第82話 評価の反転
公開協議の翌日。
王都の空気は、明らかに変わっていた。
冷たい視線は、観察の視線へ。
敵意は、好奇心へ。
夜、再び社交界の集まりが開かれる。
名目は「協議終了を祝して」。
だが本質は、評価の確認。
広間に入ると、ざわめきが違う。
昨日までは距離があった。
今日は、近い。
「見事でしたわ」
マルセル侯爵夫人が歩み寄る。
「勝った、とは言わないのね」
私は小さく笑う。
「勝敗ではありません」
「構造が動いただけです」
侯爵夫人は満足そうに頷く。
「その言い方ができるなら、大丈夫ね」
周囲の貴族たちが聞いている。
「王都を壊しに来たのではない、と分かったわ」
それが最大の成果。
完全に味方にする必要はない。
敵でなければいい。
別の貴族が近づく。
「北方航路の商談を検討したい」
商人たちが動き始める。
風は、変わった。
遠くでルシアンが立っている。
近づいてくる。
「合理的な決着でした」
淡々とした声。
「感情に流れなかった点は評価します」
「ありがとうございます」
皮肉ではない。
対等な評価。
「だが」
彼は続ける。
「均衡は脆い」
「分散は制御を誤れば混乱を生む」
「分かっています」
私は即答する。
「だから監査制度を受け入れました」
彼はわずかに口元を動かす。
「あなたは敵ではない」
「だが味方でもない」
「それで構いません」
その関係が最も健全だ。
ルシアンは一礼し去る。
宰相派は完全には引いていない。
だが、格は落ちていない。
夜会の終わり。
辺境伯が隣に立つ。
「風は読めたか」
「はい」
「王都は変わらない」
「ですが」
私は広間を見る。
「変わらない中で、位置は変えられます」
彼は短く笑う。
「隣に立つと言ったな」
「はい」
「立てているか」
一瞬だけ考える。
「半歩くらいは」
彼は頷く。
「十分だ」
王都の夜は冷たい。
だが今日は、寒くない。
評価は、敵意から敬意へ。
完全な味方ではない。
だが、軽んじられもしない。
それが一番強い立場だ。
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