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第一話

何を求め

何を願い

何を手に入れたのだろうか


これをあげよう

だが、覚えておいて欲しい

それは、人を傷付ける武器でしかない事を

忘れないでおいて欲しい

自分の意志を貫き通す事を


砂埃が舞う平地にロープ姿の人物が辺りを探していた。フードを深く被り全身覆われている。白い肌の華奢な左手に地図がある。バツ印にはハーメス村と書かれていた。

ハーメス村に向かうにつれ追い風が強まり行く手を阻む。

足跡がついては直ぐに砂によって隠された。

右手で風除けをしながら一歩一歩確実に進む。


立ち止まり両手は力尽きたようにストンと下に垂れた。指先から地図が離れ砂埃の中に消えた。ぽかんと口が開き呟いた。

「またひとつ」

閉口した唇は次第に歯を食い縛る形に変わっていた。村はなかった。家の形も残っておらず数本の木だけが乱雑に立っている。フードから長い睫毛が見える。微かに見える瞳は悲しむ事も怒る事もない、ただ見つめているだけだった。


強風が降ってくる。

フードの隙間から赤いリボンが砂埃に紛れて踊っていた。

「ハーメス村はこの通り全く何もねえ。

全部が砂で覆われているんだとよ」

長テーブルにはハーメス村に関する資料が並んでいた。ハーメス村の状況報告を行なっている所だ。

「砂のせいで証拠を探し出すのも難しいと判断したわ。誰も調べに行こうと思ってないみたいね」

数枚の書類を眺め「そうだね。ここにシバの情報を探すのは辞めよう。亡くなった人達を弔おうか」と携帯電話である人物に連絡を入れる。送信後、椅子に座り息を吐いた。

「上手くいかないね。何処の村も捜査が出来ない程潰されている」

雪崩落ちるエリゼルドにメルフィーナが言う

「だから、村潰しと言われているんでしょうが。何処か見落としはある。諦めたら終わると意気込んでいたのは誰よ」

エリゼルドの近くに手をテーブルにつけ、その手を見るようにエリゼルドは頭の角度を変える。

「まあ、無理もねえさ。村が潰れてこれで4つ目。馬鹿みてえに何の証拠も掴めてねえ。そらあ、根も上がる。だかな、まだ終わってね」

「…珍しくやる気があるね」エリゼルドは顔をあげにんまり笑うリジンを見る。

「これ、よ!」

テーブルに置かれたのは、2枚の写真。1枚は全身ロープ姿の人物の背後。

目を細め、重なっている下の写真を取る。エリゼルドの目つきが変わった。

「ああ、見覚えあるだろ」

フードから見える赤い布。そこに何かの紋章が付いていた。思わず立ち上がるエリゼルド

「アヴィ…」

「な」当たりと言わんばかりエリゼルドに指差して共有する。

「よく見えるわね。小さすぎて見えないわ」

「簡単だよ。このリボンは俺が渡した物だから」

エリゼルドはリボンを指差して「この紋章は一つしかない。幼い時にアヴィと一緒に考えた紋章」エリゼルドは紋章入りのリボンをアヴィに贈っていた。そして身につけてくれている事に喜びを隠せれない。

「そいつの話しを聞いていたからな。案の定だったわけ、だ」

「その女性に話しを聞けば何かしらの手掛かりは掴めそうね。エリゼルド、彼女は何処に?」

エリゼルドは最初に見た後ろ姿の写真を見つめていた。瞳は輝かしい。

「しゃあねえ、メル。なかなか帰って来ねえよ。なんせエリゼルドの初恋のアレだ」

「あの小さい頃から出会ったと言うあれ?」

エリゼルドは幼い頃に出会ったアヴィという少女を片時も忘れず一途に想っている。

訳あってエリゼルドは母型の苗字クイックラインを名乗り、母の故郷であるエルムの村で住んでいる為アヴィとは6年も会っていない。その彼女に会えると感じたエリゼルドはテンションが高かった。


二人は気長に待つ事にする。こうなれば話しても意味がない。リジンは部屋から出た。

数分後には部屋に戻ってくる。メルフィーナの隣の席に座り煙草に手を掛けた。

「私も」とメルフィーナもリジンの煙草に付き合う。

その光景が1時間も及んだ。メルフィーナはドアの隙間から匂いを探知。リジンがジェスチャーで(飯)と言う。

[シバの情報はアヴィに会ってから]が目標になっている為時間は充分にあった。リジンはオムライスを持って来たエリゼルドの妹セリカに頼みに行っていたのだ。

昔ながらのオムライスが4つテーブルに並ぶ。食卓にはオムライス、サラダ、スープ。

エリゼルドは「お兄ちゃん」と声を掛ける迄、ずっと写真を眺めていた。怒れるはずもない。両頬を膨らませ食事を勧める妹は今では唯一の家族だからだ。

その為、写真を取り上げられても強く言い返す事が出来ない。リジンはその事を知っている。

エリゼルドは戻り、食事にありつける。

「一石二鳥」リジンはメルフィーナとクイックライン兄妹を見ていた。


4人はオムライスを頬張る。

「〜〜〜…」メルフィーナは言葉には表せていないが頬が溢れ落ちそうな表情。

「メルは知らなかったな。セリカは凄腕の料理人なんだよ」

「ち、違うよ。ただ毎日ご飯を作ってるだけ」

「うん。いつもありがとう、セリカ」

美味しいと、ありがとうと、いつも感謝や褒めてくれるエリゼルドに恋をしていた。エリゼルドとセリカは異父兄妹。血の繋がりはあるが都会に住んでいたエリゼルドを珍しく見えるのであろう。リジンはそんなセリカに心配していた。変な人に騙されるのではないかと。

「…俺が悪く聞こえるんだよね」

「いや、エリゼルドみたいんばかりだったら問題ねえ。現実は違うだろ…兄ちゃん」

「リジンの方が得意そうだから任せる」とエリゼルドはやや投げやり。だが、そういう所が痺れるとセリカはいつも会話を投げるがエリゼルドは受け取る事も拾う事もしない。

いつものくだり。

「兄ちゃん好きよね」とメルフィーナは微笑ましく言う。そんな時チャイムが鳴った。

「よろず屋からだな」

「いいよ。俺が行く」と居心地が悪かったのかそそくさと部屋を出る。


一人の女性がそわそわしながら待っていた。

「こんにちは、マリネさん。どうかされましたか」マリネは声ある方へ向く。

「エリゼルドくん。アミーちゃん来てないかしら」

アミーちゃんは猫の名前である。お散歩が好きな猫で時間になると帰って来るのだが、自宅に居ないから捜してほしいとの事だ。

「分かりました。直ぐに捜します。マリネさんは家で待っていて下さい。アミーちゃんも安心しますから」

マリネはお辞儀をし自宅へと帰る。エリゼルドは棚から袋を取りドアに外出中の看板をぶら下げた。リジンだけが外で待っていた。

「マリネさんから」

「あの猫か」リジンは依頼でマリネの猫を捜しに行く事が多い。現在の任務は一件。エリゼルドとリジンは手分けして猫を捜した。


エルムの村は若手が少なく力作業等が出来ない。他にも困り事を解決するにも村長以外頼りになる者が居ない事から、エリゼルドとリジンの二人でよろず屋を創立。隊員はセリカとエリゼルドの親友ハロルの4人で行っている。探し物や力仕事、隣町への買い物等平和な任務が多い。

一方でメルフィーナが所属しているのが[赤き翼]エリゼルドを隊長にした小規模団体。魔物退治等危険な任務を務める。現在は村潰しシバを追っている。メルフィーナはシバの情報を届けにエルムの村に来ていたのだ。


無事マリネの猫アミーを捜したのは長い付き合いのリジンだ。筋肉体質のリジンの腕に抱かれて眠たそうにしているアミーの頭をエリゼルドは撫でる。リジンはマリネの所へ向かった。エリゼルドはリジンを見送る。


「あら、久し振りね。隣町はどうだったかい?

良いものはあったかね?」と近くの畑仕事をしていた人の声が聞こえた。

笑って手を挙げるエリゼルドに不服そうな笑みを浮かべるハロル。隣町の買い出しから戻って来たハロルはエリゼルドと品物の分配をした。そして一枚の紙切れを渡す。

[近日隣町にシバが現れる]と書かれていた。

「…行動が早いな」

「ああ、町人も噂になってるよ。多分ハーメス村の連中ではない」

村潰しシバ、名前の通り村限定で潰す5人組の組織。エアリス国では大きなニュースの一つである。一線上に帯びた範囲に入る村が中心に狙われるのが特徴。その為誰もが次の標的が何処なのか分かっていた。

アルミナ、ソージュ、ルタ、ハーメス、そしてエルムだと思われているのが一般的。分かるからこそ対策が出来、準備を整える。組織の狙いは暇潰しとも言われているが赤き翼は別の視点としても考えていた。

エリゼルドとハロルは残っていた品物を配り終え自宅に戻る。セリカ、リジン、メルフィーナは午後のお茶を飲んで寛いでいた。


時刻は15時を回っていた。時計を見ていたハロルは「何だろうな、胸騒ぎがする」と言う。

ハロルの勘は鋭い。

「行動を早めた方がいいかもね」

エリゼルドの声にリジン、メルフィーナが動く。赤き翼はシバを倒す為に戦闘準備を今迄整えてきた。道具は畑に使う歯車に詰め込み満遍なく置かれている。

セリカは村人に声を掛ける。ハロルは村外れにある灯台を指揮し灯台迄の誘導をリジン。

エリゼルドとメルフィーナは武器等の配置を行う。


時は刻一刻と過ぎていく。


焦る必要はないものの天候がハロルの勘を当てるかのように曇り、18時になっても空は明るいがこの日は闇に包まれていた。セリカとハロルは灯台で住民を見守り、リジンはエリゼルド達と合流した。

時計の針がカチ、カチッ、カチッッと強く弾く。その音に緊張感が漂う。

セリカはハロルに話そうとした瞬間に出来事は起きた。

物凄い音とそれに見合う振動。ハロルは灯台の外に出た。セリカもハロルの後を追う。煙が上がっていた。方角はエルムの村付近だが上がる煙は何処となく遠い。

エリゼルド達が持ち場に着いてから1時間後の事。隣町から爆音がし地面が揺れ、村中に煙が上がったほんの一瞬の出来事。

「魔法?」

エリゼルドはその一瞬を解き明かす。魔法に違和感を感じたのか悩み込むエリゼルドにリジンとメルフィーナが来た。続けてバイクに乗ったハロルも到着する。リジンは「セリカは⁈」とハロルが来た事に驚いていた。

「皆を見てるよ。エリ、後ろに乗って。ミナタに急ごう」エリゼルドはリジンの肩を叩きバイクに乗って隣町へと走った。

エルムの村は悲劇が起きなかった。代わりに隣町ミナタが犠牲になったのだ。

「事情が分からないけど、今は灯台に行きましょう。セリカ一人だと心配だわ」

リジンとメルフィーナは灯台に向かい手分けして住民を村へと連れて帰る。


隣町はエルムの村の下り坂の平地にある。道路を走れば回り道になり時間を要する。

「振り落とされんなよ」とハロルは林の中をずり走る。走るというより飛びながら下るが正しい。

「…相変わらず無茶苦茶なんだから」

「あの様子だともう潰れてるよ。逃げられる」

「…ハロ「舌噛むよ」言うのが先か分からない程同時に速度を上げる。地面にはタイヤの跡が速さを教えていた。隣町の門前。見事に黒く焦げ村内のあちこちにクレーターが出来ていた。横に倒れている人達は性別年齢関わらず悲惨な姿に変わり果てていた。

「遅かった」

「いや、まだ気配がある。ハロルは生き残った人を捜してほしい。俺はシバを」

頷くハロル。

エリゼルドは気配ある方へ全力疾走。途中大木に身を預ける男性を見つける。腹部を布で抑えていた。

「大丈夫ですか。今、手当を」

片方の手で手を振るう。手当は済ましたと言っていた。キイイイインと刀の弾く音が聞こえる。(シバア‼︎!!)エリゼルドの心は怒りを表していた。

「俺なら大丈夫だ。治療してくれている。今、戦っている。助けてやってくれ」

「ありがとうございます。待っていて下さい」

エリゼルドは戦っている場所に向かっている最中に氣を感じ、エリゼルドの眼が丸くなった。足が地面に引っ掛かり地面に座り込む。脳は動けと訴えるが身体が動かない。

深呼吸をし急に重くなった身体を動かす。すっと何かに当たり普段と変わらない身体に戻った。

振り向くエリゼルド。エリゼルドは振り返り前を見る。今迄あった気配が消えていた。


「これは骨いったかな」

2m程の崖の下に金髪の女性が座っていた。両手の指には出血している。彼女は飛び回る敵を討つ為身を投げ打ち敵を倒しそのまま崖下に落ちた。痛む手を動かし再度登っていく。手を伸ばすが岩場に届かず地面に落下する事はなかった。身体が上に引っ張られ彼女は助かったのだ。

息切れをする彼女の汗が地面に濡れているのを見る。地上に居る事を再確認した。視野にハンカチを渡す手がある。

「ありがとう」と伝えるが顔は上げなかった。

「アヴィ…」その一言に顔を上げる。

「エリト」

「君が落ちてどうするのさ」と笑いながら両指の手当てをするエリゼルド。「足出して」何処に怪我をしているのか分かるのか次々に指示を出す。包帯まみれになったアヴィは笑って言う。

「来るの遅すぎ」

「ごめん。あの魔法はアヴィだね。あんな残し方をすると誤解されるよ」

無言でエリゼルドを見る。

「立てる?」アヴィはエリゼルドの腕を借りゆっくりと立ち上がった。痛みは軽減されている。エリゼルドの応急処置の賜物だ。

「アヴィ」と草むらから聞こえる声は暗闇で姿が見えない。

「行かなきゃ」手を持つエリゼルドの手を祓いエリゼルドに耳打ちする。

「シバ」と言い、笑顔を出すアヴィはエリゼルドの言葉が返ってくる前に暗闇の声ある方へ姿を消した。


その場で立ち尽くすエリゼルドの頭を掴むハロル。

「どうしたよ?」とエリゼルドの顔を見た。微かに頬が赤く染まっていた。

「アヴィに会ったんだな」

「…シバと言い残して去った。連れが居たみたいだね」

「シバ追うのか?」

「うん。アヴィから情報貰ってないし…多分来いて言われた気がする」

その話しを聞きハロルは眼を閉じた。

隣町ミナタに生き残った人は数人。療養が必要な為灯台を医務室として使用。処置が出来るように灯台内にも道具を忍び寄せていた。灯台手であるラバン爺さんが助っ人として加わり、療養者は生命の別状がない程に安定する。エリゼルドとハロルは灯台からエルムの村を眺めていた。

「いつ出発する」

「今からかなー」と触れられたくなさそうなエリゼルド。

「エルムは問題ないし何時でも行ける。ここは俺とラバンで看る」

「うん。ありがとう、手配してくれて」

「俺にとっても故郷だ。…元気だったか」

「うん」二人は黙って景色を見た。

「ハロルは…」

「ああ、落ち着いたら戻るよ。機会あれば寄って」


エルムの村入口に見送りに来た村人たちは赤き翼の所に集まっていた。

「だ、か、ら、こんなに持って行けれねえ。考えてみろよ」食料衣類等を持ってくる為リジンの隣には山が出来ていた。「頼む。持って帰ってくれ」と嘆いている。男達は身体のラインを強調している服装もありメルフィーナに目尻が下がっていた。

「お兄ちゃ〜〜ん」とセリカは走ってエリゼルドの元へ。「食べて」とおにぎりを渡す。無言で拳を突き合わせるエリゼルドとハロル。そこには二人の笑顔があった。

エリゼルドとリジンは手を振りエルムの村を出た。

それしん①出発

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