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婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


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第79話 数字の綻び

 公開協議、第二日。


 空気は昨日よりも重い。


 今日は宰相派の席に資料が積まれている。


 準備してきた。


 ルシアンが立ち上がる。


「昨日は理論を聞いた」


「本日は実数を問う」


 紙が広げられる。


「北方航路の保険料」


「輸送遅延率」


「冬季閉鎖の可能性」


 傍聴席がざわめく。


「試験便は成功した」


「だが継続性は未証明」


 鋭い。


 確かに、第二便以降はまだ到着していない。


「さらに」


 別の資料を掲げる。


「辺境伯領の財政予備費は減少している」


「価格固定枠の負担が重い」


 視線が私に集まる。


 逃げない。


「三ヶ月限定措置です」


 私は答える。


「港安定までの緩衝材」


「だが、安定しなければ?」


 ルシアンが踏み込む。


「赤字拡大だ」


 言葉が突き刺さる。


 正しい。


 想定内だが、痛い。


 宰相ベルフォードが静かに言う。


「国家は賭けで動かぬ」


 広間の空気が傾く。


 私は一瞬だけ、息を整える。


 ここで焦れば終わる。


「賭けではありません」


「計算です」


 だが、ルシアンは止まらない。


「では答えよ」


「北方が次便を遅延させた場合の補填策は」


 沈黙。


 用意はある。


 だが完全ではない。


 その瞬間。


 別の声が響く。


「財政補填案はある」


 傍聴席から、若い男が立ち上がる。


 セドリック・ヴェイン。


 王都財務官補佐。


 かつて婚約者側にいた人物。


 視線が集まる。


「辺境伯領は王都との共同信用枠を保持している」


「発動すれば、一時的な流動性は確保可能」


 私は驚きを隠せない。


 その制度は、使われていないはずだった。


「だが」


 セドリックは続ける。


「発動には王都の承認が必要」


 つまり。


 王都が拒否すれば、詰む。


 広間の空気が再び揺れる。


 ルシアンが静かに言う。


「分散は自立だと言ったな」


「だが、結局王都の信用を頼る」


 痛い。


 構造の矛盾を突かれた。


 私は一瞬、視線を落とす。


 完全自立ではない。


 移行期だ。


 だが、その説明は弱い。


 広間の空気が宰相派に傾く。


 王太子は黙っている。


 判断を急がない。


 私は深く息を吸う。


 ここで守りに入れば、負ける。


「ご指摘の通り」


 否定しない。


「完全自立ではありません」


 ざわめき。


「だからこそ」


 顔を上げる。


「二重経路なのです」


 まだ逆転ではない。


 だが、伏線を置く。


 ルシアンの目がわずかに動く。


「続けよ」


 王太子が言う。


 広間の視線が集中する。


 今日は劣勢。


 だが終わっていない。


 私は帳簿を閉じる。


 数字は冷たい。


 だが構造は、まだ崩れていない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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