「変わりましたな」

「何が?」とナポリ。

「感じませんか?彼女…私ですらも氣を読み取れます。かなりの大物でしょうな」

リジン、メルフィーナは黙る。この付近に流れる氣はアヴィが作りあげたもの。魔物の侵入を防いでいた。


「おっ?お出ましだな」とリジンは箸でアヴィの方向を指す。

アヴィの肩に触れ「座りなよ」とエリトが勧めた。「ありがとう」アヴィもエリトの隣に座る。

吹く風が心地よい。エリゼルドは「疲れてるのに君はぬかりないね。結界張らなくても踏み込まない場所だと思うけど」アヴィの流れる氣に触れる。

アヴィの不安げな表情にエリトは驚いていた。

腕を持ち震えを抑えていた。エリトは左耳のイヤリングを触る。「このせいだよね…」

黙っているアヴィにエリゼルドは怒っていた。


「リグゥウアウンも気にしてたけど…アヴィ、君何か隠してるだろ。君自身のことなら黙ってない。違う理由なら話すまで待つ。

…忠告したからね」

エリゼルドは真剣な眼差しでアヴィを見た。アヴィは目を合わせることができない。

ちりと胸の痛みがあるアヴィ。

「ここの毒に侵されたのさ。神通力を持つ者しかあたらないからね」アヴィに冷たくあたるエリゼルド。下を向いて溢れそうな眼差しをするアヴィ。

「そんなに頼りにならないかな。僕は」エリゼルドはその場から立ち去ろうとする。アヴィはエリトを止めた。

エリゼルドは腰をおろし「そこまでするのなら僕も黙っていられない」とアヴィの左手首を持つ。


ガシャシャーン、赤き翼が見る。皿を落とし出来上がっていたおかずが地面に落ちていた。「ずみまぜん」とナポリ。エリゼルドは下を向いて後ろ首に手をやる。溜め息をついた。

「行こう」とアヴィを誘うエリゼルド。立ち上がるエリゼルドの腰付近の服を掴み「待って」

「…待って」とアヴィが再度言った。小さく息を吐き「何」とエリトは言う。

アヴィはエリトを見る。微かに怒りをあらわにするエリゼルドにアヴィは手を離した。

エリゼルドはアヴィの肩に触れる。アヴィはエリトの心配そうな表情を見て口を開けた。


「私、シバなの」


赤き翼はそれぞれの反応を示す。エリゼルドの答えに赤き翼は黙った。アヴィもエリトを見る。

エリゼルドは笑う。

「うん。なんとなく気づいてた。

それが君が抱えてる悩みなら問題ない。何をしようとも受け止める」

エリゼルドの言葉に引っ掛かったのはベベルだった。(何をしようとも受け止める)

「それがぁ、悪いことでも?」とベベルが声を出した。「うん。あの時に誓ったんだ。アヴィについていくこと」エリゼルドは優しい笑顔でベベルに話した。

「それは止めないと」とアヴィ。

「はは、まあ、考えあってのことだろうし。それに君は一人行動する所あるから。先回りして状況掴むことも使用人の仕事さ」

「それ必要?」アヴィは拗ねて言う。

「君の為」

エリトはアヴィの間近で話した。にこと笑うエリゼルド。「そう言っても分かってくれないだろ、君は」笑って言うエリト。

「気にせず、これからも護らせて」アヴィに告げエリゼルドは「夕食にしよう」と赤き翼に言った。


エリトの後ろ姿を見る。何故か涙が流れていた。視線を外したアヴィは太陽を見る。沈む太陽がアヴィ達を照らす。アヴィはゆっくりと振り返りテーブルのある方に向かった。

アヴィの口が開く。

沈む太陽の光はオレンジ色だった。オレンジ色が温かく赤き翼が笑って出迎えてくれる。エリゼルドはアヴィに手を差し伸べる。アヴィはエリゼルドの手を取った。


朝の太陽はガンガンに光っている。アヴィは太陽を見ては目を細めた。

「頑張りすぎはよくない」とアヴィは太陽に言う。

「これだけ晴れていたら毒も発症しないかもね」エリトの声がした。エリゼルドと目が合うが返事をせずにエリトを通り過ぎる。

エリゼルドはアヴィを抱えた。「離して」アヴィは身体を動かす。

「君の歩幅に合わせると今日中に着かない」毒が発症してなくても地理上完全に消えてはいない。体力が奪われている今エリゼルドはアヴィを背負う。「ごめん」と素直にエリゼルドの肩に顔をのせた。「うん」

二人は先に行った赤き翼を追う。


リジン達は少しでもはやくこの場所から抜けれるよう下調べをしていた。小さな集落があり、そこを通ると出入り口に繋がると集落の村人から情報を貰う。エリゼルド達と合流したリジン達は集落について話した。

「そう。道だけ借りよう」最低限度の関わりを選ぶエリゼルド。アヴィの体力が徐々に奪われていた。

「寝てていいからね」

「ん…大丈夫」とアヴィ。

アヴィの額に汗が出ている。エリゼルドは急いだ。


名もなき集落

もう一つの出入り口には街があると村人は言う。アヴィを休めるのに丁度良い。集落を見ずに出入り口だけを目指す。出入り口付近に3mの石像が立っていた。石像は祈りを捧げる現人神に似ている。剣や刀が複数の武器が上半身に刺さっていた。その武器は怒りを表しているかのように同じ場所を狙っている。

「むごいな」リジンも現人神が裁かれているようにしか見えなかった。


「エリト、おろして」とアヴィ。「今の君の言うことは聞けない」とエリゼルドは立ち止まる事を嫌がる。「オルハが居る。石像に近付いたらいけない」

赤き翼はアヴィの言葉を聞いて周囲を警戒する。背中合わせをし輪を作る。姿はないが、何処かしらの気配が赤き翼を通りすぎた。

「因みに風魔法が得意。刀を使う。…かの」アヴィは咳をする。「いい。説明は充分。アヴィ、悪いけど君の力がいる」

エリゼルドの言葉にアヴィは唱える。「風薫る、緑子よ。御霊よりこの地に息吹を」アヴィの身体が緑色に光った後、アヴィから様々な角度で緑の線が地面を削る。地面に模様が浮かんだ。発動後集落全体を包み込む。パシと空間が鳴った。赤き翼付近で走っていたオルハの姿が現れる。

「居たあ‼︎」とナポリが大声を出す。オルハは消え石像の前に立った。

息切れをするアヴィに「ごめん、無理させて。辛かったね」とエリゼルド。首を振るうアヴィ。

戦闘が免れないと感じたエリゼルドは被害を拡大しないよう空間を集落だけに留めるようアヴィにお願いしたのだ。創られた空間の為、オルハは弾かれ姿を現すことしか出来なかった。「アヴィ」とオルハ。


「見る目ある方なんだけど」

「アヴィは変なのにつきまとわれやすいから」

「つぅか、嬢ちゃん。どんだけ能力あんだよ」

「凄いですね。私達が居る集落だけを切り取るのですか」

創られた空間以外の外は紫、桃色が混ざった景色に包まれていた。ぽつんと四角い置物が置かれている中に居る感覚。

「体が軽いわ」メルフィーナ達の身体のラインに緑色が光る。地面に触れる面は地面を丸型の緑色がつき動いた分だけ地面に水玉模様を作っていた。

「ここに居る全員が風属性、つまりは同じだからこそ能力も一緒。赤きもオルハ相手に何とかなるよ」エリゼルドからおろして貰ったアヴィ。エリトの支えがないと立てれないが、今迄よりは体調が良い。

「アヴィさん」とルフェリトロールが心配する。エリゼルドはルフェリトロールを見た。

「大丈夫。毒は木や風魔法が多いから、耐性が高くなる。オルハもシバの一員。ホイーク達と強さは変わらない。怠けてると死ぬよ」

アヴィはオルハを睨んだ。「決別だな」とオルハは言う。


アヴィは魔法札を出す。オルハは石像に刺さっている剣を抜く。「ぇえーー!とれんの⁈」ナポリが驚く。

「いい反応ね。石像の彼女、武器だから。現人神と一緒にしないで」とアヴィ。3mの石像を見る赤き翼。「もしかしてぇ、動くう?」とベベル。

「レーシェ、期待に応えてやろうや」オルハが合図すると石像の女性は目を開け刺さっていた複数の武器は羽のように広げる。

「じゃあ、始めようか?」

オルハは笑った。


オルハはレーシェからもう一本刀を貰い、エリゼルドの前に刀を捨てた。

「ガーゼレビアなんだってな?刀の達人らしいが、何処まで、か俺が見てやるよ」

エリゼルドは刀を拾う。「風か…使い方が変わる。お手柔らかに願いたいね」

エリトはスイッチを外す。「隠してんだな」とオルハ。「こっちもマジになんないと危ないか。

アヴィ、やるじゃん」

「何が」アヴィは不機嫌に言う。

オルハは笑う。「お前って自分の美貌に疎くて鈍感だよな?ましてや候補生がシバの一員になるか?変わってるよ、お前」

「知っていてアヴィに手伝わせたんだね。

何が目的でシバに居たのかまだ教えてもらってないけど」徐々に口調が強くなるエリゼルド。

「今、怒る時違うから。二人とも会話多くない。敵だよね?」と空間の影響により一人で立てれたアヴィは言う。

「お前が言うのおかしいだろ?」

「右と同じだね」

「…仲良くなった?」と苦笑いするアヴィ。

「アヴィ繋がりで話してるだけ」

「ああ、お前がよく話すガーゼレビアだからどんな奴か知りたかったんだよ」

「あーーー‼︎」ナポリが二人を指す。エリゼルドとオルハはナポリを見た。

「ナポリ!」ベベルはナポリを黙らす。リハル姉弟を見たオルハは「隊長ってのも大変だな」とエリゼルドに言う。

「まあ、ある意味怖いものなしだね」

「やっぱり仲良くない?」とアヴィ。


二人の態度にアヴィが口を開ける。ふっと全員の身体が歪んだ。赤き翼は吐き気を伴う。

「あんなんでよく俺ら追ってるよな」オルハは赤き翼を見ていた。

「まあ、シバの強さを把握しなかった僕が悪いね」とエリト。

空間を戻したアヴィは力が抜ける。「アヴィ」二人から手首を左右それぞれ持たれるアヴィは「体勢がきついからおろして」

二人はアヴィを座らせた。


「戦う、戦わない」ナポリは言う。

「もぅ、戦わない方がいいんだよぉ?」

「あんたらと戦うつもりなかったけど、お前とは一戦交えたかった」とオルハ。

「いずれ倒しにいくから、ここで争わなかったこと後悔しないように」いつの間にか氣を隠していたエリトが言う。

「…」アヴィは何かに気付いた。アヴィは残っている力を振り絞って立つ。アヴィは結界を張る途中に砕け、腹部から血が流れていた。

かはと口から血が出る。エリトがアヴィを抱き抱えた。


「流石ですね〜。次期女神様と言われてるだけありますよ、アヴィさん?」

「何しに来た、ホイーク」

「オルハもギリギリだ。お話があるようでね、参ろうか」ホイークはお辞儀をし直ぐに消えた。エリトの眼から涙が滲む。

「…シバの情報が欲しけりゃあ、くれてやる。こいつと一緒で情報屋だ。ここから出て右に行け。街でアヴィを休ませろ。次の神と言われてるんだろ?アヴィは死なね」オルハも言い残し消えた。


赤き翼はエリゼルド達の元に行く。「近付くな」とエリゼルド。「エリゼルド、まずは手当てをしないと出血が凄いわ」

「下手に治療した方が危ないよ」左耳飾りを取ろうとするが外れない。「ッ」エリゼルドは応急処置をする。メルフィーナは安堵した。アヴィを抱えるエリゼルドは刺激をあたえないように小走りで街に行く。


ジーダ・モノムスヤワニキト街

宿屋の客室をとるエリゼルド。「エリゼルドって、違うだろ。病院に行かねえと」リジンがエリゼルドの肩を強く引く。「居る事が分かれば狙われる。こんな状態だったら助けれない」

赤き翼は治療道具を揃えた後、街等の状況把握を行う。


エリゼルドは再度アヴィの左耳飾りを取る。

「外れないねぇ」不思議そうにベベルが言った。

「うん。魔法か何か掛かってるね。ベル、悪いけど新しい水に変えてきて」ベベルは器を持って部屋から出る。掌に氣を溜めアヴィの掌に送るが、壁らしきものにぶつかって身体中に行き届かない。

原因は耳飾りだと分かっていたエリゼルド。だが耳飾りが外れない。氣を送り続けなければアヴィももたない。焦るエリト。

「はぁああ」と溜め息が漏れる。氣を送るエリゼルドの身体にも疲労が溜まっていく。


水を運んできたベベルが「エリ君、少し休もうよー」と言うが、まだ安定していないままやめるとアヴィの生命が危なくなる。

「問題ないよ。それより」虚ろ気味のエリゼルドはベベルにある事を頼んだ。頷くベベルは走って言われた場所に行く。


「大丈夫」一呼吸して「大丈夫…」とエリトは自分に言い聞かせていた。アヴィの左目から一粒の涙が出る。「泣きたくなるのは僕だよ」と涙を指で拭う。

赤き翼は宿屋に戻りエリゼルドに報告をした。「そう。アヴィが回復するまでここを拠点にする。メルフ、宿屋と話しつけて来て」メルフィーナは部屋から出た。

「エリゼルド、休め」リジンはエリゼルドの肩に手をのせる。

「隊長が倒れたらアヴィさんも悲しみますよ」

「まずはさ、腹ごしらえだぜ」

エリゼルドを休ませようとするが聞く耳を持たない。メルフィーナとベベルが帰って来た。エリゼルドはベベル達を見る。

二人の報告を受け取ったエリゼルドは平常心を取り戻した。


エリゼルドはそのまま眠っていた。

「ゔっ、は、あッ」

アヴィの唸り声で目を覚ますエリゼルド。

「アヴィ」汗の流れが尋常ではないアヴィに氣を送る。

すうとアヴィは一度口を開け落ち着いた。エリトも落ち着く。こけている顔が看病の長さを教える。1日がまた過ぎようとしていた。


「エリ君」蓄積した疲労でやつれ果てたエリゼルドにベベルが怒り出す。「エリ君!そんなにアヴィさん大事ぃ?エリ君も大事にしてよぉ‼︎」と叫んだ。

エリゼルドは首を傾げながら上目でベベルに言う。「僕より大事」

微かに客室内に入る太陽の陽射しがエリトを照らす。その答えが正解だと言うように。笑うエリゼルドを見たベベルは何も言えなかった。

あの時の笑顔を思い出したからだ。

「まあ、いつまで僕がもつかな」とベッドに肘をつけた腕に顔をあてアヴィを見て笑う。

「だから、はやく答えて」とアヴィの左手を握った。

ベベルは自分の洋服を握り締める。自分の言葉が届かない、どうにかしたいけど分からないことに腹を立てる。


廊下から足音が聞こえる。「アヴィ!」

荒い息で心配する少年がベベルを通り過ぎた。

「はは、僕は?」拳と拳を突き合わせ挨拶する。「はあ、あ?急いで用意した身にもなれよっ。ほら」

ハロルは薬をエリゼルドに渡す。

「君、錠剤は無理あるよね。ベル、液状にして貰える?」「は、はいっ」パタパタとベベルは厨房に向かった。

「エリの分」ハロルはエリゼルドにも薬を渡す。「目覚ましてそれだったら心配する。頼んでないとか言ってそう」とハロル。

エリゼルドが薬を飲んでいる間、ハロルはアヴィの手を持つ。エリトは目を逸らした。


ハロルが持って来た薬を飲み顔色がよくなるアヴィ。念の為にエリゼルドも氣を送る。

目を覚ました頃には回復する。赤き翼は漸くアヴィが居る客室に出入りができた。

「へえ、閉じこもりの看病かよ。お疲れ」

「ベベルのお使いはハロルを呼ぶ事だったんだな?」とリジン。「遅くなったけんど」

「姉ちゃん、怖かったぜ。アヴィの姉ちゃんの見張り役してったんだ」とナポリ。「どうせエリが止めたんだろ?」

「間に合って良かったわ」

「これ以上続いてたらエリ君…」とベベル。「心配しなくともエリ、頑丈だからぶっ倒れない」

「はは、言ってくれるね」

ルフェリトロールは黙ってアヴィを見る。

「ありがとう。薬飲んでるから問題ないよ」とエリゼルド。

「ええ」

エリゼルドは小声で「分かってるよね?」とルフェリトロールに言う。二人は目が合う。「アヴィ」を呼ぶ赤き翼の声がした。

身構えてたエリトは座る。ルフェリトロールは息を吐いた。


「…ごめんね」謝るアヴィは一人で起き上がる事が出来ない。ハロルがアヴィを起こす。ハロルにもたれかかり手を繋ぐ二人を見て不快になるエリゼルド。赤き翼は声を掛けアヴィを励ました。

「どうしてそんな端に居るのかな」とその場所から動かないエリゼルドに向けてアヴィは言う。

エリトは真っ直ぐベッドに近付いた。アヴィは膝をベッドにつき手を枕元に置く。エリトとの距離を縮めた。エリトの頬に手をやる。「触るな」とエリト。

圧を出したエリゼルドに驚く赤き翼。

一度手を止めるが、アヴィはエリトの左頬を触る。何も言わずアヴィを見るエリト。「・・・・・」何か呟いた後、アヴィは頭から倒れた。横になったアヴィの横顔にはエリゼルドの右手がひかれていた。「万全になったら返そうか」と氣を送る。すぅすぅとアヴィは眠りについた。

リジンはハロルの肩を指で突っつく。二人にさせようと言っていた。

渋々ハロルも客室を後にする。客室を出る時のハロルはアヴィとエリトの姿に目を向けていた。


翌朝目を覚ますとベッドにアヴィが居ない。慌ててエリゼルドは客室から出る。宿屋の庭にアヴィとハロルの姿があった。

「休まないと」とエリトも庭に出る。「空気吸いたいんだと」ハロルはアヴィに頼まれ連れて来たのだ。

「エリトは真面目だから。ハロイシュディヲに頼んだ」へらへら笑うアヴィ。

回復しているアヴィを見てエリトも微笑んだ。

その姿に「エリだけが心配していた訳じゃないからな?」ハロルはエリゼルドに耳打ちした。「お前だけが護りたい訳じゃない」と続けて言うハロル。

エリトに伝えた後、直ぐにアヴィの元に戻っていくハロル。エリトはハロルの知らない一面を知る。


「アヴィ、俺もシバを追うんだ。俺と回ろう」とアヴィを誘った。「このまま赤きと回るよ。恩返ししなくちゃ」とアヴィ。

「へえ、嬢ちゃん。後で無しはねぇからな」

「リジン、病み上がりよ」

「じゃあじゃあ、肉!肉食いにいこうぜ‼︎」

「ええ〜、どうせなら観光とかにしよぉ?」

「あなた達まで」

「こちらも恩はありましたが、アヴィさんがよろしいのであれば受けるのもいいものですな」

赤き翼との談話を見たハロルは「…今は、預けとく」とエリゼルドの腕を握り、手を挙げ宿屋を出た。

エリゼルドはハロルの考えを解こうと考慮する。赤き翼がエリゼルドを呼んだ。

エリゼルドはアヴィと赤き翼を見て顔がほころんでいた。

エリゼルドも和に入り、アヴィと赤き翼と談笑した。

それしん⑧アヴィの存在

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