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婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


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第71話 王都議会のざわめき

 王都議会は、石造りの半円形の広間にある。


 高い天井。

 整然と並ぶ席。

 中央に設けられた発言台。


 その日の議題は、本来なら税制改正だった。


 だが、空気は違っていた。


「辺境伯領、北方港再稼働の件」


 宰相ベルフォードが静かに口を開く。


 ざわめきが広がる。


「王都の外交権を経ずに、北方海洋国家と接触」


「これは、統制の逸脱である可能性が高い」


 断定はしない。


 だが、疑念を置く。


 議員の一人が立ち上がる。


「違法なのか?」


「凍結契約が残っている以上、明確な違法とは断定できません」


 宰相は冷静に答える。


「だが、問題はそこではない」


 指を組む。


「統制を崩せば、国家は緩む」


 広間が静まる。


「一領が独自に外洋国家と結ぶ」


「それを許せば、他領も追随する」


 中央集権体制の崩れ。


 宰相派の議員たちが頷く。


「王都の関税収入は既に減少している」


「財政にも影響が出る」


 数字が提示される。


 確かに、港再稼働は王都の利益を削る。


 だが。


 別の議員が立ち上がる。


「辺境伯領の物流停滞は事実だ」


「王都側の検査強化が原因ではないのか」


 ざわめきが強まる。


 宰相は表情を変えない。


「検査は治安維持のため」


「特定領を狙ったものではない」


 事実上の否定。


 だが、完全には否定しきれない。


 そのとき、扉が静かに開く。


 全員が立ち上がる。


 王太子レオンハルトが入室した。


 青銀の礼装。


 表情は読めない。


「続けよ」


 短い言葉。


 彼は上座に座る。


 宰相が一礼し、続ける。


「殿下、港再稼働は統制の揺らぎです」


「放置すれば、王権の弱体化につながる」


 王太子はしばらく黙って報告書に目を通す。


「違法か」


 静かな問い。


「明確ではありません」


「では、違法ではない」


 広間が一瞬凍る。


 宰相の目がわずかに細くなる。


「殿下、それでは」


「問題は違法かどうかではない」


 王太子が続ける。


「国家の安定だ」


 その言葉で、場は均衡する。


 どちらにも寄らない。


「辺境伯は反逆の意図を示したか」


「いいえ」


「ならば」


 王太子は報告書を閉じる。


「急ぐな」


 短い命令。


「状況を精査する」


 宰相は頭を下げる。


「承知しました」


 だが、その目は冷たい。


 王太子が立ち上がる。


 議会は散会。


 廊下に出ると、側近が囁く。


「殿下、辺境伯領は抑えますか」


 王太子は窓の外を見た。


 遠くに広がる王都の街並み。


「抑える必要があるのは」


 一瞬、言葉を止める。


「対立だ」


 港は動いた。


 辺境は止まらなかった。


 王都は、初めて正面から向き合うことになる。


 物語の舞台は、完全に王都へと移った。

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