第64話 王都からの警告
文書は、赤い封蝋で閉じられていた。
王家紋章。
正式な通達。
執務室の空気が静まる。
補佐官が封を切り、読み上げる。
「王国外交権は王家に帰属する」
「無許可の外国交易は、王国法第十二条に抵触する可能性がある」
可能性。
断定ではない。
だが、十分な圧力だ。
私は黙って聞いている。
予想していた。
早すぎるほどだ。
「北方海洋国家との接触を確認した場合、厳正な調査を行う」
最後の一文。
調査。
つまり、牽制。
ガルドが低く息を吐く。
「やはり来たな」
辺境伯は文書を受け取り、目を通す。
表情は変わらない。
「凍結契約の条項には触れていない」
静かな指摘。
補佐官が頷く。
「破棄されていない以上、完全な違法とは言えません」
王都は踏み込んでいない。
踏み込めない。
だが。
領内に動揺を広げるには十分だ。
夕方、市場で噂が広がる。
「王都が怒っているらしい」
「外交違反だとか」
不安は数字より速く伝わる。
私は港の修繕現場へ向かう。
木材が運ばれ、桟橋が補強されている。
職人たちの動きは早い。
「文書は見たか」
辺境伯が横に立つ。
「はい」
「怖いか」
突然の問い。
私は少しだけ考える。
「怖くないわけではありません」
正直に答える。
「でも」
海を見る。
「止まるほうが、もっと怖い」
辺境伯は何も言わない。
だが、視線は強い。
王都は警告を出した。
次は、どう出るか。
私は静かに言う。
「文書は“可能性”としか書いていません」
「断定できない」
「つまり、正面からは止められない」
辺境伯がわずかに頷く。
「動きを止めるな」
短い指示。
その一言で、覚悟が固まる。
港の上を風が吹き抜ける。
警告は届いた。
でも。
止まらない。
選んだ場所だ。
削られるだけの場所にはしない。
王都の圧は強まるだろう。
けれど。
私たちは、もう動き始めている。
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