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婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


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第78話 公開協議

 王都議会の広間は、前回とは空気が違った。


 今日は傍聴席まで埋まっている。


 貴族、官僚、軍部、商会代表。


 そして王太子。


 形式は協議。


 だが実質は審問に近い。


「辺境伯アレクシス」


 宰相ベルフォードが立ち上がる。


「北方港再稼働の経緯を説明願いたい」


 辺境伯は短く答える。


「物流停滞への対処だ」


「領民保護のため」


 簡潔。


 余計な言葉はない。


「王都経由の物流が完全に止まっていたわけではない」


 宰相が静かに返す。


「過剰な判断ではないか」


 ざわめき。


 辺境伯は私を一瞥する。


 私は一歩前へ出た。


「設計者として、説明いたします」


 視線が集まる。


 ルシアンが立ち上がる。


「政策監察官ルシアン・ヴァルドール」


 静かな名乗り。


「質問させていただく」


 第一撃。


「港再稼働により、王都関税収入は減少した」


「国家財政への影響をどう考える」


 正面から来た。


 私は頷く。


「減少は事実です」


 否定しない。


「ですが、辺境物流停滞が続けば、税収自体が縮小します」


 帳簿を開く。


「こちらが試算です」


 数字が提示される。


 傍聴席がざわめく。


「二重経路化により、物流総量は回復」


「結果として、王都関税収入も長期的には安定します」


 ルシアンの目が細くなる。


「理論上は、だ」


 言葉が鋭くなる。


「だが国家は理論通りには動かない」


「統制が崩れれば、他領も独自に動く」


「それを抑える術はあるか」


 心理戦。


 “前例”を突いてきた。


 私は一瞬だけ間を置く。


 焦らない。


「抑える必要はありません」


 広間が静まる。


「各領が自立できる構造は、国家の強度を上げます」


「王都は調整役に徹するべきです」


 大胆な提案。


 宰相派がざわつく。


「王都の権限を弱める気か」


 誰かが声を上げる。


「弱めるのではありません」


 私ははっきり言う。


「分散させるのです」


 ルシアンが畳みかける。


「理想論だ」


「統制なくして秩序はない」


 その瞬間。


 私は逆に問う。


「統制が折れた場合の代替策は」


 沈黙。


「戦時、王都封鎖が起きた場合、物流はどう維持されますか」


 軍部席が動く。


 将軍アルドリックが腕を組む。


 ルシアンは表情を崩さない。


「仮定の話だ」


「備えは仮定から始まります」


 私は続ける。


「分散は弱い」


「ですが、持続します」


 言葉は静か。


 だが揺れない。


 広間の空気が変わり始める。


 王太子が初めて口を開く。


「第一ラウンドはここまでとする」


 静かな声。


「続きは明日」


 ざわめきが広がる。


 完全な勝利でも敗北でもない。


 均衡。


 だが。


 ルシアンの目は告げている。


 本番は次だ、と。


 私は息を整える。


 今日は揺らがなかった。


 だが、明日はもっと厳しくなる。


 思想戦は始まったばかりだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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